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【レビュー】これ以上待つ理由がない完成形 M3搭載MacBook Air

ASCII.jp / 2024年4月17日 8時0分

3月8日に発売したM3チップ搭載のMacBook Air 13インチモデル

 既存モデルのアップデート版としては珍しいことではないが、今回のMacBook Airもどちらかというと突然、ひっそりと発売された。当然ながらM3チップを搭載し、13インチと15インチの両モデルが同時に登場した。今回は13インチモデルを試用することができたので、そのインプレッションを中心に、このモデルの位置づけ、魅力を探っていく。

M3 MacBook Airまでの道のり

 M3チップを搭載したMacBook Airは、M1以降のMacBook Airから数えれば言うまでもなく3世代目ということになる。ただし、M1以降のMacBook Airとして3番めに発売されたモデルというわけではない。というのも、前世代のM2を搭載したMacBook Airは、13インチと15インチの各モデルの発売の間にほぼ1年のギャップがあり、15インチモデルがまったくの新製品として発売された経緯があるからだ。

 今回のM3 MacBook Airの位置づけを理解するため、はじめにM1チップ搭載以降のMacBook Air全モデルの発売年月と外観に関わるスペックを確認しておこう。

M1以降のMacBook Airラインナップ

 まず、Macシリーズの中でも先陣を切ってM1を採用したMacBook Airが発売されたのは、M1チップの発表と同時の2020年11月だった。次にM2を搭載したMacBook Airが登場するのは2022年6月。M1からはかなり間が空き、約1年と9ヵ月後ということになる。そして今回のM3搭載MacBook Airは、M2 MacBook Airからやはり1年9ヵ月後に登場した。M3チップ自体は、MacBook ProとiMacに搭載されて2023年11月に登場しているため、MacBook Airでの採用は、それらより4ヵ月ほど遅かったわけだ。ここからMacBook Airのメジャーアップデートの間隔は、採用するチップの都合よりも、MacBook Airとして独自のペースを優先して決められているように見える。

M2搭載以降のMacBook Airは、インテル時代からM1搭載モデルまで引き継ぐウェッジシェイプからフラットなボディに脱皮した

 M1以降のMacBook Airのラインナップを見渡せば、M1搭載モデルだけがウェッジ(楔)シェイプのボディをまとった異質な存在だったことが思い出される。これは旧世代のインテルチップ搭載のMacBook Airのボディを継承したもの。M1搭載MacBook AirはインテルからMシリーズチップへの過渡期に登場したモデルだったことがわかる。その意味では、M2以降のMacBook Airが真の新世代モデルということになるだろう。今回のM3では、13インチと15インチの両モデルが同時に登場していることからも、MacBook Airは完成度の高い安定期に到達したと見ていい。

4種類の「仕上げ」の1つ、ミッドナイトは4種の中でもっとも濃い色で、引き締まった高級感を醸し出す

新色加入! 魅力的な4種類のカラバリ

 上の表には、アップルの仕様では「仕上げ」と表記されるカラーバリエーションも示した。M1モデルはゴールド、シルバー、スペースグレーの3種だったのに対し、M2以降ではゴールドがなくなり、その代わりにスターライトとミッドナイトが加わって、全4種となっている。

 同じM3搭載モデルでも、MacBook Proではスペースグレーまたはシルバー、M3 ProおよびM3 Max搭載モデルではスペースブラックまたはシルバーの、いずれも2種からしか選べない。4種のカラバリがあるのは、MacBook Airの大きなメリットの1つと言える。

 ちなみに今回試用した13インチMacBook Airの仕上げは、ミッドナイトだった。この色は筆者個人として初めて実際に手に触れるもの。強い光を当てると濃い紺色にも見えるが、普段はほとんど黒に近い色に見える。いずれにせよかなり引き締まった雰囲気で、MacBook Airがより薄く、より小さく感じられる。ホコリなどの付着が目立つのが難点だが、他の仕上げと比べて独特の高級感もある。スターライトと並んでMacBook Airならではの個性的を主張する仕上げだ。

