中国乗り継ぎの飛行機で帰国が危ぶまれる事態に!? GWに体験したOTA経由の格安航空券トラブルとは
ASCII.jp / 2024年5月8日 7時30分
海外旅行の航空券が高いです。
のっけから愚痴になりますが、円安や原油高といった要因もあり、日本発着便の航空券は近年、高止まり状態。自分は極力旅費を抑えるため、航空券比較サイトのスカイスキャナーやGoogle フライトで安いフライトを探す毎日です。
そんななか、比較的安くて魅力的に見えるのが、中国系の航空会社を使って中国乗り継ぎで目的地へと向かう航空券です。それもLCC(ローコストキャリア)ではなく、手厚いFSC(フルサービスキャリア)なのに数万円安いという驚きの価格。例えばヨーロッパ便では他社便が10万円台後半や20万円超えのところ、中国系だと10万円前半。バーゲンなどのタイミングによっては10万円を切るほど安いフライトが見つかることもあります。
そこまで安いのであれば「中国系の航空会社をどんどん使って海外旅行へ!」……といきたいところですが、簡単には飛びつけない懸念事項がふたつ頭をよぎります。ひとつは乗り継ぎに際しての「中国ビザ」の問題。もうひとつは中国系航空会社の格安チケットの多くがOTA(オンライン・トラベル・エージェント)、つまり「代理店販売のチケット」の購入になるという問題です。
それがどの程度厄介なのか。中国系の航空会社「中国東方航空」を使って、日本からバングラデシュ・ダッカまでのチケットをOTAの「Trip.com」で購入した際、私の身に実際に起きたトラブルを交えて、レポートしたいと思います。
(次ページ:そもそも「乗り継ぎビザ免除制度」とは?)
特定の条件を満たせばビザ免除で中国に入国できる 「乗り継ぎビザ免除制度」について
現在、中国へ入国する際にはビザが必要です。以前に本連載の記事(「中国・深センへ香港空港からフェリーで入国&中国新幹線で出国してみた」)でもお伝えしましたが、深センのように"到着時にビザを取得できるケース"や、海南島での入境のように"特別にビザが不要"というケースはあるものの、基本的には、日本で事前にビザを取得してから中国へ入国する必要があります。
とはいえ、数時間での乗り継ぎのためにビザを取得するのは、手間も費用もかかって面倒です。そこで、中国乗り継ぎで第三国へと旅立つ場合に限り、「乗り継ぎビザ免除制度」が用意されています。
ただし、この乗り継ぎビザ免除を利用するためには、ふたつの条件をクリアする必要があります。ひとつは、上にも記したとおり第三国へと抜ける乗り継ぎである場合。例えば、日本の羽田空港から出発して中国・上海の上海浦東国際空港に到着したとします。その後、上海から日本以外の国や地域(例えば韓国のソウルや台湾の台北など)へのフライトで移動すれば、この条件を満たしていることになります。ちなみに香港やマカオは、第三国としての対象となります。 ちなみに、日本へ戻るには必ず第三国を経由した後で、ということになりますので、羽田から来た人が上海を経由し、そのまま羽田以外の日本の空港へと移動するというルートは、日本と中国の往復になるため利用できません。
A国→中国→A国 ビザが必要 A国→中国→B国→A国 ビザが免除
ふたつめの条件は、乗り継ぎの際に中国へ入国をしないと乗り継げないケースの場合。一般的な海外旅行での乗り継ぎの場合、預けた荷物を乗り継ぎ時にピックアップしたり、到着時にターミナルを移動したりといったことはあまりありませんし、現地の制限エリア内で搭乗手続ができる場合などでは、わざわざ入国する必要がありません。預けた荷物を受け取って再度チェックインし直す必要があったり、空港内の移動でどうしても入国が必要となってしまう場合にのみ、「乗り継ぎビザ免除制度」が有効になります。入国する必要がない人をわざわざ入国させないというわけです。
乗り継ぎビザ免除制度 (1)24時間乗り継ぎビザ免除
というわけで中国経由で第三国へと乗り継ぎをする際、入国する必要がある場合のみ、乗り継ぎビザ免除制度が利用できます。ですが、この乗り継ぎビザ免除制度も「24時間乗り継ぎビザ免除」と「72/144時間乗り継ぎビザ免除」の2種類があり、さらに複雑です。
「24時間乗り継ぎビザ免除」は、中国に到着してビザ免除を申請後、24時間以内に第三国へと出国する場合に利用できます。基本的には国際線が到着する中国の空港で利用可能です。メリットとしては中国国内での移動に制限がなく、例えば日本から中国・北京に到着し、北京から国内線で上海へと移動したのち、さらに第三国へと飛び立つといったフライトでも利用できます。
乗り継ぎビザ免除制度 (2)72/144時間乗り継ぎビザ免除
