約50万円のアップル「Vision Pro」予約にいたった経緯を解説する(西田宗千佳)
ASCII.jp / 2024年1月20日 17時0分
1月19日22時(日本時間)といえば?
そう、もちろん「Apple Vison Pro」の予約開始時間だ。
まあ普通に考えればハードルは高い。高いだけでなく、「アメリカ市場向けのみ」というのがいろいろ大変だ。普通なら「数ヵ月から1年以内に日本で出るから、それまで待とう」という判断になるだろう。
だが、筆者の友人・知人やSNSで絡む人々はテックガジェットガチ勢ばかりなので、「3500ドル(およそ51万8500円)の高額商品をアメリカから(もしくはアメリカに行って買う)」覚悟が完了した、面構えの違う人々なのでだいぶ麻痺している。
というわけで、その麻痺した頭で購入にいたった経緯をちょっと解説してみよう。
まずは「アカウントの準備」から アメリカからは事前に「Tips」メールも
すでに述べたように、Vision Proはまずアメリカ市場でだけ売られる。
根本的な理由はアップルのみぞ知る、というところだが、出荷数量が限定されている(だろう)ことに加え、OS開発などに時間がかかると、各国でアプリを揃えるのに時間が欲しいことなど、複数の理由がありそうだ。予約開始後に公開されたFAQによればSiriや音声入力、キーボード入力は英語のみということで、利用にも制限はかかる。
その上で購入するわけだが、当然複数の課題が想定できた。
まずは「アカウント」。アメリカだけで売られるということは、購入と決済にアメリカ向けのApple IDが必要になる可能性がある。
次に「ストア」。これはアメリカのApple Storeであることが必須なのが事前にわかっていた。アメリカのApple IDでもいいが、日本アカウントのままでも、Apple Storeの設定国を「日本」から「United States」に変更すればいい。
アップルからは、予約開始日の公開に合わせ、「USのアカウント」向けに、Vision Proの予約注文に対するTips集がメールで送られてきた。
![](https://ascii.jp/img/2024/01/20/3672667/x/72712eea52b876a2.png)
このメールによれば、
・顔のスキャンをApple Storeアプリで実施するで、Face ID対応のiPhoneかiPad Proを用意するように
・そのためにもApple Storeアプリは最新のものにしておくように
・インサートレンズが必要な場合、メガネの処方箋を用意しておくように
とされている。なので上記の対応はまあ必須条件なのである。
「アメリカへ行って受け取るか?」問題
ここで1つ悩んだのが、「受け取りは店舗のみなのか」ということ。
噂としては「購入者にはガイダンスとフィットの時間があるので、店舗に行かなくてはならない」という話があった。
筆者は昨年6月の発表時に体験しているのだが、確かにちゃんとガイダンスとフィッティグの時間が設けられていた。それを購入時にもやるなら、たしかに「現地に行く」ことが必須となる。
そうすると、渡米費用がさらに追加になる。
……まあ、もうそこまで覚悟はできていたのだが、結果的にいえば、購入はオンラインで完結し、アメリカの住所への配送となるが、店舗へ行く必要はなかった。
これは実は、筆者の予想通りだった。
6月の取材時には、ガイダンスとフィッティング、その後の体験まで含めて1時間近くを要した。だからしっかりと記事が書けたのではあるが、それを購入者全員に強いるのは無理がある。
例えば各店舗に2人のオペレータを用意するとしても、営業時間(仮に8時間とする)内に16人しか捌けない。実際には出入りの時間を考えると、もっと少なくなる。
実はHMDが絡むビジネスにおいては、「顧客オペレーション時間の長さ」が常に課題とされている。それは空間コンピューティングデバイスであるVision Proも同様だ。だとすると、店舗受け取りもできるがiPhoneやMacと同じように「配送」もあるだろう……と予測していた。
Vision Proは高価な商品。この上に渡米+滞在費用が重なるのは避けたい。「当日店舗で手にする」という点には、メディアの人間として強い魅力を感じたものの、「できるなら配送がいいなあ」とは思っていた。
そのため、アメリカ在住の友人には、「いざという時、受け取って日本へ送ってもらう」ことをお願いしておいた。
![](https://ascii.jp/img/2024/01/20/3672668/x/3960b51694ef58be.png)
iPhone2台体制で臨むもすんなり完了
さて、予約開始である。
