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人生最後の腕時計「ロレックス エアキング」を衝動買い

ASCII.jp / 2024年2月9日 11時30分

計画的衝動買いしたロレックスの腕時計「エアキング」(Ref:126900)

ロレックスワールドからは足を洗ったつもりだったが……

 実は先月、中野ブロードウェイに行ってロレックスの腕時計「エアキング」(Ref:126900)を計画的衝動買いした。ロレックスの正規代理店をあちこち何度も通って面談予約したり、並んで在庫の有無を確認したりを繰り返す通称「ロレックスマラソン」をやる暇はないので、並行店で割高な価格での購入だ。

 並行店では一般的に国内の正規代理店価格で販売することはなく、基本的にその販売価格は「プレミア価格」とも呼ばれ、正規代理店価格よりはるかに高い価格設定となる。これら並行店は日本ロレックスからの入荷は皆無なので、その多くは海外のディーラーや国内のロレックスマラソンでゲットした正規品を手に入れた人たちからの転売で成り立っている。

 ロレックスはこの流通の二重構造と本来の製品の良さ、そこに惹かれるユーザーのパッションの3つの関係性を腕時計専門メディアやネットニュースが頻繁に取り上げ煽ることで、ここ何十年続くロレックスバブル時代を形作っているのだ。

 実は筆者が最初のロレックスを衝動買いしたのは、もう20年も前の2004年。早期退職した以前の会社の退職金で自分へのご褒美として、いまはもうないJR新橋駅前のキムラヤ(並行店)の腕時計フロアで手に入れた「デイトナのコンビモデル」(116523)が最初だった。当時の購入価格は99万円。ロレックスバブルのいまだと、3倍〜4倍くらいの価格で取引されている。

 この時にあと10万円ほど高かったゼニスのエルプリメロというキャリバーを搭載しているステンレス製のデイトナ(16520)を買っていれば、いまならきっと5倍〜6倍くらいの価値になっているはずだ。当時はブラックダイヤルが人気だったが、いまはホワイトダイヤルが人気らしい。まあけっこうこのあたりもいい加減な世界なのだ。

2023年秋に売却したロレックス エクスプローラーII

 重くてあんまり好みじゃなかったデイトナコンビモデルは、きっと軽いだろうと勘違いしてその後、革ベルトのホワイトゴールドデイトナ(16519)に買い替え。結果はさらに重くて普段は全く使わなくなり、今度はサイズの小さなビンテージ系のエクスプローラー Ⅱ(1675)に買い替えた。その後もGMTマスターⅡ(16750)を買い増ししたり、サンダーバード(16250)を買ったりした。

 その後、GMTマスターⅡはライカレンズを買うための資金として友人に売却。最終的にこのコラムでもご紹介したように2023年秋にエクスプローラー Ⅱとサンダーバードの2本を売却してロレックスワールドからは足を洗った。筆者の場合、多くのロレックスマニアのようにコレクションを増やすことはなく、まして投資とは無縁。普段使いとして買い替えて、最新の腕時計を日常使いする腕時計マニアなのだ。

人生初のウェブ通販で衝動買いしたチューダーブラックベイ プロ

 足を洗ったつもりだったが、本来の腕時計好きは変わらず半年も経たないうちに、また足は中野ブロードウェイに向き、売却したエクスプローラー Ⅱに雰囲気が似たコスパが超いいチューダー ブラックベイ プロを衝動買いして再度腕時計好きに火がついた。いまはブラックベイ プロに保証外のwena3を取り付け、アナログ・スマートウォッチとして愛用している。

 ところが中野ブロードウェイで生まれて初めて見たエアキング(126900)が忘れられず、結局、中野ブロードウェイの数ある腕時計専門ショップの中では最も安い新品を展示していた店で即決衝動買いした。あり得ない衝動買いだが、昨年売却したエクスプローラー Ⅱの資金には手を付けていなかったので、今回は運よく実現できた。

 実はロレックスを正規代理店で買ったことはいままで一度もないし、新品を買ったことも20年前のデイトナ以来、2度目だった。昨今はロレックスマラソン転売ランナーのおかげで俗にいう新品同等の中古商品も極めて市場には多い。筆者が購入した店でも完全新品以外に3万円前後安い新品中古品が何本かあった。実際に現物をみたところ、やっとルーペで見えるくらいの小傷が付いているものだった。

 展示傷程度の商品が完全新品より10万安いなら躊躇することはないのだが、その差がたった3万円前後なら悩んでしまう。感覚的には買って1日か2日普通に使っているとその程度の傷なら簡単に付いてしまうのが現実だ。感覚的には人が付けた傷と自分が付けた傷の区別をするかどうかだけのことのように思える。