いっぽう「72/144時間乗り継ぎビザ免除」は、中国に到着しビザ免除を申請後、72時間(3日間)もしくは144時間(6日間)まで中国に滞在して第三国へと出国する場合に利用可能です。期間以外で大きく違うのは、利用できる空港が限られていることと、中国内で移動できるエリアが限定されていることがあります。
利用できる空港は北京首都国際空港、北京大興国際空港、上海虹橋国際空港、上海浦東国際空港、深セン宝安国際空港など。日本発着便が利用する空港は基本的に対象となっています。ちなみにこれらの空港は144時間の滞在が可能な空港。長沙黄花国際空港と桂林両江国際空港、ハルビン太平国際空港の3つは72時間までの滞在が可能となっています。
移動できるエリアは、北京の空港なら北京市、天津市、河北省。上海の空港なら上海市、江蘇省、浙江省。深センの空港なら広東省、といった具合に、その空港周辺のエリアとなっています。そのため、「24時間乗り継ぎビザ免除」のように、北京に到着して上海から出国というルートでは利用できません。移動可能な同じエリア内の空港から出国する必要があります。
そのかわり、最長で144時間(6日間)まではビザ免除で中国に滞在できるので、事前にビザを取得しなくても、現地で商談や観光が可能な制度となっています。
(次ページ:出入国申請カウンターで緊張する旅人たち)
必要なものが揃っていれば出入国申請はスムーズ (慌てず、騒がずがオススメ)
今回の旅で筆者がバングラデッシュ旅用に購入した、中国東方航空のフライトは、下記のスケジュールです。中国では国内線を使って移動するため、「72/144時間乗り継ぎビザ免除」は使えず、「24時間乗り継ぎビザ免除」を利用することにしました。
■往路(予定) 4月25日:MU790 羽田空港(日本)17:35発→北京大興空港(中国)20:40着 4月26日:MU5720 北京大興空港(中国)06:55発→昆明長水空港(中国)10:20着 4月26日:MU2035 昆明長水空港(中国)13:05発→ダッカ・シャージャラル空港(バングラデシュ)13:35着
■復路(予定) 5月1日:MU2036 ダッカ・シャージャラル空港(バングラデシュ)14:55発→昆明長水空港(中国)19:30着 5月1日:MU2766 昆明長水空港(中国)22:55発→南京禄口空港(中国)01:50着 5月2日:MU775 南京禄口空港(中国)08:00発→成田空港(日本)10:20着
往復共に、中国到着から24時間以内に出国する便を選んでいます。というのも、空港でのチェックイン時、係員に「24時間乗り継ぎビザ免除」であることを説明するなら、そのほうが伝わりやすいと思ったからです。
私の心配をよそに、羽田空港でもダッカ・シャージャラル空港でも、通常のチェックインと同じく作業はスムーズで、ビザについては特になにも聞かれませんでした。中国乗り継ぎの際のビザ免除制度について、中国系航空会社就航地ではかなり浸透しているようです。
到着空港での申請もかなりスムーズでした。これは空港によっても微妙に違いますが、中国の北京大興空港と昆明長水空港では、入国審査の手前に乗り継ぎビザ免除の申請カウンターがあり、まずはそこで申請をします。
その際の注意点としては、飛行機内で配られる入国カードではなく、乗り継ぎビザ免除の申請カウンターの近くでもらえる、「ARRIVAL CARD FOR TEMPORARY ENTRY FOREIGNERS」と書かれた入国カードを記載して利用すること。
入国カードを記入したらカウンターへ向かい、eチケットの控えをプリントアウトしたものとパスポートを一緒に提出します。ちなみにカウンターは北京大興空港では整理券方式で、昆明長水空港では整列方式でした。
ビザ免除の申請が完了すると、パスポートにシール、もしくはスタンプが押されます。あとは入国審査のカウンターへ向かって通過すれば、中国への入国手続きは終了です。思っている以上に乗り継ぎビザ免除申請のハードルは低く、快適でした。
北京大興空港はヨーロッパへの乗り継ぎに使う人が多いのか、申請者も多くカウンターで順番が来るまで30分ほど待ちましたが、昆明長水空港では申請者が数人しかいなかったので10分ほどで完了しています。
余談ですが、北京大興空港では若干混雑していたこともあり、係員が申請者たちに「ベンチで座って待つように」と伝えるも、カウンターの前で大勢がたむろってしまう状態に。そのうち、ある申請者が係員にしつこく質問して座らずにいたところ、係員が急に大声で怒りだし、申請者の用紙を取り上げてビリビリに破き「あなたたちはここでは申請できない!センターへ行け!」と追い返されるといった一幕がありました。
それを見た旅行客の間にはピーンと緊張感が走り、その後は皆、おとなしくベンチに座って待ち始めます。ビザ免除の申請自体はスムーズですが、やはり中国は中国だなと思った瞬間です。
(次ページ:中国便が欠航になり日本に帰れない! どうする……!?)
