ショート動画はクリエイターの収益につながっているのか? YouTubeが1年目の成果を発表
ASCII.jp / 2024年3月28日 22時0分
YouTubeは、モバイル版のYouTubeアプリが搭載するカメラで撮った最大60秒の「ショート動画」を、YouTubeのプラットフォームに公開できる機能を提供しています。日本でも2021年7月にYouTubeショートが楽しめるようになりました。
2023年2月からYouTubeパートナープログラム(YPP)の中に、YouTubeショートから生まれる収益をクリエイターに配分するための仕組みも整いました。YouTubeはこのショート動画の収益分配モデルを開始してから1年の間に積み上げた成果を公式ブログで振り返っています。
ショート動画の収益分配モデル開始から1年。成果は?
YouTubeは2007年、YouTubeに参加するアーティストに様々なコンテンツ制作に必要なリソースを供給したり、同時に収益化の道筋をつくるためにYouTubeパートナープログラム(YPP)を開設しました。現在YPPに参加するクリエイターのチャンネル数は300万を超えています。またプログラムにより、クリエーターやアーティスト、メディア企業に還元された収益は過去3年間で700億ドル(約10兆6000億円)以上になります。
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YouTubeのDirector of Product Management, Creator MonetizationのThomas Kim氏は「YouTubeの成功はパートナーの成功と一体。クリエイターの皆様による活躍を支えるため、収益分配の仕組みを整えることに注力してきた」と振り返っています。YouTubeショートの収益分配モデルは、より多くのクリエイターを支援するための施策の一環に位置付けられています。
クリエイターがYouTubeショートで収益を得るためには、チャンネルに1000人の登録者(ファン)がいることと、直近90日間に1000万回の再生に到達していることが条件です。Kim氏によると、それぞれの条件をクリアする人気クリエイターが続々と増えているそうです。
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現在、YPPに参加するクリエイターの8割以上が制作したコンテンツによる収入を得ています。広告やファンダムなどを通じてYouTubeから収益を獲得できているケースも多いようです。
ショート動画については昨年に収益分配モデルを開始してから、YPPに登録するクリエイターの25%以上が動画配信を通じて収益を得ているといいます。Kim氏は今後もYouTubeショートの収益化プログラムをより強化する方針を示しています。
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クリエイターとコミュニティのため より良いプラットフォームをつくる
YouTubeのDirector of Product Management, YouTube ShortsのTodd Sherman氏は、YouTubeショートで活躍するクリエイターが増えることにもつながった、いくつかの機能拡張の成果についてコメントしています。
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ひとつはYouTubeアプリからの縦向きライブ動画配信に対応し、チャット機能の拡充などを図ったことです。クリエイターと視聴者とのつながりが、広く深くなる大きなきっかけになったとSherman氏が振り返っています。
ショート動画のコンテンツに関連する動画へのリンクが追加できるようになり、クリエイターがYouTubeの長尺動画との相互送客を活用するケースが増えたそうです。YouTubeショートの人気により長尺動画の本数が減るようなことが起きず「両方がバランスよく拡大」している現状の好循環が、このリンク追加機能により生まれているといいます。なお、現在ショート動画は毎月20億人の視聴者を獲得しているそうです。
そしてもうひとつがYouTubeショートの画面を2つに分割して、お気に入りの音楽ビデオとクリエイターの動画を合成した「リミックス動画」をつくるコラボ機能を追加したことです。
リミックス動画については、YouTubeアプリのツールを使って制作する限りにおいては、音楽ビデオの権利所有者からコラボに使用することについても許諾が得られているため、これを制作/配信することによるトラブルは発生しないとSherman氏が説明しています。一方で、仮にYouTubeアプリの外でユーザーが合成した動画をリミックスの素材にしていたり、YouTubeが認めていない方法で作成されたリミックス動画は違反行為として扱われます。
Sherman氏は、忙しい現代人の「すき間時間」を有効に満たせるツールとして「ショート動画に対するユーザーの満足度は日々高まっている」とコメントしています。今後はユーザーの行動パターンに合わせて、「仕事の合間の気分転換」「眠る前のリラグゼーション」などに最適なショート動画をレコメンデーションする機能も開発が進んでいるようです。またユーザーが興味を持っているトピックについて、動画を配信しているクリエイターを見つけやすくする機能も、Sherman氏が強化を図るべきポイントとして挙げています。
伸びているクリエイターの成功体験を新しいクリエイターに伝授
APAC(アジア太平洋地域)でYouTubeショートを活用してチャンネルを拡大しているクリエイターや、コミュニティの拡大状況については、YouTubeのAPAC Lead, Shorts Creator PartnershipsのNiharika Kapoor氏がコメントしています。
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Kapoor氏は「人気のクリエイターを中心に形成されるコミュニティは、YouTubeにとっても大きな財産。APAC地域でのコミュニティを全力でサポートしている。クリエイターとのコミュニケーションを豊かなものにするため、クリエイターから寄せられる声がYouTubeのサービス向上にも大きな役割を果たしている」とし、今後もクリエイターとコミュニティの両方を支援する考えを述べています。
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YouTubeショートのクリエイターとコミュニティを拡大するため、YouTubeはこれまでに動画制作や視聴者とのつながりを深めるためのヒントを提供するワークショップやオンラインセッションを実施してきました。現在伸びているクリエイターを「お手本」にして、成功体験を新しいクリエイターに伝えるセッションなどが人気のようです。Kapoor氏ははAPACで成功しているYouTubeショートのクリエイターとして、日本のバヤシさん(Bayashi TV)、韓国のKelly Forniaさん、インドネシアのMeissieさんなどの名前を挙げています。家族でYouTubeショートを配信して人気を得ているタイのJJパン、インドのKL BRO Biju Rithvikなど「ファミリークリエイター」の動向にも注目が集まっているといいます。
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YouTubeショートを単独のアプリプラットフォームとして切り離す計画はあるのでしょうか。YouTubeのプラットフォームには長尺の動画、音楽、ポッドキャストなど様々な形態のコンテンツがあります。クリエイターがYouTubeショートのコンテンツを制作する際、YouTubeによるエコシステムを効率よく安全に活かせるように、今後もYouTubeではYouTubeアプリに組み込まれているショートカメラを使ったコンテンツ制作を推奨する方針を示しています。
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筆者紹介――山本 敦 オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。
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