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アップル「Vision Pro」ハワイで買ったら税関で3万円を支払うことになる理由

ASCII.jp / 2024年2月7日 7時30分

 アップルの空間コンピューター「Apple Vision Pro」が、2月2日にアメリカで発売されました。旅&テックライターとして活動しているため、一瞬「買いたいな」と思ったのですが、Apple Vision Proを買うお金(約50万円)があれば、10万円の東南アジア旅が5回できるな……とも思ったり。そもそも、そんなまとまったお金がないので、自分は購入するのを諦めています。

日本発売未定の「Apple Vision Pro」。価格は3499ドル(約52万円)

 とはいえ、実物をいち早く触ってみたいのも事実です。同業の石川温さんや西田宗千佳さんはバッチリ購入予約をしており、ハワイのアップルストアで発売当日に受け取るとのこと。どうせならその様子も見てみたい。それならば……と「Apple Vision Pro購入旅inハワイ」へ同行することにしました! そんなわけで、今回は10万円で東南アジア旅レポートはお休みして、ハワイ旅のレポートをお届けします(アジア旅の続編は後日、掲載予定)。

今回の旅の目的は「ハワイでApple Vision Proを買う2人に同行」です。アスキーの記事でもおなじみ、左が西田宗千佳さん、右が石川温さん。

アメリカでしか買えない「Apple Vision Pro」 日本から一番近いハワイ州へ!

 石川さんも西田さんも、購入はハワイのApple Storeを選択しました。時差的にはアメリカ本土、それも東海岸エリアのほうが早くApple Vision Proの発売がスタートするので、アメリカ国内としてハワイは販売時間が遅いエリアです。ですが、日本からの往路が約6時間とフライト時間も短く、アメリカ本土への航空券よりは若干割安なため、ハワイを選択したとのことです。

 フライトはANAの羽田発=ホノルル着のNH186便です。羽田を離陸するのが21時55分で、ハワイ到着は同日の9時45分(現地時刻)。復路はNH185便です。出発が夜遅いため、平日の仕事を終えてからでも十分間に合うスケジュールです。ただし、到着は9時45分となり、Apple Vision Pro発売開始時刻の8時には間に合いません。いち早く手に入れるのが目的ですから、我々は前日着の2月1日の便で出発することになりました。

ANA SUITE LOUNGEに立ち寄り、景気づけにお寿司を食べてから出発します

 ちなみに日本各地から飛び立つホノルル便の多くは、夕方から夜にかけて日本を出発し、同日の午前中に到着するスケジュールになっています。これは日本だけでなく韓国からも同じ。しかも大型機が多く、そのぶん搭乗客も多いため、夜遅い出発の便だと入国審査が混雑していて時間がかかることがあります。今回、自分たちのNH186便では、1時間ほど並びました。

 入国審査に長時間並びたくない人は、成田を19時台に出発するZIPAIRのZG2便や、ハワイアン航空のHA822便がオススメです。ただしこの便だとハワイへ朝7時台に着陸なので、入国したあと荷物をどうするか、どこで休憩するかという事前計画も必要です。

ハワイ・ホノルル空港に到着! 節約のため3人でバス移動、宿泊はアパートです

 さて。入国審査に1時間ほどかかったため、ハワイ・ホノルルにあるダニエル・K・イノウエ国際空港を出たのが11時過ぎ。街の中心地への移動は普段ならUberやLyftを使うところですが、今回は約50万円もするガジェット買い物旅ということで、極力節約し、路線バスを使います。

路線バスなら1回3ドルで移動できる

 ちなみにハワイの路線バスは、大きな荷物は持ち込めず、バス停の案内にも「椅子の下もしくは膝の上に載せられるものまで」と書かれています。そのため3人とも、荷物は機内持ち込みできるサイズで準備しています。ただ、バスに乗ってみると、大型のスーツケースを持って乗車する人もいて、運転手からも特に注意はありません。車内混雑などの状況次第で黙認といった感じのようです。

一応バス停の注意書きには「大きなカバンは持ち込めない」と書いてあるものの、あまり守られていない様子

 宿も極力節約するため、Airbnbでアパートを1室借りて、3人で宿泊することにしました。一応、4人まで宿泊できる部屋ですが、ベッドはクイーンサイズがふたつしかないため、自分は日本からエアマットと毛布を持参し、床で寝ることにしました。

毛布とエアマットを持ってきました。マットは足踏みで膨らませられるタイプで、楽天市場で3999円で購入したもの
マクラをひとつ借りてエアマットに寝てみたところ。自分は節約旅に慣れているので、2泊ならこれでも十分快適です
「Apple Vision Pro」を買ったら速報で原稿を書く仕事が待っている2人には、ベッドで寝てもらいました

 これで1泊1部屋、約3万3000円。ハワイはホテル代が高く、ドミトリーでも6000円〜8000円ほどするため、広くてキレイでひとりあたり1万1000円程度なら、御の字です。というわけでぐっすり眠り、翌日は早朝からアップルストアに向かいます!

 (次ページ:アップルストアに到着)

発売日はアップルストアで(購入している様子を)生配信 2人で約100万円か……すごい!

