世界で台頭する新興中国ガジェットブランド総ざらい 有名になる前に知っておきたい
ASCII.jp / 2023年12月23日 14時0分
中国国外で話題になっている中国発ブランドのランキング 原神などのゲームが上位 おなじみのシャオミやTikTokも
中国のさまざまなガジェットブランドが続々と世界で認められてきている。PCならばレノボ、スマートフォンならシャオミやOPPO、ファーウェイ、中華スマホに詳しい人ならvivoや伝音(Transsion)を聞いたことがある人もいるだろう。それ以外でメジャーどころでは、モバイルバッテリーのAnker、ドローンのDJI、全天球カメラやアクションカメラのinsta360といったところだろうか。
![世界で台頭する新興中国ガジェットブランド](https://ascii.jp/img/2023/12/23/3661149/x/46618f873b22a7ae.jpg)
中国企業の海外進出をサポートするOneSight(一網互通)という企業が、四半期ごとに中国国外の主要SNS(Facebook、X、Instagram、Youtube)で話題となっているブランドをランキング化した「BrandOS TOP100」を発表している。
ここには前述のガジェット系以外にも、原神などのゲーム、ECサイト(SHEINやAliExpress)、ネットサービス(TikTok)、家電メーカー(ハイアールやハイセンス)も含まれている。これらの顔ぶれを見ればわかる通り、日本でもまあまあ認知度が高そうなものばかり。特に、SNSでの注目度から算出するため、人気のゲームはランクインしやすいという傾向がある。とはいえ100位以内に入ることは簡単ではなく、クラウドファンディングなどで商品を海外進出した程度では無理だ。
そんなBrandOS TOP100ランキングを振り返ると、今年に入りガジェットブランドの新顔が続々と登場している。日本で広く知られる前に紹介していこう。
高級ブランドや著名IPとのコラボの高級iPhoneケースを提供 日本語サイトもすでにある「CASETiFY」
まずは「CASETiFY」というiPhoneケースなどを扱うブランドから。CASETiFY(殻子特玩、本社は香港)は2011年に設立された流行に沿ったiPhoneケースほか、主にアップル製品向けのアクセサリーの製造販売をしているブランドで、中国の記事では「スマホケースのエルメス」とよく紹介されている。
![世界で台頭する新興中国ガジェットブランド](https://ascii.jp/img/2023/12/23/3661150/x/2c3c65a9d31e6a78.png)
世界の10数都市に31店舗のオフラインストアをオープンするなど積極的に世界市場で展開し、中国では2年前に展開を始めた。1万円以上するような高価なケースを多く用意していることから、単価は高く世界市場での年間売上は2022年に3億ドル超に。日本語サイトもすでに用意されている(https://www.casetify.com/ja_JP/)。
デザインを重視しているためコラボデザインも多く、ワンピース、ポケモン、新世紀エヴァンゲリオン、サンリオ、ハローキティなどの著名IPやイヴ・サンローランやヨウジヤマモトなどのファッションブランド、韓国のガールズグループBlackPinkなどの有名人とコラボした製品がリリースされている。
注目を集めるためにコカコーラとの提携商品を出したり、NFTプロジェクトを立ち上げたりなど、話題を出し続ける傾向がある。その一方でスマホケースで競合するdbrandのデザイン、偽造防止ラベルやイースターエッグをも盗用する疑惑でも話題になった。
ペンタブ関連の特許を多数持つ老舗メーカーが送り出す 新たなタブレットブランド「XPPEN」
次の「XPPEN」は「漢王友基」のブランドでタブレットで急成長している。漢王友基は漢字入力が苦手な消費者向けにペンタブレット製品やタブレット製品のハードウェアを開発した「友基」と、そのソフトウェアを開発した「漢王」のタブレット2大企業が2017年に深センで設立した。
![世界で台頭する新興中国ガジェットブランド](https://ascii.jp/img/2023/12/23/3661151/x/b0553604096eb732.jpg)
両社は中国のパソコン黎明期である2000年前後からあり、オールドPCユーザーにはおなじみの老舗企業だ。日本のワコムなどに追いつけとばかりに研究開発を進めており、電磁誘導技術や静電容量式ペン技術などで特許を数多く所得し、イラスト用途やデジタル署名や教育シーンで多く導入されている。
