【レビュー】M3シリーズ搭載「MacBook Pro」高性能から超々高性能まで実力をテスト
ASCII.jp / 2023年12月12日 19時0分
高性能ながら「リーズナブルで薄く軽い」という位置づけのMacBook Air 13/15に対して、少々重いけれど「価格に応じた性能が得られる」というのがMacBook Pro 14/16。今回は連載の第2回目として、そのパフォーマンスについて説明しよう。
それぞれのニーズに最適化された M3/M3 Pro/M3 Maxのチップセット
従来、ProやMaxが付かない「無印のM2チップ」を搭載し「MacBook Pro 13インチ」と呼ばれていた商品が廃され、新たにM3チップを搭載した「MacBook Pro 14インチ」が登場した。このモデルは従来のMacBook Pro 14インチと完全に同じディスプレー、音響と、ほぼ同じボディーを持ちながら、無印のM3チップを搭載しているところが大きな特徴になる。
無印とはいえ、Mシリーズチップは年々おおよそ15~20%性能を向上させている。M3ともなるとM1 Proの下位モデルに匹敵するほどの性能になっているので、十分に「MacBook Pro」と名乗る資格はあるように思う。むしろ、チップセットの性能はほどほどでも、ディスプレーやスピーカーの性能が高い方がいい「プロ」もいると思うので、このアップデートはうれしい。
USB-Cポートが1つ少ない、Thunderbolt 4ではなくThunderbolt 3/USB4規格(転送速度が少し遅い)、外部接続できるディスプレーが6K 1枚までという違いはあるが、このあたりは「無印M3チップ」の制限なので、いたしかたないところ。なお、この「無印M3チップ」搭載のMacBook Proは14インチのみで、16インチには設定されない。
対して、M3 ProとM3 Max搭載のMacBook Proは14インチと16インチモデル、両方にラインナップされる。M2時代までは、M2のほぼ倍の構成がM2 Pro、そのまた倍の構成がM2 Maxという設計だったのだが、M3世代になって、かならずしもそういう構成ではなくなったようだ。
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たとえば、従来M2 Proは200GB/s、M2 Maxは400GB/sだったメモリ帯域幅はM3 Proは150GB/sにスピードダウン(M3 Maxは400GB/s)されていたりする部分もあるのだが、これは性能低下というよりも、全体の構成を見直し、M3 Proを購入するユーザーに向けてより適切な構成としたと考えた方が良さそうだ。また、CPUの構成はM3 Proでは従来より高効率コアの割合を増やしており、M3 Maxでは高性能コアの数を増やしているなど、実際にM1 Pro/Max、M2 Pro/Maxがどう使われたかを反映して構成を変更しているようだ。
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さらに最大ユニファイドメモリ搭載量は、従来の96GBから128GBに増やされており、「とにかく最大メモリが必要だ!」というタイプの作業にも対応できるようになっている。ちなみに、無印M3チップ搭載のMacBook Pro 14インチの最大メモリ搭載量は24GB。そこは明確な差がつけられているのである(これもM3の仕様によるものだとは思うが)。
ほとんどの作業に十分なM3、圧倒的性能のM3 Max
では、あらかじめ、テストに使ったMacの仕様をご紹介しておこう。アップルから貸し出してもらったものはどちらも14インチモデル。
まず無印M3搭載モデルの方は、CPU 8コア(高性能4コア、高効率4コア)、GPU 10コア、メモリは16GB、ストレージは1TB。アップルストアでは、30万4800円の仕様だ。
対して、M3 Max搭載モデルは、CPU 16コア(高性能12コア、高効率4コア)、GPU 40コア、メモリ128GB、ストレージ8TBで、価格はなんと105万6800円。とはいえ、価格の半分ぐらいは追加メモリとSSDに使われているので、50万円強で同等のスコアは得られるとは思う。
というわけで、この2台をGeekbench 6にかけ、さらに最近計測した比較対照になるマシンのスコアと並べてみた。
まず、スタンダードラインである(といっても、30万円以上するわけだが)M3搭載のMacBook Proから見てみよう。マルチコアCPUの1万2038という数値は、M2より20%増し。なんと、 M1 Proの数値も超えている。また、Open CLの3万582、Metalの4万7636という数値も、MacBook Pro M1 Proの75~80%に到達する数値だ。これだけのパフォーマンスがあれば、十分こなせる数値だといえるだろう。
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実際筆者の記事の編集作業(現行執筆から、大量の写真の整理、補正など)にMacBook Pro M1 Proをこの2年間使っているが、不自由したことはない。おそらく、M3搭載機でも同様の作業は可能だろう。
