【レビュー】Beatsの定番ヘッドホンが刷新! ロスレス再生に対応「Beats Solo 4」を聴く
ASCII.jp / 2024年4月30日 23時0分
アップル傘下のBeats(ビーツ)が、オンイヤータイプの新しいワイヤレスヘッドホン「Beats Solo 4」を発表、5月14日に発売します。発売に先立ち実機を借りて試した先行体験レビューをお届けします。
Beatsの定番ヘッドホンが約8年ぶりに刷新
Soloシリーズは、2008年にBeatsのブランドが立ち上がった直後の2009年に初代のSolo(Beats Solo by Dr.Dre)が発売されました。最新モデルのBeats Solo 4(以降、Solo 4)は、2016年に発売されたApple W1チップを搭載するワイヤレスヘッドホン「Solo 3」以来のアップデートです。
歴代のBeats Soloシリーズは、柔らかなイヤーパッドを耳に乗せるように装着する「オンイヤースタイル」を継承してきました。現在は、電気的な処理によってリスニング環境周辺のノイズを消すアクティブ・ノイズキャンセリング(ANC)機能を搭載するヘッドホンが主流になり、ANC搭載ヘッドホンの多くがゆったりサイズのイヤーカップで耳全体を覆う「アラウンドイヤースタイル」であることから、Beats Soloシリーズのようなオンイヤースタイルのワイヤレスヘッドホンが珍しくなりました。
現在、Beatsのラインナップには2023年夏に発売された、ANCを搭載するアラウンドイヤースタイルの「Beats Studio Pro」(レビュー)というワイヤレスヘッドホンもあります。
自然な遮音効果が得られるオンイヤースタイル
Solo 4はANCを搭載していませんが、代わりに軽量、コンパクトで可搬性が高いところに特長があります。質量260gのStudio ProもANC搭載のワイヤレスイヤホンとしては十分に持ち運びやすいのですが、Solo 4の質量は217gなので、手に持って比べてみても軽さの違いがわかります。
オンイヤースタイルのヘッドホンはイヤーパッドを耳にしっかりと乗せて装着することで、遮音性能を引き出せます。Solo 4には、柔らかなUltraPlushクッションを耐久性能の高い合皮で包み込んだイヤーパッドが採用されています。長時間装着しながら音楽を聴いたり、ハンズフリー通話に使用しても耳や頭が痛くなりにくいところが魅力です。ANC機能を搭載していないので、大きめな環境ノイズは苦手なヘッドホンなのだろうと思うかもしれません。Studio Proのようにノイズをグッと抑え込むような感覚はないものの、代わりにSolo 4はとても自然な遮音効果が得られます。電気的な圧迫感もないので、ANCヘッドホン・イヤホンが苦手な方にも向いていると思います。
遮音性能は筆者が想像していたよりも高く、屋外の交通騒音などもよく遮ります。Solo 4には本体内蔵のマイクを使って環境音を取り込む機能がありません。そのため屋外で音楽再生や音声通話と同時に「ながら聴き」を楽しむ場合は、周囲のヒトやモノとの距離感にも気を配るべきです。
音質と機能:Solo 3から進化したポイント
Solo 4が、Solo 3からアップグレードされたポイントを整理します。
ヘッドホンにとってサウンドの心臓部であるドライバーを改良しています。Solo 4には40mm口径の振動板を採用するダイナミック型ドライバーがあります。内部アコースティック構造の再設計により周波数レスポンスを高めたことで、様々な音源をより忠実に再現できるヘッドホンになりました。
ケーブルによる有線オーディオリスニングも強化しました。パッケージに付属するUSB-Cケーブル、または3.5mmオーディオケーブルによる有線リスニングの際にロスレスオーディオ再生が楽しめます。
Solo 4には、Beatsが独自に設計した最新のプラットフォーム(システムICチップ)が載っています。Solo 3はアップルが設計したApple W1チップをプラットフォームにしていました。ゆえに、iPhoneやiPad、MacなどAppleデバイス間での設定や切り替えはスムーズなのですが、Androidスマホではマニュアルのペアリングが必要だったり、使える機能が限られました。
Solo 4が搭載するBeats独自のプラットフォームはAndroid OSとの高い互換性も意識して設計されています。例えば自動ペアリングや、Solo 4が手もとに見つからない時にスマホから「探す」機能などがAppleとAndroidの両方のデバイスでシンプルに使えます。
Solo 4は、iPhoneによる空間オーディオやダイナミックヘッドトラッキングにも対応しました。
