米国で特許侵害クロ判定で一時は米国で販売停止のApple Watch、修正は認められるか?
ASCII.jp / 2024年1月13日 9時0分
2023年末に米国でApple Watch2機種が販売停止となった。アップルはその後、上訴手続きをとり、措置は一時的に解除されている。これまでの流れをまとめたい。
![Apple Watch](https://ascii.jp/img/2024/01/13/3668931/x/b0732813c89deb3c.jpg)
争点となっている特許は血中酸素濃度センサー関連
アップル製品が販売停止というのはなかなかない。スマートフォンが普及し始めた頃、アップル、サムスン、HTC、ソニー・エリクソン、モトローラなどがそれぞれに特許を主張したり、されたりして、法廷で争っていた時期があった(最近ではOPPOがNokiaとの特許訴訟に敗れ、ドイツで販売停止という事例がある)。しかし、15年以上の歴史を持つiPhoneが販売停止になったというのは記憶にない。
特許訴訟にかけては百戦錬磨という印象のアップルだが、今回は敗れている(不服として上訴しているが)。それも普及が進むApple Watchだ。
問題となっているのは、アップルがApple Watchに導入した血中酸素濃度測定機能(パルスオキシメータ)。これが、自社の特許を侵害しているとして、医療デバイスメーカーのMasimo(マシモ)が提訴したのだ。2021年のことだ。
2023年10月、米国国際貿易委員会(ITC)はMasimoの主張を認め、アップルにクロ判定を下し、同年に発売した「Apple Watch Series 9」「Apple Watch Ultra 2」の2機種について輸入を禁じた。ITCの決定について60日の間にレビューすることになっていた米政府(米通商代表部)は12月26日、ITCの判断を支持する見解を下した。これにより、アップルは2機種を米国に輸入して販売することができなくなった。
実際、その2機種は年末(結局は一時的だったが)に米国の実店舗とApple Storeから姿を消した。米国外の市場は影響を受けていないし、米国でも2機種以外のApple Watchはこれまで通り販売できる。
販売禁止は一時的に解除されたものの……
年末商戦のピークは過ぎているとはいえ、ショッピングシーズンではある。アップルの対策は、ITCの判断を不服として連邦巡回区控訴裁判所に上訴しつつ、輸入禁止措置を回避するために製品を再設計して、税関・国境警備局に提出。その間、控訴裁に輸入禁止措置の一時停止を求めた。
アップルは法廷に提出した書類で、販売禁止が続くと「取り返しのつかない害」を被ると主張している。これが認められ、2機種は12月27日頃、再び店頭とオンラインで購入可能となった。
予定どおりであれば税関・国境警備局は、アップルが提出した是正案についての判断を下すことになっている。なお、再設計については、アップルはソフトウェアで対応しようとしているようだが、Masimoはこれでは不十分としている。
スマートウオッチ市場でアップルは最大手だ。Couterpointの2023年第3四半期のデータによると、22%でシェアトップとなっている(https://www.counterpointresearch.com/insights/global-smartwatch-shipments-market-share/)。
過去にアップルとの接触もあったと語るMasimoのトップ
Appleという巨人を相手に戦うMasimoとはどのような企業か。1989年にMasimoを創業し、現在もCEOを務めるJoe Kiani氏を取り上げた記事がWall Street Journalに掲載されている(https://www.wsj.com/tech/joe-kiani-entrepreneur-apple-warning-52eb09a9)。
それによると、Masimoとアップルとの出会いは2013年のちょうど今頃。CESの会場でのことだという。Masimoはアップルのデバイスに接続できるパルスオキシメーターを展示、その数ヵ月後にアップルから接触してミーティングを持ったと明かしている。
さらにその数ヵ月後、アップルはMasimoの最高メディカル責任者を起用。またMasimoからスピンオフした企業から、トップエンジニアなども引き抜いたとのこと。なお、この最高メディカル責任者は、裁判の席でアップルからMasimoの機密情報を持ち込むよう求められたことはないと証言している。
しかし、2019年にアップルは血中酸素濃度センサーに関する複数の特許を公開、ここにMasimoからスピンオフした企業のエンジニアが発明者として記されていたという。2020年、アップルは血中酸素濃度を測定できるApple Watchを投入、Masimoは提訴した。
Kiani氏は訴訟によるコストなどで損失を被っていることを認めながらも、「世界で最もパワフルな企業が悪い行動を取り続ける。これを変えることができれば、自分がやっているどんなことよりも世界に影響を与えるだろう」とWall Street Journalに語っている。
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