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停滞感があった中華スマホだが、生成AIが盛り返しのきっかけになるかも

ASCII.jp / 2024年2月17日 12時0分

停滞感があった中国スマホ市場だが、生成AIが盛り返しのきっかけになるかも
OPPO Find X7の発表会ではAI体験がプッシュされていた

ファーウェイ、OPPO、Honor、シャオミ 中国スマホメーカー各社がAIスマホを続々とリリースしている

 昨年、ChatGPTをはじめとした大規模言語モデル(LLM)による生成AIがブレイクして、中国でも話題になり後追いするようになった。

 その結果、それらの要素が盛り込まれた製品がリリースされ、中華スマホにもその波が来た。昨年8月にはファーウェイのフラッグシップ「Mate 60」シリーズは、同社のLLM「盤古大模型」を活用したAIスマホとしてリリースされた。ホーム画面で「小藝(シャオイー)」とウェイクワードで声がけをして「誰々にいくら送金する」と言うと、自動的にウィーチャット(微信)が開き、誰々に送金しますかという画面までたどり着く。そして「送金して大丈夫」という旨を話すとお金を送ってくれる。

 また、ファーウェイの入力アプリにも生成AIが導入され、「こういう文章を書いて」と入力すれば、要求に合わせた文章を自動で作ってくれる。またMate 60シリーズはもともとカメラがすごく好評だったが、グループ写真で各人のぼやけていた顔がタップ1つでクッキリと表現できるようになった。

停滞感があった中国スマホ市場だが、生成AIが盛り返しのきっかけになるかも
HUAWEI Mate 60でのLLMを利用した文章生成機能

 ファーウェイだけではない。2024年初頭には、LLMとしては比較的小規模な70億パラメータのクライアント向けLLMを搭載したOPPOの「Find X7」シリーズとHonor「Magic 6」シリーズが相次いで発売された。

 OPPOのハイエンドスマホ「Find X7」では「小布(シャオブー)」と声かけをし、「メモリのクリーンアップをして」「懐中電灯をつけて」というと、それを実行してくれる。また通話の後で「内容をまとめて」というと通話記録を短いテキストでまとめてくれる。記念写真から背景の通行人をタッチすることで消せる。

 vivoのハイエンドスマホ「X100」のアプリ「小V助手」では、「これこれこんな感じの写真を撮った写真から探して」というと該当する写真をリストアップして提案し、その写真をテレビに映してといえば自動でミラーリング設定。ウェブ記事を見ているときに「まとめて」といえばまとめてくれる。

停滞感があった中国スマホ市場だが、生成AIが盛り返しのきっかけになるかも
vivoも大規模モデル「BlueLM(藍心大模型)」をプッシュ

 シャオミも自社開発の「MiLM」を発表した。つまりファーウェイ、シャオミ、OPPO、vivo、HonorがAIスマホをリリースしたことで、中国の主要メーカーが勢揃いしたわけだ。各社が文章作成や画像修正をアピールする一方、すでにGoogleアシスタントでできている機能もあるように思うが、そもそもグーグルのサービス自体が中国では利用できないので、新たに似たような機能を自前で作ったということになるのだろうか。

 こうした動きに中国メディアは、スマホ産業が再び元気になる! と分析記事を書いている。中国企業のスマートフォン発表会の現場では「生成AI対応機種を発表しないと、内容がなく恥ずかしい」とまで言われるようになっている。中華スマホのメーカーがLLMを使ったAIアシスタントの導入を進める一方、(中国でも人気の)iPhoneにはLLMを導入しないのかと中国メディアの心配の声もある。

横並びの意識があるのも確かだが ハイエンド機購入のきっかけとしての期待感も大きい

 各社がこぞって出しているのは「ライバル社が出しているから」という、過去に見た日本企業同士の競争のような背景も一因ではあるが、それ以上にスマホ、それもハイエンドスマホが売れるからという部分が大きい。

 というのも、中国では新機種に大きな変化が感じられないなどの理由で買い替えペースが鈍化し、しかも中国の消費者がコスパを重視し始めたのでミッドレンジモデルや一世代前のハイエンドモデルを安く購入する風潮が広がっている。ハイエンドモデルは安価なモデルと比べて利ざやは大きく、メーカーが稼ぐにはハイエンドモデルが人気になることが必要だ。しかし折りたみスマホも含めて、それほど売れていないという問題に直面し、次の打ち出の小槌としてAIスマホが期待されているわけだ。

停滞感があった中国スマホ市場だが、生成AIが盛り返しのきっかけになるかも
スマホのLLMでプログラムコーディングができる例も

 多くの機能においてスマホ本体による生成AIを使ってタスクを処理する(一部クラウドを使うものもある)。つまりユーザーはインターネットに接続することなくビジネス文書や個人の写真を処理できるので情報漏洩の心配が減るという。

 端末側で処理しなければならないので、当面はハイエンドモデルでのリリースとなる。なぜハイエンドだけ出すのかというと、小規模なLLMを処理するにも今のスマホの処理能力では非力だからだ。MediaTekによれば、130億パラメータのLLMには少なくとも13GBのメモリーと安定動作のための領域を6GB、さらにAndroid用の4GBメモリーが必要だという。つまり16GBのメモリを搭載したスマホでさえも、130億パラメータのLLMを実行することは難しい。現在はパラメータ数の少ないLLMをハイエンドモデルに、やっと入れられるという段階にある。

 メモリーサイズの問題だけにとどまらない。メモリー食いのLLMは実行するたびに電力を消費し、バッテリーを使っていく。したがって各社は最新のパーツを導入しながら、低電力消費技術を開発し、LLMの構造やアルゴリズムや推論プロセスをブラッシュアップしていかなくてはならない。スマートフォンメーカー各社だけでなくチップをはじめとした部品メーカーもハイエンドモデルのニーズにあやかれるので、LLM導入のトレンドにはいい反応をしているのが中国メディア各紙から読み取れる。

生成AI関連のスタートアップはすでに多数ある中国 各社はそこから技術を導入して、いち早く生成AIを取り込む

 スマートフォンメーカー各社がAIまわりを全て開発しなければいけないかというと、そこは中国。AIやチップのスタートアップは数多く誕生していて、ChatGPTが話題になって以降、生成AI関連の技術に絞ったスタートアップも爆速で誕生。一部企業は期待感から資本調達を経てユニコーン入りした。技術力が評価されている生成AI関連の有力企業に外注し、技術を導入することでかなり問題は解決できる。

 IDC中国は「3年はまだAIスマホを誰もが所有するにはハードルが高く、日常使用で劇的な変化は起こらないだろう」と分析している。ChatGPTのような文章代筆のほか、画像生成や写真の修正や選択、それに音声アシスタントが可能になることでマニア以外でもさまざまな機能を利用することが簡単になれば、中国人から見れば新たな製品の魅力となるだろう。

 そしてその魅力が日々中国で発信されクチコミで伝わっていくことで、買い替えに前向きになる消費者もでてくる。今後数年は折りたたみスマホ開発と並行してAIスマホの開発競争は続きそうで、文章関連はもちろん画像関連のAIに磨きをかけ機能を増やしていく。停滞感のあったと評された中華スマホが面白くなりそうだ。

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