iPhoneの設定メニューに並ぶ「パーソナライズされた空間オーディオ」では、iPhoneのインナーカメラを使ってユーザーの顔画像を撮影して、空間オーディオ再生の聴こえ方を最適化したパーソナルプロファイルを作成します。アップルのAirPodsシリーズのほかに、この機能が使える数少ないヘッドホンの中にBeatsのSolo 4が仲間入りを果たしました。Appleのダイナミックヘッドトラキングも同様に対応ヘッドホンが限られています。
内蔵バッテリーのスタミナが25%改善したSolo 4は、フル充電から50時間以上の連続再生が楽しめます。パッケージに付属する3.5mmヘッドホンケーブルを使えば、Solo 4のバッテリーが完全になくなっても有線リスニングに切り替えて使い続けられます。
ヘッドホンに内蔵するビームフォーミングマイクはS/N性能を改善。クリアな通話音声をピックアップします。さらにBeatsは色々なノイズがある環境で7000時間を超える機械学習を重ねて、独自の消音アルゴリズムをつくりました。家族にSolo 4を装着してもらって音声通話の品質を確かめたところ、通話時にはSolo 4のマイクが話者の背景ノイズを消し、ユーザーの声を選り分けながら聞きやすく整えてくれます。カフェや商業施設など、ざわざわとした場所でも声が喧噪に紛れてにじむことがありません。ビジネスのオンラインミーティングなどにもSolo 4が実力を発揮してくれそうです。
Bluetooth再生、有線ロスレス再生を聴く
Solo 4の音質をAmazon Music Unlimitedが配信するULTRA HD(ハイレゾ)の楽曲でチェックしました。最初はiPhone 15 ProにBluetoothで接続しています。
ジャズピアニストの上原ひろみと、トランペット・ベース・ドラムスによるカルテットが演奏する楽曲『Sonicwonderland』は、とにかく楽器の演奏が切れ味に富んでいます。まるで真夏の快晴の青空のようにパワフルで澄んだサウンドです。バンドが演奏する音が、目の前に迫ってくるような心地よい緊張感があります。低音は沈み込みと立ち上がりのスピード感が鋭く、筋肉質な瞬発力があります。ピアノやトランペットの高音域は響きが鮮やか。音の輪郭が滲むことなく、豊かな余韻が空間の広がりをしっかりと認識させてくれました。
Beats Studio Proは、広大なサウンドスケープを描く表現力に富んでいるヘッドホンです。比べてSolo 4のサウンドの特徴を記述するのであれば「力強さ」が魅力的であると感じました。
Solo 4は有線ケーブル接続時に最大48kHz/24bitのロスレスオーディオ再生に対応しています。USB-Cでパソコンやスマホ、タブレットに接続して、本体を充電しながら音楽を聴いたり、ハンズフリー通話にも使えます。
同じく上原ひろみの『Sonicwonderland』をBluetoothによるワイヤレス再生と、USB-Cケーブルによるロスレス再生で聴き比べてみました。ロスレス再生の方が情報量に厚みがあり、演奏にゆとりが感じられます。音像の定位がより鮮明になり、演奏者どうしの距離感がつかみやすくなります。演奏の繊細なニュアンスも引き立ってくる感触がありました。
同じ機能はBeats Studio Proも対応しています。ところがロスレスオーディオ再生は今のところ、アップルのAirPodsシリーズがどのモデルも対応できていません。音質にこだわるリスニング環境を追求しているところに、誕生以来オーディオブランドとして成長を続けてきたBeatsのこだわりが感じられます。
スマホでUSB-Cケーブルによるロスレスオーディオ再生を楽しむ際には、ヘッドホンに電源が供給されます。パソコンのように3.5mmオーディオケーブルを接続できるヘッドホン端子を持つデバイスであれば、Solo 4のバッテリーを使わずに音楽を聴くこともできます。飛行機による長旅のあいだなど、Solo 4のバッテリーを少しでも節約しながら使いたい時にも最適です。
かつてはBeatsのヘッドホンといえば「重低音」が代名詞という時代もありました。昨今のSolo/Studioシリーズは特にサウンドのバランスがよく洗練されており、ロスレス対応など演奏された音楽の原音再生と真面目に向き合っている印象を受けます。どんなジャンルの音楽にもよくフィットするヘッドホンだと思います。いまSolo 3を愛用している方も一聴の価値ありです。
Solo 4は、ユーザーが様々な場所にベストなサウンドを持ち歩けるポータブルヘッドホンであることも大きな強みです。ジョギングやジムなどアクティブに身体を動かしながらでも使えます。本機はBeatsによる新世代の定番モデルになると思います。
筆者紹介――山本 敦 オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。
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