「レグザエンジンZRα」の実力を引き出す最新技術、CESで有機ELとMini LEDの新機種も
ASCII.jp / 2024年1月9日 12時0分
2024年1月9日からアメリカで開催されるCESに、今年もTVS REGZAが出展する。これに合わせて、国内でも開発中の新技術についての説明会が開催された。おそらくは2024年の新製品に搭載されるであろう新技術について解説しよう。
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CESのブース内で展示する製品は、開発中の有機ELテレビとMini LEDバックライト搭載の液晶テレビだ。比較対象として「X9400S」と「Z875」も展示され、映像と音の再現性の違いを比較できるようにする。開発中の機種が採用している高画質エンジンは「レグザエンジン ZRα」だ。現在発売されているモデルと同じエンジンである。
レグザエンジン ZRαは高いポテンシャルをもったエンジンで、現行機ではすべての実力を発揮できているわけではない。そこに新たな技術を盛り込むことでさらに性能を高めていけるというのがTVS REGZAの考えだ。高画質エンジンは毎年のようにリニューアルできるものではなく何年か使い続けることを前提として開発されている。レグザエンジン ZRαにはさらなる新技術を盛り込む余地があるというわけだ。
実世界の光のきらめき、あざやかさ臨場感を再現する AI光景再現テクノロジー
開発中の新技術として紹介されたのが「AI光景再現テクノロジー/Advanced AI Picture Optimizer」だ。これは、従来からのAIエンジンによるコンテンツタイプ判別に加えて特徴的なシーンを判別し、それらのシーンをリアルに再現する技術。特徴的なシーンとしては「夜景」「花火/星空」「リング格闘技」「ゴルフ/サッカー」などがあり、これらのシーンと判別すると、専用の映像処理が行われて“最適な映像を再現”できるという。
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最適な映像の再現というのは「実際に見た景色に近い映像の再現」だ。これは物体の光(自発光と反射光の違い)を再現することによって行われる。例えば「夜景」では街灯やネオンといった自発光の小さな光を鮮やかに再現するため、輝度ピークのブーストや高輝度での色抜け(明るくなると色が失われて白っぽく感じてしまうこと)の防止、正面積の小さな光も鮮明に描くためのエンハンス、背景となる暗い夜空が明るくなりすぎないように暗く沈める、などの映像処理とパネル駆動処理が行われる。
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「花火」は映像処理としては「夜景」と同じようにも思えるが、夜景は映像の動きが比較的少なく、花火は打ち上げられた花火は鮮やかに発光して広がり消えていくように動きが多くノイズも目立ちやすい。こうしたノイズ低減処理も加わっているなど、処理としては別のものになっているそうだ。
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「リング格闘技」では、たくさんの強い照明で照らされることによるハレーションを抑える処理が行われる。実際のリング付近では照明は思った以上に強くまぶしいため、撮影された映像はその影響で白がとんだ感じ(輝度が上がりすぎて白っぽくなってしまう状態)になるし、強い光で照らされたリングのマットの反射光でリング全体が白く発光したような映像になりがちだ。この感じを抑えて、白とびしがちな選手の肌の質感、筋肉の動きがよくわかるように再現する。全体に白っぽくなりがちな映像も背景を沈ませてリアルなコントラスト感を復元するという。
このほか、REGZAが得意とする「ゴルフ/サッカー」では、緑の芝を鮮やかに描くだけでなく芝目や微妙なアンジュレーション(勾配)までわかるような再現を行うという。
映像処理エンジンの性能に加え、パネルの潜在能力を引き出す
こうした特定のシーンに特化した映像処理というと、さまざまな映像の特徴をデーターベース化して最適に処理するようなものがあったが、いわゆるシーンとしてトータルでの見え方まで考えた処理というのは珍しいだろう。ジャンルにより映像傾向の判別に加えてシーンも判別するなど映像解析の技術も高度になる。そして多種多様な処理を行うのも大変だ。レグザエンジン ZRαは優れた処理能力を備えており、特徴的なシーンについては開発中のものだけでなくさらに多くの特徴的なシーンを盛り込むこともできるそうだ。
そのような特徴的なシーンとして、筆者は「特撮」をリクエストさせてもらった。特撮好きとしては、最新のハリウッド映画にあるような本物と感じてしまうようなリアルな再現を適用するのは間違いで、着ぐるみならではの質感、本物ではないが仮装したヒーローたちの本物の姿を描く必要があると感じている。マニアのかなり高度な要求なのでどこまで実用になるかはわからないが、こうしたCGと模型や着ぐるみの違いまでそれぞれ適切に処理することも不可能ではない。今後の可能性まで考えると実に興味深い技術と言える。