代理店(OTA)経由でチケットを取ると トラブル時に大混乱となる場合も
もうひとつの懸念事項は、代理店販売で購入できるチケットということ。これが今回大きなトラブルを招く結果となりました。まず、当初予定した復路便のうち、中国国内を移動するフライト「5月1日:MU2766 長水国際空港(昆明)→禄口国際空港(南京)」が欠航となったことが混乱の始まりでした。
飛行機の欠航はあることなので仕方がありません。しかし中国東方航空が、旅行予約サイト「Trip.com」を経由して提案してきたのが「5月1日:MU5877 長水国際空港/17:00発→南京禄口空港/19:35着」の振り替え便でした。この便だと、バングラデッシュのダッカ・シャージャラル空港発の便は、中国の昆明長水空港に19:30到着となり、そこから搭乗すべき昆明長水空港発の飛行機は、約2時間半前に飛び立っています。
ダッカ・シャージャラル空港から成田空港まで、通しで購入しているチケットなのに、そもそも乗り継げない便を提案してくること自体がおかしな話です。中国東方航空の問い合わせ窓口で確認したところ、同社では欠航時の振り替え便については、前後の乗り継ぎを調べず自動振り替えで対応し、もし問題があればそのときに再度対応するシステムにしているとのこと。
航空会社都合の欠航で利用者がわざわざ手間をかける必要があること自体、納得はいきませんが、とりあえず航空券はTrip.com経由で購入しているため、Trip.comに連絡して、振り替え便のアレンジをお願いすることとしました。……が、ここからが大変でした。
最初に問い合わせると「5月5日の便しか空きがない」との回答。そこでTrip.comに提案された「5月5日 ダッカ発-昆明経由-成田着」という便で変更をお願いします。予定より4日遅れの便ですが、自分としても乗り継ぎが1回減るので、旅程的にはラクです。
ところが変更をお願いしてから数時間後、中国東方航空側から「変更はキャンセルになった」との連絡が来ました。これを皮切りに、Trip.comの提案通りに変更をお願いしては、中国東方航空側にキャンセルされ続ける、といった地獄の流れが始まります。
■実際に起きたフライト変更の流れ
変更1回目:5月5日発の便を申請(ダッカ発-昆明経由-成田着) ↓ 中国東方航空側でキャンセルの連絡あり ↓ 変更2回目:5月5日発の便を申請(ダッカ発-昆明経由-南京経由-成田着) ↓ 中国東方航空側でキャンセル。変更は当初の搭乗日から3日以内が条件のため。 ↓ 変更3回目:5月2日発の便を申請(ダッカ発-昆明経由-南京経由-成田着) ↓ 5月2日発の昆明→南京の便が欠航でキャンセル。再度、乗り継げない便を提案される。 ↓ 変更4回目:5月3日発の便を申請(ダッカ発-昆明経由-南京経由-成田着) ↓ 変更をお願いした直後にTrip.comから連絡、「問い合わせしているうちに埋まった」とキャンセル ↓ 変更5回目:5月4日発の便を申請(ダッカ発-昆明経由-南京経由-成田着) ↓ フライト確定
結果、フライトルートは当初と同じでありながらも、予定から3日遅れのフライトとなりました。とはいえ、さすがに3日後の便はちょっと納得ができません。旅行中はGWの前半で中国東方航空の窓口が営業していなかったこともあり、Trip.comとのやりとりを重ねて5月4日の便が確定した後、あらためて中国東方航空に連絡をしてみたところ、「このケースであればルートを変更し、日本に直接帰国する便への振り替えができた可能性もあった」との回答。(ただしこの回答は後日、「間違って伝えた可能性がある」と別の担当者から言われました)
(次ページ:終わらない申請→キャンセル地獄が続く)
ひとまず中国東方航空側は、「Trip.comから別ルートでの変更申請をするように伝えてくれ」と言われたため、またまたTrip.com側へ連絡し、「5月1日 ダッカ発-昆明経由-上海経由-成田着」の便で、再度、変更申請をお願いします。
