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ようやく高齢者にスマホが普及し始めた中国 ECで爆買い、そして詐欺のカモにされることも

ASCII.jp / 2024年1月21日 9時0分

 「アジア最後のフロンティア」といった表現がニュース記事で使われるが、中国ネット市場にも最後のフロンティアと呼ばれる存在がある。それが高齢者だ。

文革世代で最新のテクノロジーには弱い中国の高齢者 コロナ禍での政策からの必要性でスマホの普及が進んだ

 中国では都市と農村で大きな格差があるとよく言われるが、それでも若い世代はまずスマートフォンを持っている。日本を含めて、どの国でも高齢者のネット利用率は一般に若い世代より低いが、中国の高齢者は文化大革命を経験した断層の世代で、新しいことを学ぶのに特に消極的といわれている。そのためネット環境が整う中国でも、かたくなにフィーチャーフォンしか使わない高齢者も少なからずいた。

ようやく高齢者にスマホが普及し始めた中国
中国でも高齢者もスマホを使うようになったが、問題も発生している

 そんな中国で高齢者のネット利用が近年増えている。背景にはコロナ感染者がいない場所で活動してきたことを色付きQRコードで示す「健康コード」をはじめとした、ゼロコロナ政策がある。スマホがないと移動や生活すらままならなくなり、さらに強化されたデジタル監視社会下でスマホを使いだす高齢者は増えて習慣化した。

 高齢者もやむなくとはいえスマホを使わなければいけない中、子供や孫からのおさがりという人もいれば、高齢者向けのかんたんスマホを持つ人もいる。2023年にゼロコロナ政策は終了したが、こうしたスマホは結構売れていて、昔から中国のIT製品に触れている人には懐かしい、低価格スマホメーカー「天語(K-Touch)」や音楽プレーヤーメーカー「紐曼(Newsmy)」といったブランドが、高齢者スマホによって復活した。

ようやく高齢者にスマホが普及し始めた中国
高齢者向けのスマホが続々登場している
ようやく高齢者にスマホが普及し始めた中国
こちらは天語の懐かしいデザインのスマホ

 そうした製品の中には、日本円で1万円以下の格安スマートフォンもある。微信(中国向けWeChat)と抖音(中国向けTikTok)のほか、カメラや通話、ショートメールに機能を絞り、それぞれのアイコンだけを大きく表示させている。ノーブランドのものもあるが、この手の製品は商品ページに書いてあるスペックは大体信用できず、とはいえ故障はしているわけではないので、動くことは動く。カメラ性能もよろしくないが、大音量のスピーカーを備えたものもある。

 最近ではフィーチャーフォンでも微信や抖音ほか、支付宝(アリペイ)や健康コードを搭載した製品が続々と登場している。写真を撮ってSNSで知り合いとやりとりし、ショートムービーをなんとなく見たいだけならこれで事足りなくもない。ガジェットマニアとしても、テンキーがついててショートムービーが利用できる製品というのはグッと来るかもしれない(?)。

ようやく高齢者にスマホが普及し始めた中国
独特なボタン配置の製品も
ようやく高齢者にスマホが普及し始めた中国
手書きができるのは便利そうだ

 また変わり種としては平安通という高齢者向け見守りスマート製品を出しているスマホがある。これは専用の各種IoTセンサーを設置して使うもので、たとえばキッチン用だとセンサーが煙をとらえたり、転倒時に手元の緊急ボタンを押したりすると、警備担当や緊急連絡先に連絡する。

ようやく高齢者にスマホが普及し始めた中国
平安通の独居老人向けソリューション付きスマホ

高齢者もすっかりスマホ依存に ショートムービーをダラダラ見たり、買い物をしたり

 こうして高齢者向け端末が普及した結果、高齢者も長時間スマホを使うようになり、テレビや新聞からスマホへとメディアが移った。中国の各人気アプリはその新しいユーザーを逃さないとばかりに、ログインボーナスによるアプリ内コインを少額提供する。すると、高齢者はそれをありがたがって毎日のように使い、昼夜逆転する高齢者も出てきているという。そしてネット上では「ネットに依存する親はスマホで何をしているのか」というアンケートが各所で実施されるようになった。圧倒的に多かったのがショートムービーで、椅子に座ってぼーっと見ている高齢者が増えた。

ようやく高齢者にスマホが普及し始めた中国
ショートムービーを見る(刷小視頻)高齢者が増えたというアンケート結果
ようやく高齢者にスマホが普及し始めた中国
人気のアカウントは高齢者に受け入れられそうな笑顔でフォロワーを獲得している

 さらに高齢のネットユーザーの一部がECサイトでも商品を買い始めている。ゼロコロナ明けの2023年の年始以降、景気が良かったのは最初の数ヵ月だけで、その後は、現役世代はオンラインでもリアルでも消費を抑え気味で不景気感がハッキリしてきた。対照的に消費が目立ったのが貯金を持つ高齢者。こうして高齢者がオンラインショッピングの世界でも台頭してきたのだ。中国青年報社社会調査中心が1001人の中高年を対象にした調査によれば、半数近くが暇さえあればオンラインショッピングをするようになったという。

高齢者への高額商品の販売はもちろん 配信をサポートして、稼がせるモデルも

 中でも中国で人気のライブコマース(ネット版の実演販売)に高齢者が金を落とし始めた。リアルの世界でも中国人高齢者が暇をもてあまして、仲間内でどこかに行っては、使うわけでもない高価な食品やグッズをおみやげに買って帰るというのはよくある話。高齢者がライブコマースで消費を始めたら、それを狙う人々もいる。

 ライブコマース配信者の中でも「秀才」「一笑傾城」の2つは特に人気でそれぞれ千数百万のフォロワーと、2億超のいいねがある(その結果か高齢者から金を貪っていると批判を受け、その後活動が止まった)。人気の商品は健康食品や芸術品で、たとえば160元(1元=約20円)程度で売られている絵画に1000元弱の値を付け、それが40、50売られる配信があった。1個につき800元儲かって、それを50枚とすると1回の配信で4万元、日本円にして80万円儲かることになる。

 さらに配信者をサポートする企業(MCN=マルチチャンネルネットワーク)が高齢者を利用するケースもある。生活が苦しそうな高齢者が動画を配信し、カンパ代わりの商品を販売することで、視聴者から金をもらうというものだ。高齢者をマスコットにして金儲けをして売上の9割をMCNが持っていくというビジネスモデルなのだが、孤独や貧困に直面した高齢者を助けるという側面があるのも確かなので、なかなか難しい。

 中国の60歳以上のネットユーザーの規模は現在1億5000万人超で、今も増え続けている。今後も高齢者を巻き込んだ驚きのネットビジネスが出てくるかもしれない。

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