歴代のMacノートの中では、もっとも薄く、軽い。キーボードを含めた可搬性は、ほぼ同サイズのiPad Proよりも優れる

 13インチ、15インチのそれぞれのMacBook Airは、M2、M3搭載モデルでサイズも重量も変わらない。特に13インチモデルは、M1搭載モデルよりも薄いのはもちろん、重量も軽い。歴代のMacの中で最も薄いのはもちろん、現行モデルで13インチMacBook Airの1.24kgより軽いのは、M2搭載のMac mini(1.18kg)だけだ。M2 Pro搭載のminiは1.28kgとなり、13インチMacBook Airよりも重い。液晶ディスプレイとバッテリーを内蔵してこの軽さには恐れ入る。

 なお、本体だけを比べれば、ほぼ同サイズ、12.9インチの画面サイズのiPad Proのほうが薄く(6.4mm)軽い(682g:Wi-Fiモデル)が、MacBook Airと同等の操作性を得るためにMagic Keyboardを装着すると、合計ではむしろ重く(実測1.36kg)なってしまう。MacBook Airの薄さ、軽さは尋常ではない。

M1〜M3チップのスペック比較

Mシリーズチップの性能向上は頭打ちなのか?

 すでに示した外観の仕様を見る限り、M2、M3搭載モデル間の違いは、ほとんどというよりもまったくないと言える。また、後で見るように、基本的な機能はもちろん、拡張ポートの構成についても、ほとんど違いはない。M2搭載モデルとの違いは、M2とM3の性能の差が焦点となる。

 MacBook Airの実際の性能については、本稿の続編として予定しているベンチマークテスト結果と考察の記事で改めて詳しく述べることにして、ここではM2とM3のスペック上の違いを確認しておこう。

 ここでも単純な数字に現れる違いは、さほど大きくないことに気付く。まずCPUのコア数は、M1からM3まですべて8で、内訳も高性能コアが4つと高効率コアが4つで同じだ。もちろん、だからといってCPU性能が同じということにはならない。M1、M2、M3では、1つのCPUコアの性能自体が進化しているからだ。

 GPUのコア数にも大きな違いはない。M1モデルは7または8コアを選択できたのに対し、M2、M3の13インチモデルは8または10の選択となっている。また、両15インチモデルでは10に固定される。ここでも、GPUコア数が同じなら性能も同じとはならない。それは、M1からM3まで、16コアのNeural Engineについても言えるだろう。

 M2とM3のはっきりした違いは、M1では装備のなかったメディアエンジンに現れている。M3では、サポートするコーデックにAV1が加わっているのだ。ただし、ハードウェアによるエンコードはサポートしておらず、デコードのみとなっている。同様に、M3のみの機能として、ハードウェアによるレイトレーシングのサポートが加わっているが、これはレイトレーシングによる3Dグラフィックの描画以外には効果はなさそうで、それを利用できるかどうかもアプリケーションに依存するはずだ。

 ほとんどチップと一体となっているメモリについては、M1とM2以降で大きな進歩がみられるものの、M2とM3ではスペック上の変化はない。メモリの帯域幅は、M1の68.25 GB/sが、M2以降では100 GB/sとなったことが仕様にも明記され、最大容量もM1の16GBから24GBに拡張されている。

 このようなスペックだけを見ていると、やはりM2とM3では性能的に頭打ちになっているのではないかという疑問がわいてくる。実際にアップルの公式ウェブサイトにある製品紹介ページ(https://www.apple.com/jp/macbook-air/)にある「M3チップの中身を見る」をクリックして開くと、MacBook Airの「以前のモデルとの比較」がグラフとして表示される。そこでは「ビデオ編集」「イメージフィルタとエフェクト」「ゲーム」「3Dレンダリング」「AIによる画像のアップスケーリング」の性能を比較している。

アップルが公開する歴代のMacBook Airの性能比較グラフ「ビデオ編集」

 たとえば、「ビデオ編集」を見ると、クアッドコアのIntel Core i7搭載13インチモデルに比べて、M3搭載13インチモデルは、13倍の性能を発揮するとしている。

 ちなみに、「イメージフィルタとエフェクト」では2.8倍(Core i7基準)、「ゲーム」では1.6倍(M1搭載機基準)、「3Dレンダリング」は5.8倍(M1搭載機基準)、「AIによる画像のアップスケーリング」は14.9倍(Core i7基準)となっている。処理の種類によって性能の比率に大きな違いがあるのは興味深いが、いずれにしても頼もしい数字が並んでいる。

 ただし、上のグラフを見てもわかるように、M1やM2との性能差が小さいものがあるのは気になる。このあたりを見ると、M3のCPU性能は、M2と比べて、それほど大きく進化していないのではないかという疑問も浮かんでくる。