手元には2台のiPhone(普段使いのiPhone 15 Pro Maxと、検証用に残しているiPhone 14 Pro Max)を用意。片方は日本アカウント+USのApple Store、もう片方はUSアカウント+USストアの状況にして、22時を待った。
さて。時間になると、(あくまで主観だが)混み合うこともなくストアにアクセス。日本アカウントの方で進められたので、基本こちらを使った。
![](https://ascii.jp/img/2024/01/20/3672669/x/36f6f142a65d1ce3.png)
![](https://ascii.jp/img/2024/01/20/3672670/x/82d5e491441f8d14.png)
最初にしたのは顔のスキャン。これは6月の体験時より簡便化されていて、首を上下左右に振るだけですぐ終わる。
![](https://ascii.jp/img/2024/01/20/3672680/x/d4cfce8b4ed2c265.png)
次に「インサートレンズ」の話になる。「メガネをつけているか」「コンタクトをつけているか」などの項目が出てくるので、基本Yes/Noで答えていく。
![](https://ascii.jp/img/2024/01/20/3672673/x/4f08f9ab1e8811a6.png)
Vision Proは他のHMDと違い「メガネをつけたまま使う」設計になっていない。また、アイトラッキングとの相性の問題から、ハードコンタクトレンズも使えない。
![](https://ascii.jp/img/2024/01/20/3672674/x/34553803d383719d.png)
なので、「インサートレンズをメガネに合わせて作る」か「ソフトコンタクトレンズを使う」のか、といった選択が必要になる。インサートレンズは149ドル(およそ2万2000円)。同時に注文はするが、あとでメガネの処方箋をアップロードする形式だ。
![](https://ascii.jp/img/2024/01/20/3672675/x/b3cb21b33e18e99b.png)
アメリカの場合、メガネの購入には医師の処方箋が必要になるのが基本。その流れに乗ったものだが、日本の眼鏡店のように気軽にはいかない。なお、日本の眼鏡店の処方箋をアプロードしてみたが認識でエラーが出たので、正式な処方箋でないとダメである模様だ。
また、インサートレンズが変わるとレンズと目までの距離も変わるため、フェースパッドやバンドも変更になる可能性がある。そうすると別売で買い直す必要が出てきて、それぞれ199ドル(およそ2万9500円)と高価になっている。
だからできるだけ、この時点で正確な情報を入力しておいた方がいいだろう。
![](https://ascii.jp/img/2024/01/20/3672676/x/3e57008ba9089295.png)
到着は2月6日以降に
前述のように、今回発送はアメリカの知人宅宛。決済は日本のクレジットカードで大丈夫だったのだが、注文を試みた人々の中にはクレジットカードの承認で止まった人も多かったようだが、筆者は特に問題なかった。
というわけで、「米国内発送」「インサートレンズあり」「専用ケース追加」で、本体の米国内到着は「2月6日」となった。ストレージは256GBのモデルにしている。
![](https://ascii.jp/img/2024/01/20/3672677/x/583be3e42b75a7d6.png)
![](https://ascii.jp/img/2024/01/20/3672678/x/1fc80ae13f5ed284.png)
一部、1月20日昼頃の注文でも、ストレージが512GBもしくは1TBの場合、2月2日店頭受け取りが可能なところもあったようだ。知人の中には注目しなおして、2月2日に渡米する人もいる。
ただ筆者はまあ、知人宅からの転送が入っても発売から1週間+αくらいで手にできそうなので、確実性も考えてこのまま進めることにしている。
まだインサートレンズの処方箋問題は解決していないが、その辺も含めて発売までに考えていきたいと思っている。
![](https://ascii.jp/img/2021/04/21/3190980/x/b7141ab0a0105650.png)
筆者紹介――西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、書籍も多数執筆。テレビ番組の監修なども手がける。主な著書に「メタバース×ビジネス革命 物質と時間から解放された世界での生存戦略」(SBクリエイティブ)、「ネットフリックスの時代」(講談社)、「ソニー復興の劇薬」(KADOKAWA)などがある。
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