インテルがCPUの最低価格を82ドルに引き上げ、もう50ドルでは売れない製造コスト問題 インテル CPUロードマップ
ASCII.jp / 2024年1月15日 12時0分
今年のCESの情報は特集ページにまとまっているが、AMDおよびNVIDIAに関してはKTU氏による詳細レポートが上がっていて特に追加すべきこともないので割愛し、インテルについてだけ補足しておきたい。
インテルは現地時間の1月8日に、Client Open House Keynoteを開催、翌1月9日には"How Intel Automotive Drives Intelligence into Every Mile"と題した自動車向けの講演と、Pat Gelsinger CEOによる基調講演の3つ(および現地ブースによる展示)が行なわれたほか、Sphere Vegasの球体にCore Ultraのロゴを表示するといったアピールも行なっている。
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さてそのOpen House Keynoteで示された内容の概略はASCII.jpの記事で説明しているが、まずクライアント向けで言えばRaptor Lake Refreshベース製品を大量にラインナップした。
デスクトップ向けのコアを転用した 第14世代Core HXシリーズ
最初が第14世代Core HXシリーズである。PCHが外付けであることからわかるように、これは本来モバイル向けの製品ではなく、デスクトップ向けのコアを転用したものである。
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ラインナップとスペックの一覧が下の画像で、Core i9-14900HXなど8+16コア構成であり、TBP(Typical Board Power:つまりPL1)だけ55Wに抑えてゲーミング・ノートブック向けなどに提供する構成である。
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本来ではこのゲーミング・ノートブック向けはCore UltraのHシリーズが担うべきマーケットのはずなのだが、Core UltraのHシリーズは以下の欠点がある。
- 最大コア数が6なので、Ryzen 8000 HSシリーズ(最大8コア)に比べると見劣りする
- Maximum Assured Power(cTDP Max)は65Wとやや高めに設定できるが、Maximum Turbo Power(PL2)は115Wと低めで、昨今のゲーミング・ノートブックの供給可能な電力量を考えるとやや不足気味(ピークで150W以上が供給できる)
- PCI Expressは合計28レーン利用できるが、x16での接続ができない(1×Gen5×1、3×Gen4x8、4×Gen4x1という構成)。したがってビデオカードを接続する場合、帯域が半分になる。実際にはx8で接続したからといってさしてフレームレートには影響はないのだが、スペック上は見劣りすることは間違いない
どうせゲーミング・ノートブックはビデオカードの搭載が前提なので、内蔵GPUが前世代のXe-LPベースであっても別に問題はない(どうせ使わない)わけで、それもあってこの世代ではRaptor Lake Refreshの継続を決めた模様だ。
あくまでもこれはHX SKUのみであって、第13世代のCore i7-1370Pのようなモバイル向けにPCHをパッケージ内に統合した製品は出ない(これはCore Ultraで完全に置き換え)ということらしい。
ただせっかくインテルはAI PCを標榜しているにも関わらず、この第14世代Core HXシリーズにはNPUが統合されないので、ここは16TOPSのNPUを統合したRyzen 8000シリーズに対して不利になるだろう。
さすがにRyzen 9 8945HSは発表されたばかりで比較ができないので、Ryzen 9 7945HXとのフレームレート比較や、さらにはRyzen 9 7945HX3Dまで含めての比較、99%フレームタイムなどの比較が示され、第14世代Core HXの優位性をアピールした。
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またゲーム以外でも性能の比較が示されたが、SYSmarkあたりまではともかくVEGAS ProやPremiere Pro&After Effects、Unreal Engineでここまで性能差が付くのは理解しがたい。
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Eコアをフル駆動させればここまで性能差が出る「可能性はある」のだが、Premier Pro&After Effectsはそこまで性能差が出るようなベンチマークではなかったはずで、どうしてこんなに差が大きくなるのか、解説してほしい気がする。
Unreal Engine 5に関しては、Unreal Engineと並行してCaptureも動作させ、キャプチャーした映像をそのまま処理するタスクでの処理時間を比較したものだそうだ。
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この手の数字はあくまでそれぞれのメーカーの発表のもので、必ずしも実情に沿っているか? というと微妙なものも多いが、少なくともArrow Lakeベースの製品が出てくるまではRaptor Lake Refreshでつながなければいけないわけで、弱気な数字は示せないのだろうというのは理解できる。
ちなみにThunderbolt 5やIntel Wi-Fi 7 BE200 Killer 1750xなどに関しての説明もあったが、これは別に第14世代Core HXの特徴ではなくCore Ultraの発表の際にも明らかになっていたことで、少なくとも現世代ではPCHに統合されるわけではない(別チップなりM.2カードなりの形で提供される)のでここでは割愛する。
Pentiumの置き換えにあたる Core Mobile Processor Series 1
次がCore Mobile Processor Series 1である。要するにCeleronの置き換えであるIntel Processorの上位にあたる(つまりPentiumの置き換え)、ということだろうか?