人生2度目の「新品のロレックス」を購入

 今回筆者は人生2度目の新品購入ということで、自分が付けた傷を大事にしたいと思い完全新品のエアキングの方を買った。もちろん毎日使って1月経過したいまは摺り傷がいっぱいだ。

 約20年ぶりに見るグリーンの木箱に入った人生最後のロレックスである新品のエアキングは、なかなか頼もしい風貌だ。今回のエアキングは短期間の間に前作の116900というモデルから最新の126900というモデルに変更され、その間に円安の関係か正規代理店価格も3回ほど値上げし、一番安いロレックス入門腕時計もついに100万円を超えた。

 もともと並行店では正規代理店価格で売られているロレックスは皆無なので、正規代理店価格の値上げは単なる数字の変更であってそれほど大きな意味は持たない。実際に筆者が中野ブロードウェイの腕時計店で購入した価格は132万9850円だった。これはエアキングの正規代理店価格である106万5900円に対し価格差26万3950円となる。この価格差が、並行店の販売利益とロレックスマラソンランナーの転売利益となる計算だ。

 もし両者の取り分がイーブンとして、約13万円の転売利益のために何十回も時には何百回もロレックス正規販売店を回遊する価値があるかどうかは個人差があるだろう。またうっかり正規販売店でエアキングを入手してしまうと、同じ機種は今後5年間は買うことはできない。

 またその他のモデルも1年間は購入制限が付くので、多くのロレックスマラソンランナーはより転売益や市場規模の大きなデイトナなどにシフトするのが普通だ。ある面、エアキングはロレックスマラソンで買える確率の高いモデルであるともいえる。

 購入したエアキングは、12時位置にロレックスのブランドカラーであるグリーンのROLEXロゴとゴールドの職人の手の形のアイコンを配置し、ベゼル径は前回モデルと同じ40mmと大きくなり、押し出しが立派な面構えに変更された。パッと見のデザインはエアキングの前回モデル(116900)と良く似ているが、じっくり見るといくつかの違いは簡単に発見できる。

 音速の壁を超えることを目的に開発中のジェット自動車「ブラッドハウンドSSC」のスピードメーターやタキメーターをモチーフとした前モデルのミニッツスケールの「5」が、よりデザイン的にバランスのとれた「05」と2桁に変更された。長短針に加え、前作ではブラックアウトだった3、6、9のアワーマーカーとグリーンの秒針は、夜光塗料を施したクロマライトとなりブルーの光は夜間の視認性が向上した。

 そして珍しいポリッシュ仕上げのリュウズガードが付き、2重の裏ブタがなくてもミルガウス同等の耐磁性能を保てるパワーリザーブ70時間のキャリバー3230に変更になった。性能をより向上しキープしながら軽量化、軽薄化、スポーティ化に成功している。ラグ幅も少し広くなりブレスレットはダブルロック。そしてイージーリンク機能によって、バックル部分で5mmの長さ調整が何時でも簡単にできるようになり、便利になった。

新しいエアキングの満足度は120%以上

 新しいエアキングを使いだして1ヵ月ほどが経ったが、現在の筆者の満足度は120%以上だ。何よりラーメンタイマーにさえ使わなかったクロノグラフ付きのデイトナに比べて軽い。そして2番目に滅多に人と被らない。加えて過去から現在の「ブラッドハウンドSSC」まで脈々と続く物語のあること。何より最高なのは、月末になると2ヵ月に一度は必須だったカレンダー修正が不要になったことだ。

 エアキング Ref126900は、腕時計のミニマルな機能を搭載したオン/オフいつでもどこでも使えるリーズナブル価格帯のスポーツモデルとなった。前述したようにロレックス市場は過去何十年も高額なモデルにメディアや販社、マニアがフォーカスし、資産価値や転売価格ばかりが注目されるマーケットだ。できれば今後もその傾向が長く続いても、エアキングに注目する人は増えないように願っている。

 
T教授

今回の衝動買い

・アイテム:ロレックス「エアキング」(Ref 126900) ・購入:中野ブロードウェイ かめ吉 ・価格:132万9850円(正規代理店価格106万5900円)

T教授

 日本IBMでThinkPadのブランド戦略や製品企画を担当。国立大芸術文化学部教授に転職するも1年で迷走。現在はパートタイマーで、熱中小学校 用務員。「他力創発」をエンジンとする「Thinking Power Project」の商品企画員であり、衝動買いの達人。

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