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求む・伸びる研究者!「覚醒」2年目の狙いを産総研に聞く

ASCII.jp / 2024年5月1日 14時0分

覚醒プロジェクト公式サイト

AIに加え、生命工学、材料・化学、量子も対象に

——覚醒プロジェクトは昨年に続き今年で2年目となりますが、改めてどのようなプロジェクトなのか、ご説明いただけますか。

加藤 覚醒プロジェクトは、若手研究者による独創的な発想を本人の手によって具現化することを目的とした、ディープテック研究開発を推進するプロジェクトです。

具体的には、AI、生命工学、材料・化学、量子の4分野において、若手研究者から研究開発テーマを募集します。採択された研究実施者には、給与と研究費と合わせて300万円程度を支援するほか、各分野のトップクラスの研究者がプロジェクトマネージャー(PM)として伴走し、研究テーマの実現に向けた助言を行ないます。

産総研が保有する最先端の研究施設を無償で利用できる点も特徴です。AI向けのスーパーコンピューターである「AI橋渡しクラウド(ABCI)」や、データ駆動型マテリアル開発技術基盤である「マテリアル・プロセス・イノベーション(MPI)」プラットフォームなどが、300万円の支援とは別枠で利用できます。

産総研企画本部の加藤 大氏

——昨年度からの変更点について教えてください。

中島 2023年度はAIおよびバイオインフォマティクスが対象で、情報系の研究テーマに絞って募集していました。これに対して本年度は分野を拡大し、AI、生命工学、材料・化学、量子の4分野が対象となります。このうち生命工学については、昨年度のバイオインフォマティクスから幅を広げて、情報系が絡まない研究テーマも対象となりました。

対象分野の拡大に併せて、研究実施者の採択人数も増やします。昨年度は11グループを採択しましたが、今年度は24人の採択を予定しています(2024年度は個人のみ応募可能)。併せてスーパーバイザー(SV)、PMも増員し、昨年度の7人から13人となりました。今年度も各分野で活躍するトップクラスの先生方にご協力をいただいています。

さらに手厚くなったサポートも今年度の特徴です。新たに、産総研の職員が「受入れ研究者」として研究実施者に1人ずつ付き、研究をサポートする体制を整えました。従来からのPMによる伴走や助言に加えて、具体的な実験の進め方や産総研の設備の使い方など、きめ細かな指導をマンツーマンで提供する予定です。

研究実施者にPMによる伴走に加え、産総研の受入れ研究者によるサポートを提供する(応募要項より)

——対象分野を4分野に拡大する狙いについて、教えていただけますか。

中島 昨年度は初回ということでホットなAI分野からスタートしましたが、覚醒は当初から「ディープテック」を掲げているとおり、幅広い分野での社会課題の解決を目指しています。

分野拡大によって特に期待しているのが、「異分野融合」です。多くの分野のPMと研究実施者が集まり、「覚醒」という1つのプロジェクトの中に入ると何が起きるのか。まずは試してみようというのが、分野を拡大する大きな狙いです。

一方で、異分野融合の成果は、おそらく1年ですぐに出るわけではないとも考えています。この先も積み重ねていく必要があると思いますが、まずは異分野融合を目指すプロジェクトとして、新たな「覚醒」がスタートした。こう捉えていただければと思います。

産総研企画本部の中島 礼氏

——「異分野融合」が2年目の覚醒のキーワードというわけですね。こうした人材育成プロジェクトはめずらしいのでしょうか。

大西 具体的なテーマが設定されている分野横断型のプロジェクトは他にもあると思いますが、自由なテーマで応募できて、かつ若手を対象とした覚醒のような公募プロジェクトはあまり例がないのではないでしょうか。

加えて、私としては「ダイバーシティ」も重要なポイントだと考えています。大学でも企業でもそうですが、1つの研究組織に属していると、その組織での常識や進め方しか知らないのが普通です。いろいろな研究組織や異なる分野から研究者が集まってくると、「こちらの常識はあちらの非常識」といったことが実は多くあることに気がつくでしょう。さまざまな考え方を取り入れることで、研究が一気に加速することもあります。異分野融合によって、そうした可能性がますます高まるのではないでしょうか。

産総研人工知能研究センター 社会知能研究チーム長の大西正輝氏

——今年度の4分野を選定したポイントについて教えてください。

加藤 やはり今の時代、AIとまったくかかわりがない研究分野というのは少ないと思います。AIが接着剤となって、他の分野と結びついていく。私自身、これまで材料や生命工学の研究に従事してきましたが、かつてAIはどちらかというと遠い存在でした。今はAIが中心となることで、材料や生命工学といった他の分野がより身近な存在になってきているとも感じています。産総研のMPIプラットフォームも、そうした時代において非常に理にかなった設計になっています。必ずしもAIを使った研究だけが募集対象ではありませんが、AIと相性のいい分野という点はポイントとして言えると思います。

