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KDDI対ソフトバンク “快適な5G”競争に本気出す

ASCII.jp / 2024年2月21日 12時0分

Shiwa ID | Unsplash

 2020年3月にスタートした5G。早くも4年になろうとしているが「5Gらしさ」を体感するということはあまりなかったりする。

 最近ではスマホの画面に「5G」と表示される場所が増えてきたが、4Gと比べて劇的に速いかといえば、決してそんなことはなかったりする。むしろ、これまで4Gが快適だったため、5Gになっても違いがわかりにくいというのが正直なところだ。

 ただ、これも実はキャリアが「これまで5Gに対して本気じゃなかった」という裏事情があったりする。KDDIではこれまで4年間を「導入期」と語り、今年4月以降を「普及期」と言っているぐらいだから、キャリアとしてもこれからが「5Gの本番」とでも言いたいのだろう。

 ではなぜ、キャリアはこれまで5Gに対して「本気」じゃなかったのか。

これまでは「Sub6」の出力制限があった

 実は特に関東においては、5Gのために割り当てられた「Sub6」と呼ばれる周波数帯が、衛星会社が使っている衛星と地上局との通信とぶつかりあう、いわゆる「干渉」が問題視されていた。

 Sub6を本気で使うと衛星通信に影響を与え、通信を邪魔してしまう恐れがある。そのため、各キャリアではSub6の基地局は建設するものの、アンテナから電波が飛ばないように角度を低くしたり、出力そのものを抑えるといった制限を加えていたのだ。

 わざわざ5Gのために割り当てられた周波数をすぐには活用できないと判断したKDDIとソフトバンクは4G用に割り当てられていた周波数帯を5Gに転用していくことで、まずは5Gと表示されるエリアの拡大をこの4年間、実施してきた。

 そもそも、4G向けに割り当てられている周波数帯のため、5G向けに転用したところで、通信速度が高速化されるものではない。つまり結果として「5Gと表示されるエリアは広がるが、通信速度は4Gとまったく変わらない」という「なんちゃって5G」エリアが拡大することになった。

KDDIはSub6の5Gエリアが2倍に

 そんななか、この春から、衛星の地上局とSub6の干渉問題が解決する。業界関係者は「長年の交渉が実り、衛星事業者に地上局を移設してもらうことにした」という。

 当然、移設した先ではまた干渉問題が発生することが予想されるが、都心部のように5G通信の需要が多いところではない場所に移設することで影響を最小限に抑えるようだ。

 衛星の地上局との干渉がなくなることで、Sub6はようやく威力を発揮する。KDDIでは、干渉問題がなくなることで、Sub6の5Gエリアが2倍に拡大するという。

 ソフトバンクの宮川潤一社長も「スカパーに相当協力いただきまして、衛星干渉がなくなってくる。我々も出力を上げられるので、首都圏はさらにつながりやすくなる」と語る。

ソフトバンク 宮川潤一社長

Sub6による5Gエリア“容量”に違いも

 ソフトバンクとKDDI、Sub6による5Gエリアが拡大し、つながりやすくなるということだが、一方で「容量」ではこの2社で違いが出てきそうだ。

 実は、5Gの新周波数帯域として、KDDIには200MHz(2ブロック)割り当てられているのに対して、ソフトバンクには100MHz(1ブロック)の割り当てとなっている。

 基地局の開設計画数もKDDIが3万4267局なのに対して、ソフトバンクは7355局となっている。

 KDDIのユーザーの方が、広い帯域を分け合い、さらに基地局も分散されるということで、高速でかつ安定した通信速度を得られる可能性があるということになりそうだ。

 もちろん、各キャリアとも独自にチューニングをしていて、また様々な知見、さらにはユーザーからビックデータを集めているので、KDDIが帯域幅が広く、基地局数が多いからといって、単純に高速化でソフトバンクを打ち負かすということにはならないかもしれない。

 ソフトバンクも他の周波数帯を有効活用することで、Sub6に注力するKDDIに勝つ可能性は十分にある。

KDDI “快適な5G”で巻き返しはかる

 オープンシグナルという調査会社のデータでは、ここ最近、ソフトバンクの評価が極めて高い。かつての「国内で圏外だけど、海外でよくつながるソフトバンク」と揶揄されていたころとは雲泥の違いとなっている。

 そんななか、KDDIはSub6の5Gでソフトバンクを巻き返そうと躍起の構えだ。

 両社とも、独自のユーザー調査でデータ通信の「体感」や「パケ止まり」を発見し、改善していくなど、ネットワーク品質の向上には定評のあるキャリアだ。

 これまでの「なんちゃって5G」から「5Gの普及期」に移行していくなか、KDDIとソフトバンクによる「快適な5Gネットワーク競争」の行方が面白くなってきそうだ。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

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