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能登半島地震、携帯キャリア“異例”の共同会見 ライバル同士が手を取り合い、復旧活動する時代に?

ASCII.jp / 2024年1月24日 6時30分

共同会見より

 2024年1月18日、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルが「令和6年能登半島地震における通信エリアの復旧状況について」という4社共同会見を実施した。

 ここ最近、NTT法廃止に反対という主張をするため、KDDIとソフトバンク、楽天モバイルが並んで会見や説明会をすることはあったが、NTTドコモも混じっての4社共同会見はかなり異例だ。

 あるキャリア関係者は「霞ヶ関(総務省のこと)に言われて、このような座組みになった」と裏事情を明かした。

 過去にも東日本大震災などで、通信エリアの復旧状況について、各キャリアが説明会を開催したことはあったが、いずれも個別での実施だった。今回のように4社が並んで、しかもNTTドコモのスタジオから配信して会見するなんて、異例の事態と言えるだろう。

携帯キャリアの災害対応は“競争”から“協力”へ?

 そもそも、大災害時の通信エリアの復旧作業というのも、本来であれば、キャリア間の「競争領域」と言えなくもない。

 「通信料金は高いかも知れないが、いざと言う時の安心感があるのでNTTドコモを契約する」という考え方で、キャリアを選んでいるという人もいるだろう。

 筆者は2011年、東日本大震災直後に、3キャリアが通信エリアをどのように復旧させているのかという取材を現地でしたが、仙台市内の巨大なビルに対策本部を持つNTTドコモと、通信設備内にこじんまりとした対策本部を設置していたKDDI、対策本部を置く拠点がなく、宿泊施設に仮設で対策本部を置き、取材はホテルのロビーで対応してくれたソフトバンクといったように、体制の違いをハッキリと目にしたのが印象的であった。

 同じiPhoneを取り扱い、スマートフォンでデータ通信ができ、料金プランは多少の違いしかなかったりする4キャリアであるが、通信設備や災害時の復旧体制においてはかなりの差があるのは間違いない。

 ただ、「いざと言うときの体力差も競争領域」というのは、もはや過去の話であり、それよりも「通信で大切な人をつなぎ、一人でも多くの命を救い、一日も早く普段の生活に戻す」という使命のもと、各キャリアが競争ではなく「協調」する時代に変わってきたのかも知れない。

能登地震ではキャリア間の連携がいくつか見られた

 今回の復旧活動でも、キャリア間の連携がいくつか見られた。 

 たとえば、陸路でのエリア復旧が困難であった輪島市町野地区においては、NTTドコモとKDDIが連携し、NTTが持つ船の甲板にアンテナを設置した船上基地局からエリア復旧をした。

 NTTが持つ船は海底ケーブルの修復などに利用されているため、長期間、海上で停泊できるのが特徴だという。同様の船はKDDIも所有しているが、タイミングなどもあり、NTTが出すことになったという。また、KDDIとソフトバンクでは、給油拠点の相互利用において、連携をしたという。

 停電により電気が通じていない基地局には発電機をつけて、電気を起こし、電波を吹くといったことをしなければならない。しかしその発電機を動かすための燃料が必要であり、災害時、この確保が結構、大変なのだという。

 ソフトバンクでは被災地の深部にベースキャンプを先行して設置し、開設した給油所では、キャリア間で給油を連携させたという。

“協調”の時代であれば協力体制を構築すべきだ

 これからも能登半島地震のような災害は全国で起こるだろう。

 こうした災害からのエリア復旧は、4キャリアが一致団結し、手分けして作業するという体制作りも検討すべきなのかもしれない。

 たとえば、避難所に対し、Starlinkアンテナを設置して無料Wi-Fiスポットを作る際にも、複数のキャリアが同じ避難所にStarlinkアンテナを設置する必要はないだろう。

 4キャリアが同じエリアを重複するのではなく、エリアを分担して面展開で避難所にStarlinkアンテナや充電スポットを作れば、早期に多くの人に通信を届けられる。

 現在、いざと言うときには他社のネットワークに接続できる「ローミング」の実現に向けて準備が進んでいる。

 ローミングが実現すれば、4Gや5Gのネットワーク復旧も、まずは4キャリアでエリアを分担し、早期に面展開で広く復旧させつつ、ある程度の面がカバーできたのち、他社のローミングに頼っている別のエリアにおいて、自社ネットワークを復旧させるといった取り組みもありだろう。

 キャリアがいまだに「エリア復旧の速さ、人的リソースの投入も競争境域だ」というのであれば、4社揃って会見などするべきではない。

 一方で総務省の意向で4社共同会見をするのであれば、今後はもっと4社が仲良く、手を取り合って、1日も早いエリア復旧をできるような協力体制を構築していくべきだろう。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

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