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Auracast初の実用製品が登場、大規模施設での応用も想定したAuri

ASCII.jp / 2024年2月11日 9時0分

 Auracastの本格的な実用製品が登場した。スペインのバルセロナで1月末に開催されたプロAVとシステムインテグレーションのイベント“ISE 2024”において「Auri」(オーリ)が発表された。

受信機と送信機

 Auracastは、Bluetooth音声をブロードキャストするための基本システムとして、ヘッドホン・スピーカーに取り入れられつつあるが、より本来的なAuracastの利用を見すえた製品は初めてになる。いわゆる聴覚補助(ALS:Assistive Listening Support)製品であり、ALS製品はAuracastがターゲットにする市場のひとつだ。ALSは、聴覚障碍者の補助だけでなく、スポーツの競技場やイベント会場など、騒音がある場所で、アナウンスを聞き取りやすくするためにも使われる。博物館での音声ツアーガイドなどでも使われている。

 Auriは、イギリスのAmpetronicと米国のListen Technologiesによって開発されたALSシステムだ。Ampetronicはヒアリングループ(磁気誘導ループ)の世界的なメーカーでもある。磁気誘導ループというのは電波の代わりに電磁誘導を使うことでノイズの影響を受けにくくして音声をクリアに聞こえるようにしたシステムのことだ。完全ワイヤレスイヤホンの初期に左右の通信切れをなくすために採用されていたNFMIに似ているが、到達範囲は会場全体を包むほど広いものだ。

 他方のListen Technologiesは劇場や国際会議場などでのツアーガイドや多言語通訳のためのワイヤレス装置を提供している会社だ。この2社はパートナーシップ契約を結んでいて、Auriは初の共同開発製品となる。もちろん両社とも標準化団体のBluetooth SIGのメンバーである。

業務用らしく、拡張性が高い設計

 Auracastはまだ普及の緒に就いたばかりであり、市場に出ている対応製品はほとんどないため、AuriはAuracastに対応した送信機と受信機のペアとして提供されている。受信機はネックループなどで体に装着して、ヘッドホンを接続して音声を聴ける。

 受信機には複数対応の充電ベースが付属している。ディスプレーもあり、これでAuracastのチャンネルの説明表示ができる。例えば、劇場で使用する場合は受信機のディスプレーにTheaterと表示される。受信機にはチャンネルの切り替えボタンのほかに、言語切り替えボタンも装備されている。

受信機の解説図(公式サイトから)

 送信機はPoE給電対応のEthernet(RJ45)やDanteなどネットワーク入力端子が装備されている。背面図を見ると、これらのネットワーク端子のほかに見慣れない緑色の入出力端子がある。これは、Euroblockという欧州のプロ市場で、バランス接続のアナログ入出力をするために使用される端子だ。Euroblockは、マイク入力とLINE入力、そしてLINE出力のために3系統を装備している。

送信機の説明図(公式サイトから)

 送信機なのに、なぜ出力端子があるのかというと、前述したヒアリングループシステムなどに入力を分配するためだ。これによって、会場をAuracast(Bluetooth)とヒアリングループの2系統でカバーすることができる。電波と電磁誘導というまったく異なる原理で伝送することで、お互いの不得意な領域を補えるようにしているのだろう。

 このように会場施設にはAuri送信機を1台設置、複数のゲストがそれぞれAuri受信機を持ち、ヘッドホンなどを使ってアナウンスを聴くことになる。もし施設に複数の場所があれば、Auracastのチャンネルを切り替えることで場所の選択が可能だ。

 Auracastでは、いまのところどうしても、Auriのように送信機と受信機をペアにしたシステムが現実的となる。しかし、将来的に完全ワイヤレスイヤホンがAuracastに対応すれば、受信機は不要となる。博物館などの施設では便利に使えるようになるだろう(ただし、その場合にはAuracastのチャンネルを切り替えるUIが必要になる)。

 また、Auriはブロードキャスト専用だが、さらに完全ワイヤレスイヤホンでは、スマホと接続するためのユニキャストモードと切り替える必要も出てくる。博物館の中でも、スマホからBGM的に音楽を聴く場合もあれば、ALSシステムで学芸員の案内を聴く場合もあるだろう。  そのためのUIはスマホのアプリを使ったり、イヤホンを直接操作したりする方法が考えられる。この点も、Auracastが普及する上での課題となるだろう。

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