ソニーのXRは圧倒的に解像度が高かった アップルと違い、クリエイターに特化した作りに
ASCII.jp / 2024年1月15日 7時0分
ソニーは2024年1月9日、アメリカ・ラスベガスで開催のテクノロジー展示会「CES 2024」において、4K OLEDマイクロディスプレーを搭載したXRヘッドマウントディスプレーを開発していると明らかにした。2024年中の発売を予定しているが、製品名、詳細な発売日、価格、販路、仕様などは今後、発表となる予定だ。
バーチャル空間でも「α1」の質感がわかる
筆者は幸運にも、開発中のXRヘッドマウントディスプレーを一足先に体験することができた。
頭に装着する方法は、PlayStation VR2と同等だ。額部分にパットがあり、後頭部のダイヤルを回すことで、頭のサイズに合わせていく。
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筆者は普段、メガネを使っているが、XRヘッドマウントディスプレーではメガネを併用しての使用が可能だ。ディスプレー部分はリフトアップに対応するので、バーチャル空間から現実空間を自由に行き来できる。
目の前に見えることになるディスプレーは片目4K、両目8Kの高解像度を持ち、大型の1.3型OLEDマイクロディスプレーを搭載している。
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実際に装着して見てみると、確かに圧巻の精細さを誇っていた。デモでは美術館のような場所にソニーのデジタルカメラ「α1」や、絵画、小さな文字で書かれた古文書が浮かんでおり、自分の手でそれらの物体を引き寄せ、じっくりと見ることができた。
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α1は、カメラの質感が良くわかるし、古文書の文字もしっかりと読むことができた。
筆者はこれまで様々なXRヘッドマウントディスプレーを被ってきており、Apple Vison Proも試したことがあるが、ソニーはアップルに匹敵するクオリティーを誇っていた(アップルもソニー製ディスプレーを使っていると思われる)。
クリエイター向けのXRとして高精細を重視
ただ、今回試したソニーのXRヘッドマウントディスプレーは高解像度ながらも視野角が物足りない印象があった。
このあたりについては「今回は視野角ではなく解像度に振っている」(担当者)とのことであった。確かにアップルは視野角のほうに降り、没入感を優先しているのに対して、ソニーは「クリエイター向けのXR」として、視野角よりも高精細を重視しているようだ。
操作は、左手には指輪型のデバイス、右手には人差し指を輪っかに通して持ち、人差し指でクリックできるデバイスを装着する。手の動き自体は本体にあるカメラで認識するが、それらを補足するためのデバイスとなっているようだ。
操作自体は、最初こそ戸惑うが、実際にα1の場所を動かしたり、さらにα1で写真を撮影するなどの動作は簡単にできるようになった。
本体には発表されたばかりのクアルコム社製「Snapdragon XR2+ Gen2」とバッテリーを搭載。OSとしてはAndroidとなっているが、主に設定などをするためのものだ。
ゴーグル単体で使うのではなく、USB-CやWi-FiでPCと繋げて利用する。
アップル「Vision Pro」と違い、3D制作などに特化
ソニーは、今回のXRヘッドマウントディスプレーについて、当面は一般向けの販売は想定しておらず、まずは3Dコンテンツクリエイターなどのプロ向けへの販売を予定している。
そのため、第一弾としてシーメンス社とパートナーシップを組み、同社のNX Immersive Designerと統合し、製造業向けに3D空間で、デザインやレビュー、協業の作業を行えるようにするという。
この市場においては、かつてマイクロソフトが「Hololens」を手がけていたが、あまり上手いっている印象はない。実際、Hololensは視野角がかなり狭く、解像度も低く、使い勝手はイマイチだった。用途に関しても、工場などのメンテナンスや研修作業向けが多いという感じであった。
ソニーとしては、片目4Kという圧倒的な高解像度での違いを見せつけるとともに、クリエイター向けというソニーが得意とするユーザーターゲットに絞ることで、ビジネスチャンスを見いだしているようだ。
奇しくも今年のCESが始まる直前にアップルが「Apple Vison Proを2月2日に米国で発売する」とアナウンスした。当然、ソニーのXRヘッドマウントディスプレーもApple Vison Proと競合するような気もするが、こちらもApple Vison Proが「空間コンピューティング」として幅広い用途を狙っているのに対して、ソニーとしては3D制作などのクリエイターに特化する戦略で、棲み分けを図っていくようだ。
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筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)
スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。
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