冬のヘッドフォン祭 mini 2024で気になった新製品 by佐々木喜洋
ASCII.jp / 2024年2月12日 7時0分
フジヤエービック主催の「冬のヘッドフォン祭 mini 2024」が2月10日に開催された。場所は東京駅近くのステーションコンファレンス東京で、6階フロアを貸切っていた。事前登録が不要となったこともあり、会場内の通行が難しいほどの盛況ぶりだった。会場での物販は見送られた。60社が出展。その中から筆者注目の製品をピックアップした。
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STAXのエントリー向け静電型ヘッドホンシステム
“静電型イヤースピーカー”で有名なSTAXは、新しいエントリー機「SR-X1(仮称)」を参考出品。価格は未定だが、新開発の静電型ドライバー(ヘッドフォンアンプ)「SRM-270S」とセットにした「SRS-X1000(仮)」で10万円強。ヘッドホンのみで5~6万円と比較的手の届きやすい価格になりそうだ。
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伝統の小型円形イヤースピーカーを現代の設計思想で再構築したという。
新設計の中型円形ユニットで、単に小型化しただけではなくパーツの継ぎ目を最小限にして正確な音を追求したということだ。手にしてみると軽量で使いやすく感じられた。音質は中高域にスタックスらしい華やかさがありながら、全体的には落ち着いた感じのサウンドだった。
フォステクス創立50周年記念モデル
フォステクスは2月10日発売のハイエンドヘッドホン「TH808」を出展。同社のオープン型ダイナミックヘッドホンの最高峰「TH909」をベースに開発したモデルだ。TH909は直販価格31万9000円と高価だが、TH808は同18万7000円となる。振動板はTH909と同じだが、ダンパー設計やケーブルなどに違いがある。ハウジングは高級木材の黒胡桃無垢材を採用。音質は極めて高く、クラシックでは空間が広大なのに驚くほど。ジャズでは鋭いドラムのアタックが堪能できた。
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超ハイエンドイヤホンと新イヤーピース
アユートは、ハイエンドイヤホンの新作2点を出展。
Empire Earsの新フラグシップIEM「RAVEN」は59万9500円という高価なモデル。フェイスプレートが金のモデルと黒のモデルがある。金のモデルは限定版の初期モデルで、黒が通常モデルだ・黒の通常盤は今回が初披露。音質に関わる部分に差はない。音はとてもクリアでヴォーカルや楽器音が美しい。リスニング寄りのハイエンドサウンドだと感じた。
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qdcの「EMPEROR」は15ドライバーを搭載。最終サンプルが出展されていた。価格は未定だが、50万円弱になりそうだ。とても解像感が高く、左右方向の広がりがあり深みが感じられるようなサウンドだ。
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また、サプライズ出展として、SednaEarfitの新作イヤーピース「XELASTEC II」を披露していた。「XELASTEC」の改良モデルで、従来あった脆弱性を異なる素材を用いたハイブリッド構造でケアしたもの。価格は発売済みの「SednaEarfit Formax」と同程度とのこと(2970~3960円)。
finalはD7000を展示、くじはすぐ完売
finalは発売が2月29日に決まったハイエンドヘッドホン「D7000」を出展。直販価格は39万8000円。D8000/D8000 Proは性格の異なるフラッグシップ機として併売する。
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D7000は従来のヘッドホンにはない独創的なディフューザー「ピナ・アライン・ディフューザー」を特徴としている。ドライバーと耳の間に設ける複雑な形状の部品だ。普通に考えると、振動板と耳の間にはなにもない方が音が良さそうだが、ポイントは振動板の音が直接鼓膜に当たるわけではなく、まず外耳に当たるということだ。このため、外耳の形に沿った形状のディフューザーを挟むと外耳に当たる音の気流が、理想的に整いピークやディップを抑えた滑らかな音になるという。“ピナ・アライン”は耳介に沿うという意味だ。
D8000とD7000を比較試聴した。全体的には似たようなサウンドではあるが、ヴォーカルや楽器音の再現性に特徴がある。D7000は独特の滑らかな良さを感じさせる。個性的な音再現だ。
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また、「finalバレンタインガチャ」として1回5000円でハズレなしの景品が当たるイベントも開催。行列を生むほど盛況であった。