アップルが公開する歴代のMacBook Airの性能比較グラフ「3Dレンダリング」

 その一方で、「3Dレンダリング」は、M1と比べて5.8倍、数字は示されていないがM2と比べても5倍程度の結果となっている。

 上記の製品紹介ページの脚注を読むと、この差はハードウェアによるレイトレーシングのサポートの有無から生じているようだ。今のところ市販のアプリではなく、テスト用のプログラムによる結果のようだが、M3が新しい大きなポテンシャルを秘めていることが十分にうかがえる。

 macOSに標準装備されているものや、実際にApp Storeから入手可能なアプリケーションを使ったテスト結果は、すでに述べたように別途公開する実際のベンチマークテストで検証することにしよう。

M1〜M3モデルの内蔵ディスプレイ比較

内蔵ディスプレイは変わらず、外部ディスプレイは2台に拡張

 最初に示した外観のスペックからも想像できるように、M3搭載モデルの内蔵ディスプレイは、M2モデルと何も変わっていない。サイズはもちろん解像度や最大輝度のスペックも同じだ。

MacBook Airの外観、ディスプレイ、キーボードなどは、ユーザー視点でM2モデルとM3モデルを見分けるのは難しい

 このことは、すでにM2モデルの段階で、現行MacBook Airのチップ以外の部分は完成の域に達したことを表している。それは、操作性に関わる部分でも同様で、内蔵ディスプレイだけでなく、キーボードやトラックパッドについても言える。少なくともユーザーから見て、実際に操作しても、M2モデルからの変化は感じられない。

 周辺機器との接続性、拡張性についても、Thunderbolt兼USB 4ポートが2つで、基本的にはM1からM3まで大きくは変わらない。もちろん、M2、M3ではMag Safe 3を装備したことで、2つのThunderbolt/USB 4ポートが電源供給から開放され、純粋に周辺機器との接続用として利用できるようになったことは見逃せない。

 さらにM3では、外部ディスプレイについては大きな進化があった。M1、M2では外部ディスプレイは1台しかサポートしていなかったが、M3では最大2台のディスプレイを接続できるようになった。

M1〜M3モデルの拡張性比較

 ただし、M3で2台めのディスプレイを接続するには、内蔵ディスプレイを閉じて、表示をオフにする必要がある。また、2台めの解像度は最大5Kまでという制約がある。

 それでも自宅やオフィスのデスク上で、2台の外部ディスプレイに接続し、Bluetooth接続のキーボード、マウスまたはトラックパッドを使用して作業できるのは大きなメリットだ。MacBook Airを完全なデスクトップ機として利用可能にするもので、用途を大きく拡大することになる。

MacBook Airのディスプレイを閉じれば、2台の外部ディスプレイを利用可能となった

 なお、上のスペック表を見ると、ポートの仕様として、M1、M2にはあった「USB 3.1 Gen 2」という記述がM3では削除されている。これは、その互換性が省略されたのではなく、そもそもUSB 4がUSB 3.xを包含しているし、USB 3.1 Gen 2は、USB 3.2 Gen 2へと名称が変更されたこともあって、記述が削除されただけだと思われる。とはいえ、実際の周辺機器との互換性は、コネクター形状の違いも含めて、接続する機器ごとに確認する必要がありそうだ。

M1〜M3モデルの電源スペック比較

電源まわりのスペックは変わらないが消費電力はやや増えた?

 バッテリーや電源アダプターなど、電源まわりのスペックについても、M2とM3搭載モデルで違いは認められない。内蔵バッテリーの容量は、13インチモデルが52.6Wh、15インチモデルは、それより26%ほど多い66.5Whとなる。

10コアGPUモデルに付属するデュアルUSB-Cポート搭載の35W電源アダプターと、本体色とコーディネートされた電源ケーブル

 M2以降のMacBook Airに付属する電源アダプターの出力は、GPUのコア数に連動している。つまり、8コアモデルは30W、10コアモデルは35Wのデュアルポートとなる。ただし、13インチの8コアモデルでも、ストアでのカスタマイズによって、プラス3000円で35Wのアダプターが選べる。

 試用したモデルのGPUは10コアなので、USB-Cの出力ポートが2つある35Wのアダプターが付属していた。Mag Safe 3対応の電源ケーブルは、本体とカラーコーディネートされていて、いつもながら芸が細かい。

