日本発の「povo」がグローバルに! オープン化を目指すKDDIの狙いを聞いた
ASCII.jp / 2024年3月6日 12時0分
KDDIはMWC Barcelona 2024に初出展し、povo2.0をはじめとする同社の技術をアピールした。その中で、シンガポールのサークルズライフ社と提携してpovo2.0を運営する、KDDI Digital Lifeの代表取締役社長 秋山敏郎氏が同サービスのオープン化についての戦略を語った。
世界中のZ世代にこだわってサービス展開 povo 2.0のグローバル展開とは?
秋山敏郎氏(以下敬称略) povo2.0の「Z世代に向けて」こだわってやっていくというのは今後も変わりませんが、Z世代は海外でも「Gen Z」(ジェンジー)と呼ばれていて日本国内だけのことではありません。SNSで世界が繋がっている今、Z世代向けのプロダクトとしては世界を意識せざるを得なくて、国内外からパートナーを募って始めようと。
何をやろうとしているか、簡単に言うと「オープン化」です。今までいろんなパートナーさんに来てもらっていましたが、Telco(通信事業者)が持っている機能をオープンにしてパートナーさんに自由に使ってもらえれば、というのが今回の趣旨になります。たとえばどこかの遊園地で1DAYパスみたいなもので並ぶとします。その並んでいる間に遊園地側が顧客体験を上げようとするなら、やっぱり通信がついていたほうがいい。遊園地が1DAYパスを売るサイトやアプリにコネクティビリティーをエンベッドしてもらえるようになるのです。これはIoTの通信ではすでに始まっていますけどね。
もうちょっと言うと、クリエイターが何かを発表したときに、自分のモノをどうやってファンのコミュニティーに出して一緒に作っていくか。これがZ世代というか今後の社会のあり方だとすると、通信会社の中だけで考えていては次のステージにいけないので、オープン化して「材料は提供するので好きに自分のアクティビティに使ってください」という場を提供すると、オープンなイノベーションが起こると思います。アメリカのアーティストでも世界中にファンがいますが、ファンのコミュニティーに対して何か提供しようとすると、アメリカのコネクティビリティーが必要で当然キャリア同士の連携も必要なので、こういうことを面白いと思ってくれる事業社はぜひ一緒にやりませんか? という営業活動も始めました。
実は日本の配信アプリ「SHOWROOM」では試験的にSDKベースでトッピング購入ができるようになりました。povoのアプリを開かなくてもSHOWROOM内で完結するのです。今回はトッピングが買えるということですが、今後はpovoの名前は出さず、ホワイトレーベルのようにしていきたいですね。これはauだこれは○○だ、という使い方もナンセンスなので、施設に設置されているWi-Fiのような使い方になると思います。
キャリアフリーのコネクティビリティーというポジショニングになると面白そうですね。
「Circles X」がベースのシステム
秋山 Circles.Lifeの「Circles X」というSaaSベースのプラットフォームがあるんですけど、その上にテレコイネイブラー(Telco Enabler)というSDKがあり、ノンテレコイネイブラーもSDK化する予定で、その開発はCircles.Lifeが行ないます。ベースとなる商品をKDDIのビジョンに従ってカスタマイズしたものを乗せていくというモデルです。クラウドベースなので、グローバルのキャリアと一緒にビジネスをやっていこうということですね。
短期間契約でも「eKYC」を毎回やるのか?
秋山 そこはいくつかソリューションがあると思っていて、もちろんレビュレーションはキッチリ守っていくんですけど、テクノロジー含めて乗り越え方があるんじゃないかと。今のままだとおっしゃるとおり、UX(ユーザー体験)が悪くなってしまうので、改善していこうと思っています。具体的な時期は言えませんが、取り組みは始めています。
コミケで導入できたら面白い
秋山 コミケでもオンラインで頑張ろうとしてたんですけど、あまりpovo、povoと言っていてもユーザーは振り向きません。でもコミケのウェブサイトとかに、何かあったときのための通信、みたいなボタンがあったら押しやすいじゃないですか。eKYCの問題とかありますけど、元々povoが目指していた世界に近づくのではないでしょうか。
コマーシャルというか、商業的な仕組みはまだまだこれからでも、お客様に必ずバリューがあって、その対価が全体として入ってくれば、あとはそのシェアの仕方なので、落としどころはあるだろうとは思ってはいますが、それはまだまだこれからですね。
MWCでの反響はどうだったのか?
秋山 まだまとめてないので具体的な数字は出せませんが、たぶん20くらいのキャリアのCEOとお話する機会はありました。みなさんから「面白いこと考えるね」と言ってもらえています。導入するレベルとか関心はそれぞれ違うと思うんですけど、やっぱりZ世代をどういう風にハンドルするのかというのは、各国共通の関心事項なんだなと。
また、オープンTelcoというのもみんな一度は考えることで、自分のアプリに集客してナンボというのが当たり前ですから、「本当にやるんだ」と関心は高いですし、ぜひとも情報をシェアしてくれという反応が多いですね。
なぜ我々がコミュニティーだとかコネクティビリティーだとか舌を噛みそうなことを言っているかというと、一番の主役はユーザー体験を持ち上げて価値をあげるパートナーやコミュニティー側だと思うんです。MNOはMNOで重要ですし、そこから広げていくのもありなんですけど、一足飛びにグローバルのボーダーレスなZ世代のコミュニティーみたいなところに、新しい通信について考えてみないかと提案したほうが近道かもしれませんね。そんな布教活動を両面からやっていきたいと考えています。
世界共通のZ世代の特徴
秋山 日本とグローバルでZ世代が共通していることは、ブランドを見るときにちゃんと正直に発信しているかとか、自分の信頼している人が何て言っているかが基本大事です。あとはコミュニティーは使い分けるのが当たり前で、1人でSNSのアカウントをいくつも管理している。コミュニティーにおいても役割が違うから、それを使い分けることでアイデンティティーを確立する。アカウントの使い分けみたいなのは僕らの世代ではあまりないですからね。
povoの今後の展開は?
秋山 今回のこのコンセプトが煮詰まってくれば、それがpovo3.0になっていくと思います。人ってコミュニティーによっていろんな顔を持っていますよね? それぞれに通信がエンベッドされている体験を味わっていて、シーンごとに断片化されたものを統合したくなります。最終的にはpovoのアプリをダウンロードしていただいて、そこでコミュニティーのアクティビティを全部見られるとか、統合できるとか。ユーザーIDとかパスワードとかを同じアカウントでいろんなシーンで使い分けることになるので、それを統合できるのが3.0のカタチになるんじゃないかと。
今後は時間での区切りというか、たとえばカラオケの1時間唄い放題みたいな設定も可能だと思います。
これらのモデルがうまくいくかどうかは、いろんな企業が感心を持ってくれているのですが、「半年後にケーススタディ教えてくれ」みたいな方もいます。グローバルに出ていけるプロダクトを日本でちゃんと展開できることが大事です。日本の中だけでいると、Z世代の本質も見失ってしまうと思います。Z世代が大きくなるというときに日本に閉じてしまうのはナンセンスですし、ビジネス的にも世界を視野にいれないといけません。そうすればボリュームも出ますし、もっと大きい仕掛けもできます。
たとえば、ディスコードとかで若い世代が集まっているじゃないですか。そういうところと一緒にできると、我々が思いもよらないような使い方が出てきたりするんだろうなと。一刻も早く取り組みを進めたいですね。
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