8時の開店前の様子。韓国から買いに来ていた人もいました
当日はApple Store アラモアナ店に地元テレビ局や新聞の取材撮影で盛り上がっている……というわけでもなく、開店時のハイタッチもない、静かな幕開け
購入時に操作のレクチャーを受ける石川さん
無事購入した人たちで記念撮影。3台で合計150万円以上……と思うとすごい!
ちなみに自分は三脚にスマホ2台とアクションカム1台をつけて、配信しながら複数の動画を撮影しています

 ところでハワイにはApple Storeが3軒あったのですが、1月20日にワイキキ店(Apple Royal Hawaiian)が閉店してしまい、現在はアラモアナ店とカハラ店の2店舗。今回は石川さん、西田さんともにApple Store アラモアナ店で購入しています。石川さんは初代iPhoneも2008年にアラモアナ店で購入したとのことで、感慨深そうでした。

 Apple Vision Proの発売開始の様子や購入しているところは動画でもアップしているので、是非チェックしてください。

ワイキキにあったApple Storeは1月20日に閉店してしまいました

 (次ページ:ワイキキビーチを散歩! 食事は節約メインです)

せっかくなのでワイキキを散歩 食事は節約しつつも美味しいものを

 今回は、Apple Vision Proを購入する(人を見に行く)のが旅の目的ですので、ハワイらしいスポットを楽しむ時間はなし。それでも前日入りしたことや、西田さんの購入レポート記事にもあるように、店頭での予約時間を変更できため、多少、時間的な余裕がありました。

 この旅では、ワイキキビーチを散歩してハワイのローカルビールを楽しんだり、夜にハワイ購入組が集まって食事会をするといった楽しみがありました。2泊だけのハワイでも、意外と楽しめますね。

ワイキキビーチにて。到着日は天気が悪く、明るいハワイ感があまりなかったのがちょっと残念
これはハワイ名物のマグロ丼「ポケ丼」です
ハワイはローカルビールも多く「フライト」という飲み比べメニューもあります
宿泊したアパートには電子レンジが設置されていたので、スーパーで買ってきたサバ弁当(6.99ドル)を2回に分けて食べるなどして節約!

 ハワイで目的を達成したため、石川さんと一緒に、翌日、帰国します。帰国便のANA NH185便は、ホノルルを13時15分発。出発日は人気の青空市場カカアコ・ファーマーズ・マーケット(毎週土曜日開催)に立ち寄って、朝ご飯を食べてから空港に向かうことにしました。日本には、翌日の17時40分着予定です。

帰国する前にカカアコ・ファーマーズ・マーケットへ!

 このファーマーズマーケットは飲食店の出店も多くて、朝ご飯を食べるにはピッタリ。地元で作られた野菜や食料品なども売っているため、お土産の購入にも向いています。オアフ島内では曜日別にいくつか開催されているので、ハワイを訪れる際にはチェックしておくと楽しいですよ。

朝からBBQプレート(豚肉)を食べました。豚肉がカリカリに焼けていて美味しく、ガーリックライスが食欲をそそります

 お腹もふくれたところでホノルルの空港からNH185便に乗り込み、日本へと帰国します。石川さんは機内で購入したばかりのApple Vision Proを早速使っていて楽しそう。自分も頑張って買えば良かったかな……と、ちょっとだけ後悔しました。

飛行機内で楽しそうにApple Vision Proを使う石川さんを見ていたら、ちょっと欲しくなりました

羽田空港第2ターミナルに着陸! 共同キオスクを早速体験してみました

羽田空港第2ターミナルに着陸

 羽田空港の第2ターミナルへ、オンタイムで到着。実は、羽田空港では1月31日から「共同キオスクの実証実験」が始まっています。数年前から日本への入国時に税関でQRコードを使った電子申告が使えてはいたのですが、税関と出入国在留管理庁(入管)でデータを共有していないため、(1)入管でまずパスポートをキオスクに読み込ませてカメラの顔認証で通過し、(2)税関でパスポートとQRコードを読み込ませ、(3)カメラの顔認証で歩きながら通過する、というとても非効率なフローになっていました。自分は以前から、パスポートデータを税関と入管で共有できれば、1回のチェックでスムーズにできるのではと指摘していたのですが、これはまさに、その実証実験となります。

 実際の入国時の流れとしては、まず検疫(カメラでの体温測定などをしているカウンター)の前に設置された共同キオスク端末でパスポートとQRコードを読み込ませます。あとは入国審査も税関審査も、歩きながらの顔認証ゲートを通るだけでオーケー。入国に際しなにか問題があったり税関申請などがない場合は、パスポートを取り出さず素通りできます。すごい!

 かなりラクチンなので、早く日本各地の国際空港に設置してもらいたいです。ただキオスク端末が10台ほどしかなく、そこで5分ほど並ぶ必要があったため、正式採用時にはもう少しキオスク端末が増えるといいなと思います。

入国と税関両方の審査に必要なパスポートとQRコードの読み込みを、共同キオスクを使って1回で済ませられる(税関チャンネルの動画より)

 (次ページ:案外知られていない免税のルールとは?)