 これもM2時代と同じだが、公式ストアのオプションでは、70Wの電源アダプターを選択することも可能だ。アダプターは大きく、重くなるが、充電時間は確実に短縮できる。自宅やオフィスでしか充電しないという人には魅力的なオプションだろう。金額は、8コアGPUモデルならプラス3000円、15インチモデルを含む10コアGPUならプラス0円だ。

 電源まわりでいちばん気になるのは、やはりバッテリーの持続時間だろう。仕様上は、ムービー再生18時間、ワイヤレスインターネットが15時間という数字が示されている。この数字はM1時代から、チップの世代にかかわらず、また画面サイズにもかかわらず、すべてのMacBook Airで同一で、理論値にしてもあまり信用できない感じだ。

 そこでいつものように、YouTubeのビデオをWi-Fi経由で連続再生するテストを実行した。フル充電状態で再生を開始してから残量が0%になって強制スリープするまでの時間を計測する。条件もこれまでと同じで、画面の明るさをオンスクリーンのインジケーターで6コマ分に調整し、Safariでアップルのイベントビデオのプレイリストをフル画面表示で連続再生している。

歴代のMacBook AirモデルのYouTube連続再生時間

 結果を、M1、13インチのM2、15インチのM2、そして今回の13インチM3の各MacBook Airで比較しよう。

 M2では、M1に比べて同程度の負荷に対する消費電力がかなり減少していたと考えられ、連続再生時間は20時間弱から28時間前後にまで延びている。M3ではさらに減少するのではと期待していたが、逆に増加したようだ。同じM2の13インチモデルと比べると、わずかに連続再生時間が短くなり、25時間半程度となった。それでも丸々一日以上連続で使えるのだから、特に不満はないだろう。

 バッテリーが空の状態(強制スリープした後の状態)から、フル充電状態(100%)になるまでの充電時間も比較する。

バッテリーが空の状態からフル充電になるまでに要する時間

 電源アダプターは、M1が30W、M2とM3は35Wだが、M3のみは、付属の35Wに加えてMacBook Pro用の96Wでもテストした。96Wでは、35Wの3割近くも充電時間が短縮された。今回はAir用オプションの70Wアダプターを用意できなかったが、70Wでも、96Wとほぼ同じような結果になるのではないかと予想している。

 MacBookのバッテリー充電時間は、ばらつきが比較的大きい。35Wのアダプターによる充電でも、M2の13インチだけが短くなっているのは、おそらくそれもあると考えられる。また、MacBook Airに限らずMacBookでは、99%になってから100%になるまでの時間が長く、このM3モデルも、35Wでは20分弱、96Wでは10分強かかっている。残量表示が99%でも構わないなら、このグラフに示したよりも短い時間で、ほぼフル充電できるわけだ。

今なら同じ13インチのM2モデルも選べるが……

 いつまで販売が継続するかはわからないが、現状ではM3モデルが登場した後も13インチのみ、旧世代のM2モデルが併売されている。もちろん最新のM3モデルに比べて安価となっている。

 最も安価な8コアCPU、8コアGPU、8GBメモリ、256GBストレージで比べると、M2モデルが14万8800円、M3モデルは16万4800円で、その差は1万6000円だ。また、8コアCPU、10コアGPU、8GBメモリ、512GBストレージでは、M2モデルが17万8800円、M3モデルは19万4800円となり、差は同じ1万6000円だ。これを大きいと見るか、小さいと見るかは、想定している予算にもよるだろう。しかし、どうせ20万円近くするものを買うのだから、その金額の1割以下の差なら、より高性能となった新しいM3モデルの方がお勧めだ。

 今回取り上げたスペックの範囲では、2台まで使えるようになった外部モニターくらいしかメリットが感じられないかもしれないが、別記事でお届けするベンチマークテスト結果を見れば、やはりM3にすべきだと確信できるだろう。

 

筆者紹介――柴田文彦  自称エンジニアリングライター。大学時代にApple IIに感化され、パソコンに目覚める。在学中から月刊ASCII誌などに自作プログラムの解説記事を書き始める。就職後は、カラーレーザープリンターなどの研究、技術開発に従事。退社後は、Macを中心としたパソコンの技術解説記事や書籍を執筆するライターとして活動。近著に『6502とApple II システムROMの秘密』(ラトルズ)などがある。時折、テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士として、コンピューターや電子機器関連品の鑑定、解説を担当している。

 

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