予定通りに帰国できると安心していたところ、出発日前日の4月30日に、変更申請がキャンセル扱いになったのです。ここで中国東方航空に連絡すると、「Trip.com側からは変更の申請は来ていない」との回答。そのことをTrip.com側に確認すると「中国東方航空に何度連絡しても電話がつながらなかった」と言って話しになりません。
申請する度にフライトはキャンセルとなり 旅先で途方に暮れる……
ここまでくると白ヤギさん黒ヤギさんのお手紙状態で、心が折れそうになりながらも再度、中国東方航空へ連絡します。すると「担当部署の電話はそんなに混雑していないので、再度Trip.comから連絡するように。中国東方航空側からも確認はしてみます」とのこと。
この時点で翌日となる5月1日出発は時間的にも厳しくなり、「5月2日 ダッカ発-昆明経由-上海経由-成田着」の変更申請をお願いすべく、「とにかく中国当方側の連絡先は混雑していないそうなので、かならず電話で連絡してほしい……」とTrip.comへと伝えます。
ですが、結局、この変更申請もキャンセルに。聞けば、すでに5月4日の「ダッカ発-昆明-南京-成田着」で確定してしまったため、無料での変更はできないとのこと。これ以上、やりとりし続けても進展がないと判断し、最終的には5月4日の「ダッカ発-昆明経由-南京経由-成田着」で、日本には5月5日に帰国しました。
実はTrip.comとのやりとりの最中、航空会社都合の欠航のため、復路をキャンセルすればそのぶんの料金は戻ってくるとも提案されています。そのため、当初のルートは諦め、あらためて別ルートを購入して帰国するという手もありました。ですがGW中ということもあり、航空券は通常よりも割高ですし、航空会社のマイルも空きがありません。さらに戻ってくる金額は調べないとわからないという仕様。しかも、変更を確定してしまうと、無料キャンセルできなくなるので金額がわからないそうです。振り替え便が取れるなら早く押さえないと埋まってしまうが、振り替え便を取ってしまうとキャンセルの金額がわからない……。
割高の航空券を買うにしても、こちらの負担額が把握できない状態であれば、うかつにキャンセルもできません。代理店経由での購入とはいえ、乗り継げない便を提案されたり、キャンセルされるフライトの変更を提案したり、キャンセル時の返金額を教えてもらえないなど、ちょっと中国東方航空もTrip.comも、システム的に厳しいなという感じです。
唯一、良かった点としては、Trip.comへの問い合わせは公式アプリから無料で通話ができることと、中国東方航空への問い合わせは、楽天モバイルのRakuten Linkを使っていたのでやはり無料だったということでしょうか。以前はこういった問い合わせを有料の国際電話でかけ続けることになり、その通話料だけでもバカ高い出費となっていたため、今は良い時代にはなりました。
また、今回は乗り継ぎビザ免除が使える帰国便に振り替えられたので良かったですが、もし振り替え便に全然空きがなく、ビザがないと入国できないような便しかなかったら、たとえ無料での振り替えでも利用できません。
疑心暗鬼になりながらも 予定より3日後のフライトで無事帰国!
というわけで、「中国系航空会社の乗り継ぎ便を代理店経由で購入しビザなしで中国に入国」するのは、結構リスキー。時間に余裕がある個人旅行や、なにかトラブルがあっても対処できる旅慣れた人ならまだ大丈夫ですが、時間が決まっているビジネスでの利用はちょっと厳しいかも……といった感じです。自分の場合は、たぶん、安さに負けて、懲りずにまた使ってしまいそうですが。
この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama)
世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。
- 「旅人ITライターさとる」(IT系メイン)
- 「さとる・たべる・あそぶ」(旅行・エンタメ系メイン)
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