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「最近の若者」いない説。年齢による違いは消えていっている

ASCII.jp / 2024年1月18日 7時0分

写真はイメージ

 『消齢化社会 年齢による違いが消えていく! 生き方、社会、ビジネスの未来予測』(博報堂生活総合研究所 著、インターナショナル新書)の冒頭には、1992年から続けている「生活定点」という長期時系列調査を分析する過程で興味深い現象を発見したと書かれている。

 最新2022年の調査結果を20〜30年前と比べると、かつて年齢によって大きかった価値観や思考の違いが、年々小さくなっていることがわかったのです。「経済格差」など、量的な面において社会のいたるところに“差”が厳然と存在する日本も、こと生活者の「意識や欲求」といった質的な面では、実は“違い”が小さくなりつつあるといえそうなのです。(「はじめに 〜さよなら、デモグラ。〜」より)

 これまでのマーケティングにおいては、商品やサービスのターゲットが“年齢視点”で設定されていた。ところが、「20代はこうで、50代はこう」というような考え方が通用しなくなりつつあるわけだ。

 活力を生み出す源泉にもなる“差”や“違い”が似通ってきているということを、否定的に捉える方もいらっしゃるかもしれない。しかし“少子高齢社会”をフラットに見れば、“体力も価値観もさほど変わらない大人がたくさんいる社会”と表現することもできる。

 年代観の“違い”にこだわるだけではなく、年代を超えた“同じ”に注目することで、新たなマーケットが見つかるかもしれない。そんな思いから同研究所では、間もなく平均年齢が50歳になる日本を「消齢化社会」と定義づけているのだ。

“消齢化”を推し進めた3つの変化

 さまざまなデータの分析結果、ここでは「高齢の人たちが、昔より、気持ちの面でも体力的な面でも若くなっているのではないか」との推論が導き出されている。具体的には、以下の3つの変化を背景として消齢化が進んでいるようだ。

(1)能力の面で、年齢に囚われず「できる」ことが大きく増えた (2)価値観の面で、世代交代や時代の共有を経て、社会から「すべき」が減った (3)嗜好や関心の面で、「年相応」から離れ出した生活者の「したい」が重なった(79ページより)

 どれも納得できるが、10代のころ、“団塊の世代”と呼ばれる上の世代から「〜すべきだ」「〜しなければいけない」という押しつけを強いられてきた私は、とくに(2)に共感する。そうした経験が「ああはなりたくない」という思いとなり、「下の世代に押しつけをするのはやめよう」という気持ちを根づかせたからだ(なかなかうまくいかないけれども)。

 しかし、他の2つにしても同じだ。(1)に関していえば、スポーツなどで体を動かし、スマホやインターネットを駆使する高齢者もいまや珍しくはない。(3)もそうで、若い子から80年代のシティ・ポップが再評価されるとか、お父さん世代が『チェンソーマン』など最近のアニメにハマるなどというケースは、いまやどこにでもある。

 しかも2032年には上述した団塊の世代が85歳のラインに突入し、社会から退出を開始することになる。戦後の高度経済成長期を経験してきた人たちが退くのだから、以後は「停滞した日本」という同じ時代を共有した世代ばかりで構成される社会になるわけだ。

 そうなると必然的に、「社会のダイナミズム」のようなものが徐々に失われていくであろうことは誰にでも想像できる。

消齢時代に訪れる4つの変化

 だが、それはよい意味で、個人の生き方や人との関わり方、社会構造、市場のあり方を大きく変えることにもなるはずだ。ここでは「個人」の部分に焦点を当てたいが、たとえば消齢化社会と積極的に向き合うことで、個人の生き方には4つの変化が現れてくるだろうとここでは推測されている。

1. 生き方の“脱デモグラ”が加速する

 注目すべきは、「過去には存在したかもしれない典型的な若者像、中年像、高齢者像は、もはや現実的にはいないのかもしれない」という視点である。

 そんな生活者の気づきはやがて、「年齢や与えられた属性に縛られず、もっと自由に生きてもいいんだ」という性別や年代などの「デモグラフィック特性(デモグラ)」に囚われない、「生き方の脱デモグラ」の意識を加速することになるでしょう。(108〜109ページより)

2. 個人の属性は、気分で変えながら生きる時代へ

 年齢をはじめ、性別などの個人の属性は「固定」のものではなく「可変」なものへ。(110ページより)

 「年相応」ではなく「気分相応」で、老若男女を柔軟に切り替えて生きる時代が訪れるということ。

3. 消齢化で「実質年齢」への関心が高まる

 消齢化がさらに進むことで、基準としての実年齢の意義はさらに薄れていくかもしれない。代わって重視されるのは、肉体年齢、肌年齢、精神年齢など、フィジカルやメンタルが実際にどの程度の状態なのかを測定して算出される「実質年齢」だ。

未来の生活者は所与の実年齢ではなく「実質年齢」を基に、自分が現実的に何歳相当なのか、何歳でありたいかを意識して、人生の目標を立てたり、健康ケアをしていくことになるでしょう。(110〜111ページより)

4.「実質年齢」基準で生き方の再編が始まる

生き方の基準は「実年齢」から「実質年齢」へ。そんな生活者の変化を後押しするように企業の動きも活発になると思われます。(中略)仕事についても、就職や定年時期を実年齢で判断せず、実務能力面の実質年齢に切り替える企業が増えるなど、「節目の実質年齢化」も、いろいろな分野で進んでいくかもしれません。(111〜112ページより)

 もちろん、こうした推測どおりに未来が進んでいくという確証はない。だが、必要以上に悲観的になる必要もないだろう。考え方次第なのだし、むしろプラス面に期待し、前向きに進んでいきたいと個人的には感じる。

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  • 消齢化社会 年齢による違いが消えていく! 生き方、社会、ビジネスの未来予測 (インターナショナル新書)博報堂生活総合研究所集英社インターナショナル

筆者紹介:印南敦史

作家、書評家。株式会社アンビエンス代表取締役。 1962年、東京都生まれ。 「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「東洋経済オンライン」「サライ.jp」「マイナビニュース」などで書評欄を担当し、年間700冊以上の読書量を誇る。 著書に『遅読家のための読書術』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(以上、星海社新書)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、などのほか、音楽関連の書籍やエッセイなども多数。

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