新しい未来を創る可能性は大有り! 最先端デバイスとロボット技術を前橋で体感した
ASCII.jp / 2024年3月11日 9時0分
3月2日に開催された「UPDATE EARTH 2024 ミライMATSURI@前橋」。会場には、スタートアップを中心とした77の企業がブースを出展。医療系テクノロジーをレポートした記事に続いて、今回はよりユニークなデバイスやロボット関連の技術を紹介したい。
■形も大きさも変幻自在 まるで折り紙のようなデバイス
「カサネタリウム」(https://kasanetarium.web.fc2.com/)は、まだ存在していない空想のプロダクトやガジェット、アート作品を製作する、堀洋祐氏主宰のプロジェクト。多くの人が「折り紙式メディアデバイスORIME」を立ち止まって見ていた。
これは、情報と物理世界をシームレスにつなぐデバイスの実現を目指して開発されたもので、フレキシブル基板にエレキチップを等間隔に並べて上下左右につなげた、まさに折り紙のような薄いシート状のデバイスだ。切ったり折り曲げたりして自由に変形できるのが最大の特徴で、それを取り付けることによって身の回りにあるあらゆるモノをメディア化できる。
ブースではこのデバイスを取り付けたクマのぬいぐるみが展示されていたが、かわいらしく動くその姿に子供たちも興味津々の様子だった。
もう一つ、目を引いたのが「みちびきライト」。夜道を照らしながら目的地の方向を教えてくれる懐中電灯型デバイスだ。緯度・軽度情報を組み込んだQRコードで目的地を読み込むことによって、前方を照らす光の中に目的地の方向と距離が映し出される。
仕組みとしては、まず内蔵のGPSで現在の位置情報を取得。次に6軸センサー(3軸の加速度センサーと3軸の地磁気センサー)が本体の姿勢を計測し、本体から見た目的地の方向と距離をリアルタイムで測定する。照らす光は小型レーザープロジェクターの映像として地面に投影されるという。
光を照らす方向を変えると、目的地の方向を示す三角形がきちんと転換されて映し出されるのも面白い。まるで漫画に出てくるような楽しい道具に、大人も釘付けになっていた。
■どんな形でもフィットして手軽に使える触覚センサー
FabSense株式会社(https://www.fab-sense.com/)は、あらゆる形状に被覆可能で配線が不要なロボット用触覚センサー「Fab Sense」を開発している。
このセンサーは、磁気応答性材料を主軸に、任意の形状に成型できる型成形技術を併用。力を受ける部分がどのような形状でもセンサーとして機能し、従来は取り付けられなかった場所への触覚センサーの搭載を可能とする。力を受ける部分に電気的な配線がないことにより、簡単に取り外して交換することも可能で、計測回路をカバーで保護することができるため、防水・防塵性能も期待できるという。
複数の点を持つセンサーが力の大きさを取得することによって力の分布を計測することができるほか、センサー自体が柔らかく相手形状にフィットするため、ロボットハンドに搭載すれば、フィードバック制御で柔らかい物体をつかむことも可能に。これまでは困難だった高い形状自由度とメンテナンス性の実現したことにより、さまざまなシーンでの応用が期待できそうだ。
■衛生的かつ低コストで使い捨てOK! ■紙製のロボットハンド
もう一つ、ロボット関連のブースを紹介したい。「Folding Gripper」(https://protopedia.net/prototype/2724)は、紙から構成された、折りたたみ式の指機構を持った使い捨てのロボットハンド。現代では人手不足や重労働の問題を解決するためロボットの導入が進んでいるが、特に医療現場や食品加工工場などでは衛生面や安全性が重視される。そこに着目して開発されたのがこの製品だ。
最大の特徴は紙などのシート状の展開図から1本の指が構成される点。これにより従来のロボットハンドにあった軸や軸受けといった機械部品や潤滑油は一切使用せず、大きさを自由に変更できるため、大型のコミュニケーションロボットから小型軽量のドローンまであらゆるものに搭載可能になった。
加えて、低コストで使い捨てができるため、洗浄の必要も衛生面での心配も不要となった。シート状の展開図はリサイクル可能なプラスチック素材や土にかえる再生紙で製作することもでき、環境にも優しい。
モノの当たる位置によって自動的に動作するリンク機構を搭載している点も「Folding Gripper」ならでは。少ないモーター数でさまざまな物体をつかむことができ、たとえば、食品など大きさや形が異なるものに特に威力を発揮する。小さいものは指先でつまむ、大きいものは指全体でつかむといった動作でも、複雑な制御は不要だ。
折りたたんでコンパクトに収納できる点にもこだわったという。「使い捨て」できるということは、それなりのストックが必要となるが、薄板状態に折りたたんで収納できる機能も付加した。専用ソケットに折りたたんだ指部分を数枚収納しておけば、指部分に触れることなく、レバーを使ってワンタッチで使い終わった指部分の排出と新しい指部分を交換できるのも、大きなメリットと言える。現代の著しいロボット技術の進化やその導入には、この「指」のような細部のテクノロジーも欠かせないことを改めて実感した。
■重さわずか45gの羽ばたく飛翔ロボットが目指す未来像
早稲田大学の渡邉研究室(https://www.watanabe-lab.jp/)のブースでは、「羽ばたきドローンWiFly」と呼ばれる羽ばたき型飛翔ロボットが展示されていた。カーボン製の軸に取り付けられたポリスチレン(ポリエチレン製フィルム)がパタパタと羽ばたくロボットの重さは、なんとクロワッサンと同程度の45g、小型カメラを付けても約50gほどだという。
垂直飛行、水平飛行など自由度が高く優れた飛翔能力を持ち、航続距離を伸ばせるといった特徴は、両翼を独立して制御する「両翼独立羽ばたき機構」、アーム先端に付けたバッテリーを動作させて重心位置を制御する「重心移動機構」、尾翼の動作により飛行姿勢を安定化させる「昇降舵機構」の3つの機構によるものだ。
ここまで小型・軽量化を追求したのは、1機、2機ではなく、大量にかつ広範囲に飛ばしたいという目的があったから。たとえば、これにセンサーを搭載し、大量に広いエリアに飛ばせば広範囲にわたる情報を即時に取得でき、インフラ網の監視のほか、災害時の避難誘導、事故現場の情報収集などに大いに役立つようになる。また、気温、気圧、風速、湿度などのデータを取得し、天災を予測することも期待されている。
一見、羽虫のようなそのフォルムは、トンボを模倣したデザインだという。目標とするのは、飛行中に落下したりしない生物、つまり鳥や虫が持つような機能を搭載した小型の飛翔体。最終的には、人工知能や人工筋肉を搭載し、無線通信を使わない完全自律制御を目指したいそうだ。
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