Sonos初のプレミアムヘッドホン「Sonos Ace」登場、サウンドバーとの連携も面白い
ASCII.jp / 2024年5月21日 22時0分
Sonos Japanは5月21日、ブランド初のパーソナルオーディオ製品となるワイヤレスヘッドホン「Sonos Ace」を発表した。カラーはブラックとソフトホワイトの2色展開。直販価格は7万4800円。国内では6月末の発売を予定している(先行予約は6月7日に開始)。
拡張性が高く機能も多彩なネットワークスピーカーで知られるSonos。(意外に思う人もいるかもしれないが)そのラインアップにはいままでヘッドホンがなかった。ユーザーから要望を長年もらっていたという。その声に応えるために、こだわりぬいた緻密な調整、細部までこだわったデザイン、そして使いやすい機能を提供する製品を開発。Sonosらしさを存分に感じさせる製品に仕上げたのがSonos Aceなのである。
ホームシアター用途を想定した、独特のサウンドバー連携機能
製品カテゴリー的には、Sonos Aceは人気のあるアクティブノイズキャンセリング機能付きのBluetothヘッドホンだ。ただし、そこはSonos。独自の取り組みを取り入れている。Dolby Atmosなど空間オーディオへの対応を前面に打ち出し、センサー(IMU:慣性計測装置)でリスナーの姿勢や顔の向きを認識するダイナミックヘッドトラッキング機能、そして2024年後半に提供する予定の新機能「TrueCinema」(後述)などを搭載し、ホームシアターとの相性が抜群だ。
特に強みとなるのが、Sonos製品とのエコシステムだ。自社のサウンドバーと連携する独自機能で差別化を図っている。「Sonos Arc」(実売13万円台前半)と連携させれば、スピーカー再生とヘッドホン再生がシームレスにつながり、部屋の環境に合った高度なサラウンド再生もできるようになるというのが触れ込みだ。
実はSonos AceにはBluetooth接続機能とは別にWi-Fi接続機能が内蔵されていて、Sonos AceとSonos Arcは1対1の接続ができる。この機能のポイントは、Sonos ArcがSonos Ace専用の送信機として機能し、サラウンド再生時の計算処理を補ってくれることだ。つまり、映画鑑賞時にSonos Arcを間に入れると、Sonos Ace向けに最適化したサラウンド信号を受信できるようになるのだ。
インターネット上の映像や音楽ストリーミングを楽しむデバイスと言えば、まず最初にスマートフォンを思い浮かべる人が多いだろう。しかし、最近ではテレビ単体でもNetflixやAmazon Primeビデオなどの動画ストリーミングサービスを再生できるのが普通になってきた。となれば、その音を高音質なシステムで楽しみたいというニーズも当然広がっていくだろう。
テレビの音を臨場感あふれるサウンドで楽しむならサウンドバーが手軽だが、家族が寝静まった深夜に一人で映画を観るケースでは、リビングであまり大きな音を出せない。
そこで登場するのがSonos AceとSonos Arcの連携機能だ。テレビとHDMIでつながったSonos Arcでテレビの音をSonos Aceに飛ばし、様々なコンテンツを楽しめる。テレビから飛ばせる音声は、テレビが内蔵するストリーミングサービスだけでなく、テレビ放送やBlu-ray Discプレーヤーなど種類を問わない。音をサウンドバーから出すか、それともヘッドホンにするかの切り替えも、右側のハウジングにあるマルチファンクションボタン(コンテンツキー)を長押しするだけと簡単だ。
サラウンド再生のフォーマットとしては、映画だけでなく音楽でもDolby Atmosが注目を浴びている。Apple Musicなどの音楽ストリーミングサービスも、Dolby Atmosでのコンテンツ配信を始めているが、そのコンテンツの魅力を最大限に楽しむためには対応した機器同士を適切な設定でつなぐ必要がある。また、最近ではテレビもBluetooth送信機能を搭載するようになっているが、その音声をDolby Atmosで楽しむことは難しい。
そこでSonosが考えたのは、必要な変換処理をサウンドバーに任せる方法だ。Sonos Arcを使えば、一般的なワイヤレスヘッドホンでは難しい高度な計算処理も可能だ。2chのソースであっても、7.1.2chの音声信号にアップミックスできるので、サウンドに高い臨場感を出せる。