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Core Mobile Processor Series 1のSKU一覧は下の画像で、Intel Processorと異なりこちらはCore 7/5/3(iは付かない)がラインナップされる。
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ただ最上位のCore 7 150UでもPコア×2+Eコア×8ということからわかるように、第13世代CoreプロセッサーのU SKUのものの動作周波数を若干向上させたような構成になっている。プラットフォーム構成も第13世代CoreのU SKUと同じだ。価格は未公表だが、おそらくかつてのPentiumよりは上がっており、Core i3~i5グレードの値付けになっているものと思われる。
CPUクーラーが付属する Kなしのデスクトップ向けRaptor Lake Refresh
3つ目がKなしのデスクトップ向けRaptor Lake Refreshである。まずTBPが46/60/65Wがこの7製品、内蔵GPUを無効化したF SKUが4製品、それとTBP 35Wが7製品の合計28製品がラインナップされている。とりあえずCore i5/i7/i9に関しては、すでに出荷済みであるK付きモデルの下位に位置する格好である。
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全製品ともTBP、つまりPL1が65W以下になっていることで空冷クーラーで十分冷やせるという判断らしいが、Core i9-14900やCore i7-14700のPL2は219Wとけっこうなもので、もちろん瞬間的な数字なので熱的には大丈夫といえば大丈夫なのだろうが、わりと早いタイミングで熱容量的に飽和しそうであり、実効性能に影響しそうな感じがする(水冷クーラーなどを別に用意すれば済む話ではあるが)。
それよりも気になるのが、TBPが46/60/65Wの7製品と35Wの7製品の一番下にさりげなく(?)追加されたIntel Processor 300/300Tである。Intel Processor 300の構成を見ると、Pentium Gold G7400の後継といったあたりになる。
動作周波数を200MHzほど引き上げて、価格は77~87ドルが82ドルということで、価格はほぼ据え置き、性能微増といったあたり。Core i3-14100が134ドルなので、性能差と価格差のギャップは妥当といったところだろう。
それはいいのだが、実質Celeronが廃止され、Pentium相当がローエンドになることが改めて確認された格好になる。またPentium Gold G7400Tは77ドルなのに対し、Intel Processor 300Tは82ドルというあたりは、この82ドルをCPUの最低価格として定めた、という強い意思を感じさせる。
そもそもなぜインテルはPentium/Celeronのブランドを排したか? といえば、この2つが格安CPUブランドとして定着してしまい、いかに性能や機能を向上させてもCeleronブランドを冠する限り50ドルなどそういう価格でしか売れないことが問題になっているためだ。
実際Alder LakeベースのCeleron G6900は50~60ドルという価格になっている。その一方でプロセスの微細化にともない、生産コストは確実に上昇している。
Celeron G6900はEコアを持たない構成(6 Pコア+0 Eコア+GPU)で、ダイサイズは163mm2ほど。となると300mmウェハー1枚でとれるチップの数は最大でも380個ほどとなる。
一方でウェハー生産コストは、Intel 7はおおむねTSMCのN7と同等のプロセスだが、TSMCの7nm世代(おそらくはN6のものと思われる)は2023年で1枚1万235ドル、2024年で9725ドルという推定があり、丸めて1万とするとつまりチップ1個あたりのウェハー原価は26.3ドルほどになる。
実際にはインテルの製造コストはTSMCより高価とされており、またパッケージングやテスト、出荷などのコストも加味すると50ドルというのはほぼ原価に近いか、運が悪いと原価割れする価格である。要するにインテルはもう50ドルでCPUを売りたくないのだ。
今回最低価格を82ドルまで引き上げたというのは、せめてこの程度のマージンがないとビジネスを続けてくのが難しい(というか、無理)というインテルの主張でもある。果たしてこれにAMDも追従するのか、それともローエンド向け製品を引き続き50ドル台で投入し続けるのか(Athlon 3000Gは49ドルで製品投入され、一応現在もまだ購入できる)、このローエンドの動向が興味ある部分である。
特定のデスクトップ向けに登場するMeteor Lake-PSは Arrow Lakeと互換性がない
最後に余談というか今回の発表に関係ない話を1つ。連載741回の最後で少し触れたが、Meteor Lakeが薄型PCやNUCなどの特定のデスクトップ向けにもリリースされる予定である。
これはMeteor Lake-PSというコード名であるが、このMeteor Lake-PSはSocket 1851である。したがって、これはてっきりArrow Lakeと共通のモノなのだろうと思っていたら、なんと機械的には共通ながら互換性がないらしい。
実はこれ先例がある。デスクトップ向けのLGA1700はAlder Lakeで導入され、Raptor Lake/Raptor Lake Refreshでも利用できるわけだが、これとは別にAlder Lake-PSという特定用途向けのAlder Lakeが出荷されている。このAlder Lake-PSはやはりLGA1700を使うにもかかわらず、明らかにデスクトップ向けのAlder Lakeとは互換性がない。
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Alder Lake-PSはIoTエッジ向けということで一般市場に製品が流れることはないから混乱しないと言えばしないのだろうが、Meteor Lake-PSはそれこそNUCの類にも使われる可能性があるわけで、仮にこうした製品を購入してArrow Lakeが出たら載せ替えようと画策している方はご注意いただきたい。
Meteor Lake-PSはAlder Lake-PS同様にSoCタイルがフル機能有効化されており、外部にPCHを接続せずに利用できるようになっているらしい。したがって、Arrow Lake-Sに乗せ換えるのはおそらく不可能である。
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