死んだ人をAIを動かすデジタル蘇生が中国で話題! 誰もが「死せる孔明生ける仲達を走らす」時代に!?
ASCII.jp / 2024年3月17日 10時0分
中国のネット企業も生成AIに積極的に取り組んでいる 死者の写真や音声からデジタル蘇生させるサービスが話題
AI関連のテクノロジーが発達し、特定の人の音声をいくつか入力するだけでAIで喋りを生成したり、同様に写真についてもAIでデジタルヒューマンを動かせるようになった。中国でも米国に追いつけと、名のあるネット企業がAIに取り組み、中国のインターネットの壁の中で十分なAIサービスが揃った。
中国のECサイトではアパレルショップが販売する服をバーチャルモデルに着させるサービスや、ライブコマースで本人そっくりのデジタルヒューマンが24時間配信するサービスが活用されるようになった。またこなれた技術が揃ったことで、これらを活用するサービスを専門企業からタオバオのショップまで、こぞって売り始めた。今回のトピックである亡くなった大事な人をデジタル蘇生をするサービスもその1つだ。
デジタル蘇生のサービスもピンキリで販売されている。ピンの方では、中国では「AI4小龍」と呼ばれるうちの1社「センスタイム」が、同社前会長の湯暁鴎氏を年次総会でデジタル復活させたことが話題になった。
![デジタル蘇生](https://ascii.jp/img/2024/03/16/3703059/x/97d3b6daafdfbed5.gif)
湯氏は昨年12月に病で54歳という若さで他界したことでも話題になったのでなおさらだった。毎年の年次総会で登壇し、氏の話を聞くことは参加者からは定番のイベントであったが、デジタル復活したそれは、頭の下げ方や手の動きまでもが非常に自然で、話し口調トークのスタイルはもちろん、コップの水を飲む仕草まで再現されていたので驚きに包まれた。
![デジタル蘇生](https://ascii.jp/img/2024/03/16/3703060/x/f2b3b1bb7610add9.gif)
一方キリの方はと言えば、中国のECサイトで多数のデジタル復活を販売する店がある。「AI復活」などと検索すると、日本円で200円ちょっとの料金だ。実際の中身はオープンソースのサービスを活用したものだが、一方自社開発のデータモデルを強みに、より再現度の高い蘇生ができると主張するショップもある。こちらは30秒以内の動画で199元(約4000円)からスタートし、時間が長くなれば値段も上がる。またこうした店に依頼せず自ら学んで実戦しようとする動画がビリビリなどにアップされている。
![デジタル蘇生](https://ascii.jp/img/2024/03/16/3703063/x/63443ba2f450f527.gif)
最近話題となったデジタル蘇生サービスを提供する張沢偉氏は、以前からデジタルヒューマンを研究していて実績を積み上げ、この1年で653件の復活依頼を受けた。
![デジタル蘇生](https://ascii.jp/img/2024/03/16/3703061/x/f9716512b0bed49b.jpg)
同氏の手法はこうだ。まずは故人の写真や音声など、本人関連のさまざまな資料を駆使してクローン人物を正確に作成する。1分の顔が全体的に映ったビデオと5分以上の高品質の音声サンプルがあれば再現できる。そして張氏のチームメンバーか、場合によっては専門の心理カウンセラーが、蘇生した人物にデジタル顔変換処理をし、クライアントとビデオチャットまでして完全再現をする。音声だけの場合もあればビジュアル付きのというのもあり、顧客のニーズにより価格は5000~1万元程度とさまざまだ。
中国においてもデジタル蘇生は倫理的にどうかと賛否両論 本人が生きているうちに自分のデジタル人格を作る可能性も
デジタル蘇生は一時的であれ寂しい気持ちを和らげて心理的に快適になることができ、人間関係の問題解決に一助になる心の治癒だと張氏は語る。ただ中国においても倫理的な問題が問われるし、犯罪にも使われかねないと賛否両論だ。死者を復活させることは生命に対して失礼だという意見もあるし、生と死についての混乱や誤解を招く可能性があると考える人もいる。さらに、この技術が悪用されたり、不適切な目的に使用されるという懸念もある。
![デジタル蘇生](https://ascii.jp/img/2024/03/16/3703062/x/e6c9dfbf34436353.jpg)
そこで起こり得る問題を回避するために、張氏のチームは顧客がデジタル蘇生をしたい動機を聞いて判断し、また法律などに違反する行為はしないという同意を求める注文受付ルールを作った。実績を積み上げる張氏には話題になるや、1000件を超える依頼があった。しかし結局張氏が受注したのは600件余りだった。
たとえば親に会いたいのに会えない子供をなだめたいといった依頼や、在宅の高齢者が過度の精神的ショックを受けないよう慰めたいといった依頼は注文を受け入れた。一方で問題があったり、古い写真しかないなど資料が少なすぎた案件は受けなかった。依頼によってはあまりに重い内容ので権威ある心理学の学者にデジタル蘇生したほうがいいかを相談し、しないほうがいいという判断から断ったケースもあるという。
デジタル蘇生は亡くなった人を近親の依頼により依頼されるだけではない。生前に自伝のように本人がデジタル蘇生という形で自身を記録として残そうとすることも現時点で既に可能だ。中国は少子高齢化を迎える上に日本の10倍以上の人口を抱える大きなマーケットだ。
デジタル蘇生が普及すれば、三国志に出てくる蜀の軍師の諸葛亮の死後、生前に作っておいた木像を見て魏の軍師の司馬懿率いる軍が退くという、「死せる孔明生ける仲達を走らす」というのも古い話に聞こえてしまうかもしれない。
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