さらに相互接続で使用状況もやり取りすることで、より環境に合った再生が可能となっている。具体的には、Sonos Aceで取得したIMUセンサーの情報(ヘッドトラッキング情報)を加味した処理とすることで、リスナーの態勢や画面に対する顔の向きにあった再生音にする。その結果、ヘッドホン再生でありながら、目の前にあるスピーカーから音が鳴っているのと変わらないと感じるほど、違和感のない空間オーディオ再生が可能となる。
実際にデモも体験したが、前方にあるサウンドバーが奏でる広がりのある再生をヘッドホンを装着した状態でも同様に感じることができた。
Sonosはサウンドバーを始めとした、サラウンド製品にも最近力を入れている。そして、強力な機器連携はSonos製品の魅力のひとつだが、それがサウンドバーとヘッドホンでもその伝統が継承されているのが面白い。
さらに、今後のアップデートで提供される「TrueCinema」では、これらのサウンドバーで再生したテストトーンをSonos Aceの内蔵マイクで計測することで、部屋の環境(部屋の音響特性)に合った自然なサラウンド再生ができるようになるという。Sonosは自動補正機能として、部屋の環境に合わせて最適なスピーカー再生をする「Trueplay」を提供している。TrueCinemaはそのサラウンド再生版とのことで、Sonos Aceで再生するサウンドに外部感、広がり感、没入感を高める効果があるという。なお、この機能はSonos Arcでレンダリングした結果を付加するもののため、Bluetooth接続では利用できない。
人間は無意識の状態でも、部屋に入った瞬間にそこが狭い空間かそれともオープンな空間かなど環境を認識できる。しかし、ヘッドホンではこうした部屋の性質(文脈)が失われてしまい違和感につながる。これを解決する技術がTrueCinemaである。設定も簡単で1分間程度のテストを一度するだけで済むという。
ちなみに、Sonos Aceが接続可能なサウンドバーは、発売時点ではSonos Arcのみだが、数ヵ月以内に「Sonos Beam(Gen 2)」や「Sonos Ray」なども対応させる計画だという。
aptX Losslessにも対応、解像感の高いサウンドも魅力
Sonos Aceはヘッドホンとしてのつくりも高品位になっている。ドライバーは直径40mmのカスタム設計となっており、映画や音楽制作の分野で活躍する著名クリエイターと協力し、1000時間以上のテストを経てサウンドチューニングを煮詰めたという。本体には左右合計8つのマイクを搭載し、そのうちの6つがANC用、残りが通話用となっている。周囲の音を聞くアウェアモード(ヒアスルー)も利用できる。
Bluetoothはバージョン5.4に対応。Snapdragon Sound対応のヘッドホンとなるため、コーデックはSBCやAACに加え、aptX AdaptiveやaptX Lossless(CD品質)にも対応している。
また、USB-Cケーブルを用いた有線接続も可能で、3.5mm端子のアナログ入力をUSB-Cに変換するケーブルやデジタル入力で両端がUSB-Cのケーブルも付属する。USBーCケーブルは充電にも利用でき、バッテリー駆動時間は最長30時間。3分の充電で3時間再生の急速充電も利用できるそうだ(完全充電は2時間)。
ちなみに、スマホなどで再生した音をDolby Atmosで楽しめるかどうかは、再生環境(端末と配信サービス)に依存する。サービス側はバイノーラルレンダリングまたは端末側でデコードできるDolby Atmosの信号(ビットストリーム)が求められるそうだ。
装着感や外観にもこだわっている。低反発素材で形状を記憶するメモリーフォームタイプのイヤーパッドはヴィーガンレーザー仕上げで質感が高く、簡単に交換できる仕組みとなっている。塗装はマットで高級感のある質感を提供する。伸縮する金属製のアームはこだわりで、ヒンジ部がイヤーカップ内に収納されるなど使い勝手の良さととデザイン性の高さがハイレベルに融合している印象だ。さらに内側は対比色になっており、装着する向きを分かりやすくしている。ヘッドホンの着脱に連動して自動で再生/一時停止が切り替わる、装着検出機能も搭載する。キャリングケースの形状もシンプルかつスリムで旅行かばんなどに入れやすい。
ボタン類も上下スライドで音量調整、中央のプッシュで再生/一時停止、長押しでサウンドバー/ヘッドホン再生の切り替えができるコンテンツキーの搭載など考え抜いた内容になっている。重量は312gだ。
数年前から投入のうわさがあったものの、なかなか製品が出なかったSonosのヘッドホンだが、登場した製品はSonosらしい特徴をふんだんに取り込んだ、プレミアムヘッドホンとなった。
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