超強力なマグネットを搭載するイヤホン
MUSINは、2月20日と発売間近の新イヤホンiBasso Audio「3T-154」を展示。これは3T(テスラ)という超強力マグネットと15.4mmの超大口径振動板を特徴としたイヤホン。上流(ソース音源)の差異を出しやすく、ハイエンド音源に向くということだ。スペックの割に実売2万4750円と手頃だ。2月13日に予約を開始する。
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かなりずっしりと重いイヤホンだが音も個性的で、空気がたくさん押し出されるような低音の迫力があり、中高域の鋭さも兼ね備えている。
かゆいところに手が届くアクセサリー
ピクセルは、韓国LEPIC(ルピーク)のユニークなポータブルオーディオ向けアクセサリーを出展。新規取り扱いのブランドで、同じくアクセサリーブランドであるDignisから派生したものということだ。
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集まった人たちが「こういうのが欲しかった」と口々に言っていたのが、スティック型のUSB DACをスマホに固定できる「DAC POCKET」だ。iPhoneのMagSafe対応で、スマホの背面に磁石で固定できる(Androidスマホでもリング状の磁石をケースに付けるアクセサリーを使用すれば使える)。スティック型のUSB DACを装着するポケットには、段差があり滑り止めになるという細かい配慮もある。サイズ的には「AK HC4」までは対応可能ということだ。価格は3000円ほど。
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また、有線イヤホンを収納するケース「JUKEBOX IEM CASE」も展示されていた。湿度を管理する機能があるという。カメラやレンズの保存にはこうした調湿ケースを使うのが一般的だが、イヤホン用では珍しい。
こちらは5000円ほど。両製品とも3月上旬の発売を目指している。
DIY感覚でカスタマイズできる
DIY向けのオーディオ製品群が目を引いたのがサイラスブース。Oriolusの「JOYCRAFT DIYシリーズ」 というシリーズ製品で、基板は組み上がっていてハンダ不要だが、真空管の差し込みやネジ止めはユーザーに任せ、カスタマイズできる。
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昨年末から発売されており、価格は製品にもよるがおおむね1万8000円前後だ。今後の製品として“R2R DAC”まで予定されているのが面白い。
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Oriolusは、開発中の真空管ポータブルアンプも展示していた。特徴は5000mAhの充電池(21700)が取り外し可能なことだ。この電池は以前紹介したKontinum「K100」に採用されていた。発売時期や日本での展開などは不明だが、面白い試みと言える。
エソテリックも出展
ハイエンドオーディオメーカーのエソテリック(ESOTERIC)が初めて出展したのも面白い。会場ではネットワークプレーヤーで、プリアンプ機能も持つ「N-05XD」などが展示されていた。出展理由を聞いてみると、「ユーザーにハイエンド製品の良質な上流機器でオーディオを体験してほしい」ということだった。
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また、これは昨年末にティアックが連結子会社だったエソテリックを吸収合併すると発表したことも影響しているのだろう。
FiiOのカセットプレーヤー「CP13」も登場
個人的にイベントで一番興味を引いたのは、FiiOのカセットテーププレーヤー「CP13」だった。国内でも約2万円前後で販売予定とのことだ。
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最新イヤホンで聞いてみたところ、意外なほど音質が高いのに驚いた。ヒスノイズの影響も少なく、クリアで良質な音楽再生を楽しめた。ヴォーカルの音が澄んでいて気持ちがいい。カセットテープの音が良くないと感じた理由のひとつには、イヤホンが未発達だったということもあるのかもしれない。
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試聴中、ボタンを押しても再生ができないので故障かと思ったが、実はA面が終わっているのに気が付いていないだけだった。カセットテープを取り出して裏返すことで、スムーズに再生できた。かつては普通にカセットテープ・プレーヤーを使用していたのだが、特有の動きを忘れていたことになる。自分自身でも驚いたが、それだけ長い時が過ぎたということなのだろう。
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