こうした映像処理は信号処理だけではなく、パネルの性能をさらに引き出すことでも実現する。開発中モデルの有機ELパネルはまだどこでも製品化されていない最新仕様のもの(筆者の見た感じでは、MLA技術を搭載したLGディスプレイ製のmetaパネルと思われる)で、最新パネルのポテンシャルをフルに引き出すためのパネル駆動技術も盛り込まれる。
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これはMini LED搭載の液晶の開発中モデルも同様。液晶テレビはLEDなどを使ったバックライトが光源になるので、バックライトが明るさを決めると考えて間違いない。LEDなどの光源の絶対的な明るさに加えて点灯時間で明るさを再現しているわけだ。レグザエンジン ZRαではさらに点灯時間に加えて駆動電流もダイナミックに制御することで明るい光の輝度ピークを高め、逆に暗いシーンでは点灯時間だけでは制御できない微妙な明暗の再現のために駆動電流の制御が行われる。これにより、強い光と黒浮きのない引き締まった黒の再現を可能にしているという。Mini LED搭載液晶テレビではこれを「Mini LED高コントラストテクノロジー」と呼んでいる。
実際に展示で使用されるデモ用の映像も確認したが、有機ELテレビの眩しいほどの明るさには驚いた。しかも明るい光が白っぽくなることもなく色が鮮やかで濃厚。有機ELとは思えなく力強い映像だ。ボクシングの中継では白飛びしがちな強い光の中で選手の肌や筋肉の動きが豊かに描かれた。強い光に照らされて真っ白くなってしまいがちな肌の質感を取り戻してリアルな感触の映像にしている。眩しさでかすんでしまいがちなリング外の観客も余計な明るさを抑えることで見通しもよくなるなど試合会場の臨場感がよく伝わる。
Mini LED搭載液晶テレビでも余裕のある明るさと色鮮やかさを活かしながら、暗部をしっかりと引き締めてコントラスト感の高い映像に仕上げている。エリア駆動もかなり細かいようで夜空の星のような映像でも星だけがキラリと光るような映像もかなり優秀。ゴルフやサッカーのシーンでは短調に鮮やかな緑の芝というのではなく、芝の生え方や微妙な傾斜までよくわかるリアル志向の再現になっていた。
展示デモの映像は開発中のもので、実際の製品としての画作りはまだこれからという段階だそうだ。しかし実力としてはかなりのもので、実際の製品としての映像が早く見たくなる。
サラウンドはついに5.1.2チャンネルへ レグザイマーシブサウンド 5.1.2
今度は高音質技術だ。新開発のオーディオポストプロセッサにより5.1.2.ch出力に対応するという。これまでの信号処理はステレオ音声ならば2チャンネル処理がベースで、それをサラウンド化して両サイドや上部のスピーカーに音を振り分けるような仕組みだった。しかし、5.1.2ch出力に対応することで、各チャンネルのアンプやイコライザーも独立して搭載している。スピーカーの周波数特性の補正も各チャンネルが独立して行われるし、各チャンネルの位相特性を揃えるタイムアライメント補正も行われる。言わば真のマルチチャンネル再生と言っていいスピーカーシステムなのだ。
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実際に音楽番組などを聴いてみると、音の広がりや空間の再現が大きく変わる。包み込まれるような音場でありながら歌声や演奏はしっかりと前方に定位して画面と一致する。声の明瞭度や演奏の情報量も豊かで、エコーで音の広がりを高めただけのようなサラウンド感とはまるで違う。これがテレビ内蔵スピーカーの音かと驚くほどだ。
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ただし豊かなサラウンド再生の効果が得られるエリアは決して広くはなく、画面のほぼ正面の数人が実感できるくらいだそうだ。それでも十分なエリアだとは思うが、視聴者の位置や距離をミリ波レーダーでセンシングし、その位置に合わせて最適なバランスに調整する機能が組み合わされればエリアの狭さは大きな問題ではなくなりそう。このあたりの従来の技術も組み合わせた実際の製品での仕上がりも楽しみだ。この高音質技術は有機ELテレビ、Mini LED搭載液晶テレビのどちらにも搭載されるという。
有機ELテレビもMini LED搭載液晶テレビも期待度満点 2024年のレグザが楽しみだ。
現在の薄型テレビは大きく分けると有機ELと液晶のふたつがあり、メーカーによっては有機ELテレビを最上位とするなど、ラインアップはさまざまだ。レグザでは以前からふたつのパネルのどちらにも最上位モデルを発売するなど、どちらも本気で高画質・高音質を追求している。我々ユーザーが自分の好みや使い方で好きなパネルの製品を選べるようにするためだ。今回の技術展示でもどちらも期待以上の可能性を感じることができた。2024年のレグザの本気が現れた有機ELテレビとMini LED搭載液晶テレビの新製品に期待したい。
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