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参考までに、2020年(たった3年前だ!)のMacBook AirのCore i5搭載機やM1搭載機のスペックを下記に掲載しておく。これらと比べると、いかにMacBook Pro 14インチ(M3)のスペックが卓越したものか、よくお分かりいただけると思う。
![](https://ascii.jp/img/2023/12/11/3654165/x/692a93d62b5d167d.png)
![](https://ascii.jp/img/2023/12/11/3654168/x/aad61d401cd1dfd1.png)
動画編集などの作業の待ち時間を大きく短縮できる
続いて、MacBook Pro 14インチ(M3 Max)の数値をご覧いただきたい。今、「十分だ」と言ったはずのM3チップに対して、CPUで約1.77倍、GPUで約3倍以上のパフォーマンスを叩き出している。これはもう14インチのコンパクトなノートパソコンとしては圧倒的な数値だ。
具体的な比較として、Final Cut Proで動画編集をした。
素材はiPhone 15 Pro Maxで撮影した10分間のApple ProRes 422 HQの画像。10分でも60GB以上あるという重い画像だ。これを、MacBook Pro 14インチのM3モデルと、M3 Maxモデルに取り込んで編集してみた。
まずは、全体を映画っぽい世界観にしてくれるティール&オレンジのエフェクトを適用。
![](https://ascii.jp/img/2023/12/11/3654169/x/c7cde4f3815e4d83.png)
M3搭載機だと2分26秒04かかった。これだって、従来機と比べれば十分に速いのだが、 M3 Max搭載機だと51秒8で終えてしまう。作業時間にして、おおよそ3分の1。日常の作業として、エフェクトをかけてみたり、仕上がりを見て何度もやり直したりする人にとっては、大きな違いだと思う。仕事で大きな画像サイズの動画を編集する人にとっては、その差は大きいだろう。
続いて、その動画を.movに書き出した。
![](https://ascii.jp/img/2023/12/11/3654170/x/aed7c070a2d9d6a1.png)
M3搭載機は1分35秒05で書き出したが、M3 Max搭載機はなんと39秒03で書き出してしまう。時間にして1/2.4。これは速い。「書き出した仕上がり画像を確認して、ミスを見つけてやり直し……」というのは、動画編集をしている人なら、日常的に経験することだと思うが、そこでのリカバリー速度が早いのはメリットとして大きい。
3Dグラフィックスをふんだんに使うゲームでも快適
最後に、Steamを使って「Baldur’s Gate 3」をM3とM3 Max搭載のMacBook Pro 14インチにインストールしてプレイしてみた。コントローラはプレステのDualSenseワイヤレスコントローラを使用。
私は、ゲームは不得手なので、あまりプレイしないのだが、このゲームは往年のダンジョンズ&ドラゴンズの世界観を忠実に移植したものらしく、会話を選択肢で選んだり、敵と戦ったりしながら、剣と魔法の世界で冒険を繰り広げていくというもの。
かなり解像度の高い3Dグラフィックが表示されるのだが、M3 Max搭載機ならどのシーンでも、ヌメヌメと滑らかに映像が動くのを楽しむことができる。M3搭載機でもおおよそ問題なくプレイできるのだが、ごくわずかにコマ落ちするシーンがあったように思う。たまたまかもしれないが……というレベルだが、やはりM3 Max搭載機の方が安心感があったのは確かだ。
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選択の余地が非常に広くなったMacBook Proシリーズ
スペックテストでは、想定通りM3の高性能さが分かるとともに、M3 Maxの圧倒的な高性能も体感することができた。
プライベートで楽しむなら、多くの用途でM3搭載機で十分であるように思う。M3 Maxは、業務で効率を求める時に、性能の高さが仕事に安定感をもたらしてくれるはずだ。ただし、多くの一般的な仕事ではM3搭載機で十分。大きなサイズの動画編集、高精細な3Dグラフィックス、大きなサイズのアプリケーションのビルドなど、日々マシンパフォーマンスが必要な人であれば、M3 Max搭載機を買う値打ちはあると思う。
![](https://ascii.jp/img/2022/08/17/3406200/x/b2958e7bc87e2d02.png)
筆者紹介――村上タクタ 趣味の雑誌を30年間に600冊ほど作ってきた編集者・ライター。バイク雑誌「ライダースクラブ」で仕事を始め、ラジコン飛行機雑誌「RCエアワールド」、海水魚とサンゴ飼育の雑誌「コーラルフィッシュ」、デジタルガジェットの本「flick!」の編集長を約10年務めた後退職。現在フリーランスの編集者・ライターであり、ウェブメディアThunderVoltの編集長。HHKBエバンジェリスト、ScanSnapアンバサダー、mmhmmヒーロー。iPhone、iPadなどのデジタルガジェットや、バイク、クルマ、旅、キャンプ、絵画、日本酒、ワインと家族を愛する2児の父。
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