日本とは異なる趣を持つ、ドイツのヘッドホンイベント“The World of Headphones”
ASCII.jp / 2024年3月17日 17時0分
昨年もこの連載で紹介したドイツのヘッドホン展示会「The World of Headphones」が今年も3月2日に開催された。毎年ミュンヘンで開催される「HIGH END Munich」と同じ組織が運営する新しいイベントだ。
今年は、ドイツ・ハイデルベルクのTANKTURM(タンクトゥルム)とコラボし、芸術活動のためのコンベンションセンターで開催された。TANKTURMは日本語に訳すと給水塔だが、ここでは1920年代末に建設されたコンクリートとレンガの外壁で建設された鉄道用の給水塔を建築家が購入して、2015年からイベントセンターとして公開している施設を指す。なかなかユニークなロケーションである。
昨年のThe World of Headphonesはドイツ・エッセンにある炭鉱跡OKTOGON(オクトゴン)に作られた八角形のユニークな施設で開催された。毎回、面白い会場選択をするイベントだ。工業国家で環境先進国のドイツらしく、炭鉱跡のZOLLVEREIN(ツォルフェアイン)など、工業跡地を再利用したイベント施設は多いようだ。
内部は小部屋で区切られているとともに、建物の最上階はリスニングエリアとして利用され、暖炉も据えられている。ちなみに、イベントスポンサーのひとつはCampfire Audioだが、こういった演出もなかなか面白い。クラシック時計のイベントも同時開催されていたようだ。前述したユニークな会場選定も含めて、The World of Headphonesはヘッドホンオーディオとインテリアや趣味性との相乗効果を重視しているように見える。
日本のヘッドフォン祭りやポタフェス、あるいはアメリカのCanJamなどとは異なり、アート系のイベント会場を使用するのは面白い試みだと思う。2回目にして早速にイベントの個性が現れてきたのは、主催団体のハイエンドソサエティが確かなビジョンを持っている証拠なのかもしれない。
日本でもおなじみのブランドが出展、イヤホンよりもヘッドホンが強い
Headphoniaなど、現地メディアもイベントをレポートしている。このイベントがイヤホンよりもヘッドホンを重視しているのかもしれないと感じる例としては、ヘッドホンやデスクトップ再生に対応した機材が豊富である点だ。
Astern & Kernのデスクトップアンプ「ACRO CA1000T」、Austrian Audioのハイエンドヘッドホン「The Composer」、同じくヘッドホンアンプ「Full Score one」。Campfire Audioはハイエンドイヤホン「Trifecta」も見えるが、今ではディスコンになっているはずのヘッドホン「CASCADE」もある(EU市場ではまだ販売しているのかもしれないが)。
ほかにも、Dan Clark Audioの平面型ヘッドホン「EXPANSE」や先日ヘッドホン祭で披露された「E3」、日本でもお馴染みのMeze Audoの「EMPIRYAN II」や「109 Pro」。日本メーカーfinalの「D7000」「D8000 Pro」「ZE8000 MK2」なども展示されていたようだ。DALIのハイエンドワイヤレスヘッドホン「IO-12」はDALIの独自技術であるSMCドライバーを初めてヘッドホンにも採用したモデル。日本では未導入の機種だ。
日本で馴染みのないブランドの展示もあったようだ。スロベニアのErzetich Audioだ。Erzetich「THALIA」(タリア)は、世界初となる“ハンドメイド”のオーディオマニア向けポータブルヘッドホンだという。約260gと軽量のモデルでポータブルだが、外音が聞こえるように意図的に開放型にしているとのこと。電車など屋外で使用する日本との事情の違いを感じる。
「Charybdis」(チャリブディス)はハイエンド製品で、平面磁界型の開放型ヘッドホン。カーボンファイバーのヘッドバンド、CNC切削アルミニウムのイヤカップで価格は3000ユーロ。日本円だと50万円を超えるだろう高価格の製品だ。
「Mania」(マニア)はチタンコーティングの50mm口径ダイナミックドライバーを搭載したセミオープン型のヘッドホン。80オームとやや高めのインピーダンスが特徴だ。音も暗めだが、その代わりに細かい音の抽出には優れているとしている。価格は1199ユーロ。
ちなみに、HeadphoniaのレポートではRAAL 1995の「Immanis」がショーのベスト展示品に選ばれていた。RAAL 1995はリボン型イヤースピーカーのRAAL「SR-1b」を開発したRAAL-requisiteの派生ブランドのようだ。Immanisはトリプルドライバーの新製品で、詳細はよくわからないが、試してみたい製品に感じた。
The World of Headphonesの次回開催は5月のミュンヘンハイエンドショウの中で同時開催されるということだ。
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