優れた中高域の再現力、MEMSスピーカーの魅力を手軽に体験できる「Aurvana Ace/Ace2」
ASCII.jp / 2023年12月31日 9時0分
既報の通り、クリエイティブメディアはMEMSスピーカーを搭載した完全ワイヤレスイヤホンを国内発売した。本稿では、実機のレビューとMEMSスピーカーを搭載する意義を考察する。
Aurvana AceとAce 2
販売されているのは「Aurvana Ace」と「Aurvana Ace 2」で、2機種とも価格はオープンプライス。クリエイティブストアでの価格は、Aurvana Aceが2万780円。Aurvana Ace 2が2万3800円だ。共通の特徴は、xMEMSのMEMSスピーカー(Cowell)とダイナミックドライバーのハイブリッド構成を採用していること。違いは外観のカラーリングと、Aurvana Ace 2はクアルコムのAdaptive ANC技術とaptX Losslessに対応していることだ。後述するように、音質傾向についても違いがある。
過去の記事で触れたように、MEMSスピーカーを高音域用のドライバーとして採用している理由は、高域特性が優れていることに加えて、MEMSスピーカー単体ではアクティブ・ノイズキャンセリング(ANC)を効かせるのに必要な能率の高さを確保できないためだろう。低音域用のドライバーには10mm径のダイナミックドライバーを採用している。
Cowellユニットは、バランスド・アーマチュア(BA)型ドライバーの1/3程度の厚さで済むため大変コンパクトであるが、昇圧用の専用デバイスが必要になる点も考慮しておく必要がある。
違いは見た目と対応コーデック、ANCの搭載
Aurvana AceとAurvana Ace 2の外観は、カラーリングの違いだけでほとんど変わりない。Aurvana Ace 2は半透明で未来感が感じられるデザインだ。ゲーミング用途などに使うと、気分が上がるだろう。ケースはスリムでボケットに収まりやすい。
本体は「AirPods」ライクなスティック部分が垂れ下がるデザインで、ノズル部分も耳の奥に挿入するタイプではなく、耳穴を軽くおおうだけだ。楕円形のイヤーピースはサイズを適切なものにすれば、しっかりと耳に装着できる。
操作はスティックの検知部をタップする方式だが、操作を検知する感度はあまり良くない印象だった。確実に操作したい人は、専用の「Creative」アプリを使用した方がいい。 Aurvana AceではANCの効き具合をコントロールできるスライダーがアプリ上で表示される。ANCを最大にしても、自然に柔らかに効く感覚だ。
Aurvana Ace 2ではAdaptive ANC技術によって、ANCの効き具合は自動的に制御される。効き具合はAurvana Ace 2の方がやや強めと感じる。
音づくりの違いにも注目
肝心の音質について。Aurvana AceとAurvana Ace 2では音質というよりも音づくりの傾向が異なる。Aurvana Ace 2は明るめで、低域と高域に少し強調感を感じる華やかな音作りなので、一般的にはAurvana Ace 2の方が音がいいと感じられるだろう。Aurvana Aceはこれよりも落ち着いた音だ。ただし、音質の観点でAurvana Aceが劣るわけではないので、好みで選ぶのがいいと思う。
音質はAurvana Ace/Ace 2のどちらもかなりいい。特にANCをオフにした状態ではきめ細やかな再現力が伝わってくる。中高域の再現力が素晴らしく高く、女性ヴォーカルの声質までよく分かり、帯域の上まで曖昧にならずに明瞭に再現する。弦楽器の音も鮮明でくっきりと力強い。Aurvana Ace 2は中高域に強調感があると書いたが、結果としてより細かい音も把握しやすい再現になっていると感じられた。低音もしっかりとパンチがある。特にAurvana Ace 2はかなりの迫力を感じる。ただし中高域の再現力の高さとのバランスを考えると、低音はもう少し引き締まった鋭さが欲しいところではある。
同じCowellを搭載するNoble Audioの「FALCON MAX」との比較では、全体的な透明感や低音の質などは譲るが、価格差を考慮するといい選択肢と言える。
印象的だったのは違いよりも共通点だ。FALCON MAXとAurvanaシリーズを聴き比べると、高音域の再現性がいいという共通点に気付く。例えば、ベルやハイハットのような金物の音が鮮明で力強い。どちらも、音が高い周波数帯まで減衰せず、しっかりと鮮明に再現されているのが特徴だ。従来のハイブリッド型イヤホンにはなかったような、優れた再現性だ。MEMSスピーカーによる高域再現力の高さは、BA型ドライバーに変わる新しいドライバーとしてもかなり有効であると考えられる。
発音体として、MEMSスピーカーが持つ特性は、インパルス応答に優れ、位相特性が揃っていることなどさらにたくさんある。本来ならば、MEMSスピーカーをフルレンジの再生に使用した製品の音を聞きたいところだが、完全ワイヤレスイヤホンの高級機種では、ANC搭載が商業的に必要な条件になっているので、どうしても難しい面が出てしまうのだろう。
複数のスタイルで登場するMEMSスピーカー搭載イヤホン
xMEMSのロードマップでは、感度の問題を克服するMEMSスピーカーが2025年後半ごろに現れるので、フルレンジでの使用はまだ先になるだろう。2024年はBA型ドライバーからMEMSスピーカーへの置き換えがどのぐらい進むかがポイントになると思う。
一方、有線イヤホンでは高級機種でもANC搭載が必須ではない。つまり、感度の制約はないので、Singularity Audioの「ONI」など、MEMSスピーカーをフルレンジで使用するハイエンドの有線イヤホンも注目されていくだろう。こうしたイヤホンの駆動には、iFi audioの「Diablo」シリーズなど、MEMSスピーカーの駆動に対応したヘッドホンアンプを使用することになる。また、Noble Audioの「XM-1」のように独自の回路を有したイヤホンも登場する予定だ。こちらは、MEMSスピーカーを駆動するアンプに加えて、DACなども搭載し、USB接続とUSBバスパワー駆動できる点が特徴となる。
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