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Apple Music Classicalを試して気付いた「良さ」と「もの足りなさ」

ASCII.jp / 2024年1月28日 9時0分

 「Apple Music Classical」が1月24日に、ようやく日本でも公開された。米国など海外では、昨年の3月に配信が始まっていた。

App Storeのアプリページ(iPad版)

 既報の通り、Apple Music Classicalはクラシック音楽の配信に特化したサービス。検索や再生に使う「クラシック」アプリは、既存の「ミュージック」アプリとは別に提供されている。iPhoneとiPad用があり、App Storeで入手できるほか、Android版もGoogle Playストアで入手できる。iPhoneの場合、iOS 15.4以降を搭載した機種で利用でき、Apple Musicへの契約も必要だ。

クラシック特化のUIで楽曲が探しやすい

 すでに様々な記事で紹介されているが、従来のApple MusicとApple Music Classicalの違いに触れておく。端的に言うと、Apple Music Classicalはいわゆるクラシック曲しか扱わない代わりに、クラシック曲に適した複雑な検索機能を持ち、楽曲を見つけやすくなっている点だ。

 日本でサービスが開始されたので、iPhoneを使用してApple Music Classicalを試してみることにした。

 まず面白いのは、初めてアプリを使用する時に、既存のApple Musicで使用していたプレイリストから、クラシック関連の曲と思われるもの「のみ」が引き継がれていると言うことだ。

 例えば、私が作成したプログレを集めたプレイリストの中から、元ジェネシスのトニー・バンクスが管弦楽曲として書いた「セヴン -  - 管弦楽のための組曲」と、ディープ・パープルのジョン・ロードらによる「Guitar」が引き継がれていた。基準はミュージシャンなのかアルバムなのかはわからないが、上記の2つはクラシック派生音楽として納得できる範囲ではある。

 また、私がボスト・クラシカルやボスト・ミニマルとして分類していたオーラブル・アルナルズやニルス・フラーム、ヤン・ティルセンなども引き継がれていた。つまり、ポピュラー寄りの現代音楽家もクラシックの派生ジャンルとして認識されているようだ。

 これらを考えるとクラシック曲とはいってもそれなりに広く捉えていることがわかる。ジャズでもいわゆる「もろジャズ」のミュージシャンは引き継がれないが、ユーロジャズなど派生ジャンルの場合には引き継がれる場合があるようだ。

この作曲者のあの曲を中心に、異なる演奏を聴き比べやすい

 アプリの画面において、すぐに気付いたのはフォントがApple MusicとApple Music Classicalで異なることだ。日本語フォントはApple Musicがゴシック体だったのに対して明朝体が使用されている。また英字フォントもApple MusicとApple Music Classicalでは異なっている。これはクラシック音楽の上品さや古典感覚を演出しているように感じられる。

クラシックアプリで再生中の画面
ミュージックアプリでの再生画面

 操作においては、「今すぐ聴く」や「ライブラリ」など、大分類がミュージックアプリと共通化されているので、Apple Musicに慣れているユーザーならば使い方に困らないだろう。再生画面は、Apple Musicの歌詞ボタンが情報ボタンに変わっている。情報ボタンを押下げると、アルバム名や作曲家名に加えて、楽章、プロデューサー、レーベルなどの付加情報が表示される。

情報画面

 Apple MusicとApple Music Classicalで同じ曲を聞いてみたが、音質はほとんど変わらないように思えた。

 検索においては、検索欄にベートーヴェンと入力すると、一番上に作曲者として「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(作曲家)」のページが提示される。そこをタップすると、肖像画や人気作品、最新アルバムなどが表示される。作曲家の肖像はこのアプリのために新たにアップルが依頼したものだという。

作曲者のページの例(iPad版)

 ポイントは、人気作品としてベートーヴェンが作曲した楽曲が提示されるが、ここで示される交響曲やピアノソナタの名前は、曲名であり、実際のアルバム名ではない点だ。人気作品の候補から“交響曲第9番”を選ぶと、楽曲の解説が表示され、その下に初めて実際のアルバム名が提示される。

交響曲第9番 ニ短調のページ

 つまり、Apple Music Classicalでは、まず“ある作曲者が手掛けた楽曲”という概念があって、それに“その楽曲の演奏が収録されているアルバム”が紐づいているわけだ。“エディターのおすすめ”や“人気のレコーディング”としてピックアップされるアルバムは、カラヤンやフルトヴェングラーといった有名な指揮者のアルバムが上位に提示される。納得のいく結果だろう。

 ちなみに、ミュージックアプリで同じ検索をすると、検索結果の一番上に「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(アーティスト)」が出てくる。ここで、ベートーヴェンのアーティストページを開くと、その下にいきなり楽曲やアルバムのリストが並ぶ。これはポップソングの類別をクラシックの作曲家に適用したからだ。

 もうひとつ例を挙げると、現代音楽家フィリップ・グラスが作曲したミニマル音楽の代表作「北極星」(原題Etoile Polaire/North Star)はジャンルを超えて人気がある。

 カバー曲を探す際、私はApple Musicでは検索欄に(Etoile PolaireやNorth Starなどの)タイトルを入力して検索していたが、Apple Music Classicalではフィリップ・グラスの人気作品リストの中に「North Star」という楽曲がある。そこで演奏アルバムを見つけることがカバー曲を探したのと同じになる。北極星はエレクトロ系の演奏者にカバーされることもあるが、そうした曲はApple Music Classicalでは見つからなくなっている。

本格的なPCオーディオ再生には少しもの足りない

 少し気になったのは、マーラーを検索している時にバーンスタインのアルバムがなかなかトップに出てこないことだ。これはキュレーターとの見解の相違かもしれない。ちなみに、Roonでマーラーを検索するとバーンスタインのアルバムが上位に来る。

 もうひとつRoonと比較すると、「ショパンのノクターンをアルゲリッチの演奏で聴きたい」と思ったとき、Apple Music Classicalでは作曲者(ショパン)のページを開き、人気作品の下にある「すべての作品」をタップし、その中から「ノクターン」を検索して絞り込んでいく手順になるので、少々分かりにくいところがある。

 Roonならば検索自体が階層構造になっているので、ショパン>ノクターン>アルゲリッチと順にたどっていけるのが分かりやすい。

 そして、オーディオファンにとって一番大きな問題はMacでApple Music Classicaを使えないということだ。iOSやAndroidにUSB DACをつなぐ手はあるが、PCオーディオのシステムで再生するのなら、やはりMacで再生できないと使いにくいだろう。また、QobuzのようにRoonやAudirvānaのような音楽再生専用ソフトに統合ができないのも本格的なPCオーディオシステムでは使いにくい点ではある。

 Apple Music Classicalにはロスレスやハイレゾロスレスの高音質音源が揃っているが、それをiPhoneとAirPodsをBluetooth接続して聞くのがメインとなると残念に感じる人が多いに違いない。クラシックのファンならば、やはり家の大きなスピーカーで交響曲を聴きたいだろう。

より柔軟で高精度なAI検索に期待

 まだ問題はあるように思えるが、アップルはいずれ、アップデートで機能を増やしていくことだろう。今年度のWWDCではアップルが生成AIを大幅に導入するという噂もある。アップルには、ぜひAIを利用した検索機能をApple Music Classicalに導入してもらいたいと思う。

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