研究者同士がお互いに高め合う環境が「覚醒」の魅力

——初年度である2023年度の覚醒プロジェクトも2024年7月まで同時並行で進んでいます。現在の進捗はいかがでしょうか。

大西 まだ数カ月ですので突出した成果が出ているわけではありませんが、すでにプレプリントをarXivに投稿したり、機械学習モデルを公開したり、国内の学会で発表したり、といった研究実施者も出てきています。そうした動きが他の研究実施者のいい刺激になって、7月の最終成果報告に向けて順調に進んでいる印象です。

加藤 4月上旬には小田原で1泊2日の中間報告会を開催しました。研究実施者のみなさんの、とてもいきいきとしている姿が印象的でした。特に覚醒ならではの光景だなと思ったのが、研究を進める上でうまくいったことだけでなく、うまくいっていないことも共有していたことです。学会ではなかなか見られないことで、個人的には衝撃を受けました。それに対してPMや他の研究実施者からアドバイスが飛び交い、非常に活発で建設的な機会だと感じましたね。いち研究者の立場で見ると、率直に言ってうらやましい環境だなと思います。

中間報告会(写真上)やABCI見学会(写真下)など、研究実施者が参加するイベントを通じて交流を図れるのも「覚醒」の魅力だ。

——研究実施者とPMの一対一の関係だけでなく、プロジェクト全体で高め合う雰囲気があるのは大きな魅力ですね。

中島 イベントだけでなく、覚醒プロジェクトの関係者が参加するSlackでも、ABCIを使う上でのコツを誰かが投稿したり、分からないところを聞くと誰かが答えてくれたり。最後にはこの方法でできた、という投稿があったりして、すごくいい雰囲気が生まれつつあります。研究実施者のバックグランドはそれぞれ多様ですから、互いに得意なところを教え合い、補い合うことができる点は1つの魅力になっていると思います。

加藤 同世代における自分の立ち位置を知ることができるのも、「覚醒」ならではの良い点です。それが自信につながるかもしれないですし、もっとがんばらなければと思うことになるかもしれませんが、学会や研究室とは違った視点で自分を見つめることができるのは、研究者として成長していく上で有効ではないでしょうか。

大西 同じ大学に所属していても、学部や研究室が違えばお互いをまったく知らないことが多いですよね。それまでコミュニケーションがなかったけど、覚醒のイベントを通じて親しくなって、情報交換するようになったり、大学でも会うようになったりした、という話を耳にします。そういったコミュニケーションを重ねていくと、何かいい成果に現れてくるのではないかと期待しています。

——2024年度の覚醒プロジェクトに応募を検討している方へ、メッセージをお願いします。

中島 覚醒プロジェクトの研究実施期間は9カ月間と短いですが、終了後も卒業生がつながるネットワークを構築して、年単位でつながっていきます。長い研究者人生において財産となる人的なネットワークを広げていくことは、大きな価値になるはずです。何かを成し遂げる体験を一緒にしたい方、アイデアはあるのになかなか研究を広げられずにいる方には、ぜひ積極的に応募してほしいと思います。

加藤 研究者の中には、大学などの所属組織で取り組んでいる研究とは違うテーマや、違った視点にも興味を持っている方も多いのではないでしょうか。「覚醒」はそれをカタチにできるよい機会になるはずです。そうした方にぜひ応募してほしいですね。若手らしく、大胆で柔軟な発想を歓迎します。

大西 覚醒プロジェクトは、やりたい研究があるけどどうしようかな? と迷っている方を後押しするプロジェクトです。応募して採択されたらそれが大きな自信となって、よしちょっとかんばってみよう、と思える。そうした仕組みです。「挑戦したい」「自信を持ちたい」「背中を押すと伸びるぞ!」という方に、ぜひ応募していただきたいですね。

覚醒プロジェクト募集概要

応募締切:2024年5⽉7⽇(火)12:00 応募対象: 大学院生、社会人(大学や研究機関、企業等に所属していること) ※2024年4月1日時点で、学士取得後15年以内であること。 対象領域: ・AI ・生命工学 ・材料・化学 ・量子 研究実施期間: 2024年7月1日(月)〜2025年3月31日(金) ※9カ月間 支援内容: ・1研究テーマあたり300万円の事業費(給与+研究費)を支援 ・AI橋渡しクラウド(AI Bridging Cloud Infrastructure, ABCI)やマテリアル・プロセスイノベーション プラットフォーム(Materials Process Innovation, MPIプラットフォーム)などの産総研保有の最先端研究施設を無償利用 ・トップレベルの研究者であるプロジェクトマネージャー(PM)による指導・助言 ・事業終了後もPMや参加者による情報交換の場(アラムナイネットワーク)への参加 応募・詳細: 覚醒プロジェクト公式サイト

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