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KDDI「povo」世界進出へ “黒子に徹する”新ビジネスとは

ASCII.jp / 2024年3月6日 7時0分

 KDDIのオンライン専用ブランド「povo」がオープン戦略を発表した。

 これまでpovo2.0はZ世代向けに自分の必要なデータ容量を「トッピング」というかたちで購入し、利用できる通信サービスとして定着してきた。

 これとは別に、コンテンツやサービスを利用する際に、データ容量をセットで提供するという新しいビジネスモデルの構築を目指していく。

これからのpovoは黒子に徹する

 例えば映像配信サービスを利用する際、コンテンツを1本分購入すると、それに必要なデータ通信量も提供されるというものだ。ユーザーは自分が契約しているキャリアやMVNOのデータ容量を消費することなく、映像コンテンツを楽しめるというわけだ。

 テーマパークで効率よくアトラクションに乗るには、アプリで待ち時間を見て園内を走り回るのが得策であり、もはやテーマパーク内でのスマホ活用は必須なのは間違いない。

 povoのオープン戦略では、テーマパークがチケットを販売する際、開園から閉園まで使えるデータ容量をワンデーパスとセットで売るということもできる。

 また、例えばハワイ旅行に行く際、航空会社のサイトでチケットを購入したら、現地で必要なアメリカの電話番号、さらにはデータ容量もセットでもらえるといったサービス提供も可能になる。

 この際、ユーザーが「povo」であることを認識することはほとんどない。povoは黒子に徹しているのだ。

 povoを提供するKDDI Digital Lifeの秋山敏郎社長は、「いまもパートナーに我々のアプリに来てもらいトッピングを提供しているが、それだけでなく、これからはキャリアが持っている機能をオープンにして、パートナーに自由に使ってもらいたい。その際はpovoの名前は入れず、ホワイトレーベル的に展開したい。キャリアフリーのコネクティビティというポジションが取れると期待している」という。

KDDI Digital Life 秋山敏郎社長

「コミケでpovo」から次の世界へ

 最近のpovoでいえば、夏や年末に開催されるコミケで、一部のキャリアの通信がつながりにくいときスポット的にpovoを契約して急場を凌いだ人が多かった。

 ただ、一般のユーザーが、コミケの1日だけのために新たにキャリアが提供する通信サービスを契約するというのはハードルがかなり高い。しかし、オープン戦略によって、イベントのチケットをオンラインで販売する際、通信サービスをセットするということも不可能ではなくなるのだ。

 秋山社長は「コミケのときもオンラインで頑張ろうとしたが、povoを強く訴求しすぎるとユーザーは離れてしまう。何かの時のための通信というかたちであれば、もっと推しやすくなる。本人確認の問題があるが、そのカスタマージャーニーを改善すればpovoが目指している世界に近づける」と語る。

 確かに、様々なコンテンツやサービスをオンラインで楽しもうとした際、通信サービスがセットされているのは便利だが、利用する際、本人確認のために、首を左右に振り、運転免許証やマイナンバーカードを撮影するのは結構、面倒だろう。

 秋山社長は「解決策はいくつかある。レギュレーションもしっかり守りつつ、テクノロジーで乗り越えていきたい。いまのままではユーザー体験が悪くなってしまうので改善していきたい」

 音声通話サービスを提供するとなると本人確認は厳格となるが、データ通信だけであれば若干ハードルは低くなるので、対応しやすいようだ。

目指すのは「通信が日常に溶け込む世界」

 povoはもともとZ世代に向けた新しい通信サービスとしてスタートした。

 しかし、「Z世代向けと言いながら、実際のユーザーはそこまでZ世代には集中していない。すべての世代に、Z世代の気持ちがあると言えなくもないが、僕らのアプローチやマーケティングが芯を捉えてないかもしれない。

 いままでは通信キャリアのアプリを使ってくださいということをやってきたが、それは違う気がしている。

 髙橋社長が言うように『通信が日常に溶け込む世界』を目指していく」(秋山社長)。

 KDDIではこの取り組みを2月末にスペイン・バルセロナで開催された「MWC2024」で発表した。日本だけではなく、世界に展開したい考えだ。

 秋山社長は「MWCでは20程度のキャリアと話をする機会を得た。みなさん『面白いことを考えているな』と言ってくれる。

 Z世代へのアプローチは各国、各キャリアの関心事であり、オープンな通信キャリアは誰もが一度は考える。関心はとても高いと実感している」と自信を見せる。

日本で磨いたビジネスモデルで世界へ

 通信会社の世界進出といえば、これまでは「現地キャリアの買収」がいくつかあったが、どれも失敗に終わっている。

 しかし、KDDIの場合はモンゴルやミャンマーなど現地企業と組んでキャリアを立ち上げ、成功させてきた。

 povoの新たな取り組みは、もともとpovoのベースとしてあったシンガポールのCircles.Life社の仕組みを生かしつつ、日本流のアレンジを施して海外のキャリアと組んで展開しようという試みだ。

 KDDIではモビリティの分野でもアメリカに進出するのだが、それも現地キャリアのベライゾンとタッグを組む。

 KDDIは「買収」ではなく、現地キャリアとパートナーになりつつ、日本で磨き上げた「ビジネスモデル」を輸出する海外進出をこれからも強化していくようだ。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

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