ビデオカメラにハイビジョンのビッグウェーブ! ソニーはいち早く1080i方式を取り入れた
ASCII.jp / 2024年1月24日 12時0分
◆アナログからデジタルへの移行期に出た ソニーのハイビジョンビデオカメラ
2000年からBSデジタル放送、2003年には地上デジタル放送がはじまり、それ以前のアナログ放送の時代からデジタル放送へと移り変わっていきました。
2000年以前のビジュアルの基準となっていたのはSD(StandardDentisy)映像、画素数にすると720×480ドットです。テレビ放送もビデオもこの域から出ることはなく、アナログ放送のノイズしかり、録画しても色乗りのよくない映像が限界でした。
デジタル化の波に乗ってノイズのないクリアな映像が手に入り、そしてハイビジョンへと高画質化したことで、圧倒的な綺麗さに「これはいままでと違うぞ」と誰もが認識することができたタイミングでした。
そうなると、同じような綺麗な映像を手に入れたい、撮影したいという欲求が生まれてくるのはAVマニアにとっては当然の流れ。ソニーは、コンシューマー向けの1080i方式ハイビジョン記録が可能な、HDV規格対応デジタルビデオカメラレコーダー「HDR-FX1」を2004年に発売しました。価格は40万円前後(オープンプライス)。
![ソニー](https://ascii.jp/img/2024/01/23/3673951/x/a5a3c31a561acb31.jpg)
実はハイビジョンビデオカメラとしては、ソニーに先駆けて日本ビクターが「GR-HD1」という機種を1年前に発売していました。ただし、「GR-HD1」が撮影できる規格は720P、日本のハイビジョン放送は1080i方式だったこともあって、そこまでのクオリティーに到達していませんでした。
◆民生用として初めて1080iで録画が可能だった
ソニーの「HDR-FX1」は1080i方式を採用し、民生用として初めて放送と同じハイビジョンクオリティーで撮影できるビデオカメラの登場とあって、その衝撃たるやすさまじいものがありました。
撮影媒体は、今までのDVビデオテープは同じままに、MPEG2-TS形式で記録する「HDV規格」を採用。今までのSD映像とくらべると、約4倍の情報量をもち、高精細で奥行きや立体感のある映像を撮影することができました。
フィルター径72mmの大口径レンズ、カール ツァイス レンズ「バリオ・ゾナーT*」に、光学式の手ぶれ補正を搭載。1080iに対応するHD CCD(1/3型 総画素112万、有効画素107万画素)を、3枚使った3CCDシステムで、光の3原色(赤・緑・青)に分光して3枚のCCDで独立して撮像するため、より高解像度で色再現性に優れた映像を記録できます。カメラ本体も超本格的なボディーで、重さは2kgもあって見た目の存在感もなかなかのものでした。
実際に使ってみましたが、ビデオカメラとしての扱いやすさはもちろんのこと、まるで報道カメラのような佇まいもあって、人混みにまざるとみんなが避けてくれるほど。そして驚いたのはその画質です。自分が撮影した映像をハイビジョンテレビに映して観ると、まるでそこにいるかのようなリアルな映像が、細部にまで高精細かつ美しい映像として見られるじゃないですか!
現在主流の4K映像からすれば、ハイビジョン映像なんてこんなもの? と思うかもしれません。けれど、当時のSD映像からハイビジョン映像への解像度の上がり方は視覚的にも振り幅が大きくて、心から綺麗だ! と思えるほどの感動があったのです。たとえ、ビデオカメラ本体が大きかろうとも旅先に持って行き、動画を撮って帰るだけの価値は間違いなくありました。
◆ソニーを超えられるのはソニーだけ
まだ誰もがSD映像でしか撮影できないときに、ハイビジョン映像を撮影できるんだという優越感は何物にも代えがたいほどでした。こんなすごいビデオカメラに追随するのはどこのメーカーも無理じゃない!? と完全にタカを括っていたところ、まさかのソニー自らがいきなり小型モデル「HDR-HC1」を発売しました。しかも翌年の2005年に。
![ソニー](https://ascii.jp/img/2024/01/23/3673952/x/cb176d0eba76004a.jpg)
正真正銘の1080iで撮影できるHDVカメラで、業務用的な巨大な「HDR-FX1」と違って、持ち運びしやすいコンパクトなハンディカムサイズに抑えたサイズ感にびっくりです。フィルター径37mmのカール ツァイス レンズ「バリオ・ゾナーT*」に光学10倍ズームを搭載。イメージセンサーには297万画素のCMOSセンサーを採用して、映像信号の高速読み出しと、高速信号処理をあわせてデジタルハイビジョン映像の記録のみならず小型化にも貢献しました。
高精細映像を高速処理するための「HDコーデックエンジン」についても、上位モデルである「HDR-FX1」と同じものが備わっています。アスペクト比4:3で1920×1440ドット、16:9ワイドで1920×1080ドットの静止画を「メモリースティック デュオ」に記録できます。また、動画撮影中に同時に1440×810ドットの静止画を記録したり、撮影後に再生しながら静止画を切り出すといったことができるのも、3CCDをもつ「HDR-FX1」にはなかった機能です。しかも、価格は18万円前後(オープンプライス)という価格はあまりにも安すぎる! あれ……、もうコレでいいんじゃないかと。
まさか1080i方式のハイビジョン映像が撮影できるビデオカメラが、たったの1年で、しかも極端に小さくなって価格まで安くなって出てきてしまって。ソニー、何をしてくれるんだ! と。
![ソニー](https://ascii.jp/img/2024/01/23/3673949/x/22eee5be0f23e7c3.jpg)
![ソニー](https://ascii.jp/img/2024/01/23/3673950/x/6ab3f2c6eae2b0af.jpg)
もちろん、ビデオカメラとしての細かな機能については「HDR-FX1」に分があるとはいえ、誰もがハイビジョン映像を撮って楽しめることを成し遂げてしまって、がんばって「HDR-FX1」を買ったユーザーは涙目でした。
そんなことはささいなことだとあざ笑うかのように、ビデオカメラの進化は止まることはありません。今度は、DVテープからHDDやDVD、メモリースティックへと記録媒体が変わっていくことで、撮影スタイルそのものが変わっていくのでした。
筆者紹介───君国泰将
![](https://ascii.jp/img/2022/06/01/3369681/x/fac309ba5f68b19b.jpg)
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