合計20万超えのガジェットは税関申告が必要です 案外知られていない免税のルールとは?

 というわけで、自分は実にスムーズに日本への帰国を果たしたわけですが、石川さんにはひとつハードルが。実はApple Vision Proの価格が免税範囲の20万円を超えているため、税関申告が必要で、3万800円の消費税を税関で支払うことになります。このことを石川さんがX(旧Twitter)で投稿したところ、疑問に思うリポストが多かったこともあり、実は意外と知られていないのかもしれないなと驚いたのでした。

 免税品というと「酒・たばこ・香水」がまず思い浮かびます。これは例えば、紙巻きたばこなら200本までなど、それぞれ免税範囲が本数や量などで決まっています。そのほかのものに関しては、海外市価の合計額20万円までが免税額となっています。

 これは合計額なので、例えば「5万円の時計と10万円のバッグ、8万円のスマートフォン」を海外で購入した場合、合計23万円ですので免税額をオーバーしてしまい、税関申告が必要です。ただし、合計額が20万円を超える場合には、20万円以内におさまるものが免税になり、その残りの品物に課税されるのです。この場合は10万円のバッグと8万円のスマートフォンが免税範囲で、5万円の時計のみに課税されるといった具合です。

 Apple Vision Proの場合はどうかというと、単体で20万円を超えてしまっているので、本体価格の50万円から20万円を引いた額ではなく、50万円ぶんが課税対象です。Apple Vision Proのケースやバッテリーなどあわせて購入した場合、そのぶんは20万円以内の免税範囲内になります。

税関申告時に払う税金はふたつ 「関税」と「消費税(消費税及び地方消費税)」

案外知られていない免税の範囲

 税関申告時に払う税金はふたつあり、「関税」と「消費税(消費税及び地方消費税)」です。関税は品目ごとに税率が決まっていて、例えば、衣類やバッグには15%が課税されます。腕時計やパソコン、スマートフォンなどは関税がかからず、Apple Vision Proもパソコンと同じ扱いになるため、関税はかかりません。

 また、海外での購入価格そのものが課税価格になるわけではなく、個人使用の場合は考慮され、海外購入価格の6割が課税対象価格となります。そのため、上記の5万円の腕時計に対して税金を支払う場合は、課税価格が3万円となり、3000円の消費税を納める必要があります。

 Apple Vision Proは約50万円なので、約30万円が課税価格になり、消費税は3万円ほどで、石川さんは3万800円を支払ったわけです。ちなみに税関ではクレジットカードのほか各種キャッシュレスでの支払いに対応しています。ただし、3万円以上の納税をクレジットカードで支払うと、システム利用料として、別途440円がかかるそうです。

石川さんは税関でApple Vision Proの消費税3万800円をお支払い

 実はアメリカにも、州によって税率は違うものの消費税(正確には小売売上税)があり、石川さんはApple Vision Pro購入時に税金をハワイ州に支払っています。それなのに日本帰国時にも消費税を払うことになるので、税金を2回支払うおかしな状況になっています。

タックスリファンド対象国なら税金の還付が受けられる でもアメリカは税をダブルで払うことになるため注意

 これを解消するため、タックスリファンドという制度を多くの国が採用しています。例えば、フランスやドイツといった国でも購入時に消費税を支払いますが、帰国直前の空港で還付申請手続をすれば、その国で支払った税金を返してもらえるのです。

 タックスリファンドには購入時の店舗で書類の発行などが必要なため、すべての物品購入で利用できるわけではありませんが、高級品・高額品を売っているお店は大抵対応しています。以前、パリのApple StoreでiPhoneを購入したとき、タックスリファンドの書類やレシートを発行してもらい、実際に空港で税金の還付(クレジットカードへ後日入金)を受けた経験があります。

こちらはベルリン空港のタックスリファンドカウンター(2016年撮影)

 また日本はタックスリファンドではなく、海外渡航者は免税対応店で消費税抜きの価格で購入できます。そのため、海外からの旅行者が日本で免税価格で購入し、日本国内で転売するという事例が多く発生しており、政府はリファンド型の導入を検討しているようです。

 じゃあApple Vision Proもタックスリファンドを利用すれば……といきたいところですが、アメリカはリファンド制度を採用しておらず、日本のように海外渡航者へは税抜きで販売ということもしていません。残念ながら現在のところ、免税額を超える商品をアメリカで購入すると、アメリカの小売売上税、日本の消費税をダブルで払う必要があるのです(オレゴン州のように小売売上税が0%の州もあります)。

Apple Vision Proをハワイで買った場合、4%ほどの小売売上税がかかりますが、ほかの州では8%かかることもあり、アメリカ内では税が安いほうなんです

 というわけで、日本発売日未定のApple Vision Proをアメリカに行って買ってこようかな、と考えている人もいるとは思いますが、製品自体が高い上に税金の支払いもあるので、そのぶんの予算も計算してからにしましょう!

この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama)

世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。

  • 「旅人ITライターさとる」(IT系メイン)
  • 「さとる・たべる・あそぶ」(旅行・エンタメ系メイン)

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