そんな確かな技術を持つ漢王友基はコンシューマー向けブランドのXPPENほか、入門用ブランド「ugee」とプロユース向け「Xencelabs」の3ブランドで展開。特にXPPENブランドは高い注目を集めた。海外では日本、韓国、アメリカ、フランスなどにも展開している。こちらもすでに日本語サイトあり(https://www.xp-pen.jp/)。
ジンバルではZHIYUNが高評価 SmallRigはユーザーの意見で製品を作るカメラアクセサリーメーカー
カメラ関連では「ZHIYUN(智雲:桂林智神信息技術)」や「SmallRig(深セン市楽其網絡科技)」が注目されている。
ZHIYUN(https://zhiyun-tech.jp/)はカメラとスマホ用のジンバルを扱う2015年に設立された企業だ。日本でこれらの製品を検索するとDJIと並んでよく出てくるブランドであり、CES Innovation Awardsをはじめ各国のデザイン賞を受賞したほか、リオ五輪で中国中央電視台(CCTV)が同社製品を採用した実績がある。同社のスマホ用製品はSMOOTHブランドで、カメラ用ではWEEBILLとCRANEというブランドで展開。ニコンと提携しての製品も開発された。
![世界で台頭する新興中国ガジェットブランド](https://ascii.jp/img/2023/12/23/3661152/x/7d3328a287d9f182.jpg)
ちなみにジンバルでは、中国メディアでZHIYUNやDJIと並び中国で評価されるブランドは、FeiyuTech(桂林飛宇科技)や、hohem(深セン市浩瀚卓越科技)が挙げられる。
一方のSmallRig(https://www.smallrig.jp/)はちょっと変わったカメラ向けのアクセサリーブランドだ。同社はオンラインショップ運営がスタートで、やがて同社サイトにカメラマンが「重いバッテリーを効率的に運ぶブラケットが欲しい」などといったニーズが書き込まれ、深センのモノづくりネットワークを活用し製品を開発したというのがきっかけ。消費者と頻繁にコミュニケーションを取ってニーズをくみ取ることで製品を開発し拡大している。その過程で製品自体のクオリティーも上がっており、またブランドイメージも高まっていった。
2017年には世界の400人余りの写真家と2000以上の製品を共同設計したとのこと。毎日平均1~2点、年に700以上の新製品が誕生し、年に300~400点の商品が消えているという。そのスタイルはファストファッションや100円ショップのカメラアクセサリー版といったところだろう。ときに50個程度の少量生産の依頼もあるが、自社工場と30~40ヵ所の提携工場により、そうした依頼にも答えるのだという。消費者がずっとついてきてともに歩むブランドがSmallRigなのだ。
このほかにもOneSightのBrandOS TOP100では、キーボードメーカーの「Keychron(渇創技術)」(https://www.keychron.com/)や、主にアフリカで展開する伝音のデジタルアクセサリーブランド「Oraimo」(https://oraimo.com/)がランクインした。
![世界で台頭する新興中国ガジェットブランド](https://ascii.jp/img/2023/12/23/3661153/x/ffced31a7becb4ee.jpg)
怪しくて無法地帯だけど、面白い製品が多かった時代から 世界にどんどん拡大している中国のデジタル製品
今回ランクインしなくても、海外に向けてガジェットを提供する中国企業が数多くあるのはもちろんのこと、中国で資金調達を受けたガジェット系スタートアップ企業も多くある。こうした企業はもうしばらくはTikTokのバイトダンスのように、できるだけ自社が中国企業だと思われないような形で展開するだろう。そしていずれは中国企業であることを胸を張って主張するときがくるかもしれない。
ところで当連載「アジアIT小話」は今回で200回となる。さらに前連載の「中国IT小話」が100回までだったので、合計で300本目となる。中国がなんだか怪しくてところどころ無法地帯だけど粗削りで面白かった時代から、スマートフォンやIoTを組み合わせたサービスで成長期を迎え、そして2023年は中国のデジタル製品が中国国外へと拡大して行き始めた。長期的に見て予想や想像ができないことばかりだったが、100回先はどう振り返るのだろう。その先を自分自身も楽しみにしながら書き続けていきたい。読者の皆様、よいお年を。
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