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スペインに、あの「最高の豚肉」を食べに行く

ASCII.jp / 2024年5月22日 7時30分

 みなさんは"最高の豚肉"ってご存じでしょうか? グルメマンガの「美味しんぼ」単行本83巻に収録されているお話で、大成しようと願掛けで50年「肉断ち」をしていた日本画家が、「最高の豚肉」を食べるためにスペインに訪れるという有名なストーリーです。

 もともとスペインはイベリコ豚の生ハムなどの豚肉料理が名物ですが、このマンガで紹介された豚肉料理が実に美味しそうなんですよね。しかも、作中で紹介されたレストラン「Restaurante Jose Vicente(レスタウランテ・ホセ・ビセンテ)」や料理は架空のものではなく、実在しているんです。実は10年ほど前にそのことを知って、毎年のモバイルイベント「MWC Barcelona」の取材でスペインに訪れる度に、いつか行ってみたいと思っていたのです。

 今年、ついにその「最高の豚肉」を食べに行くことができましたので、今回はその道中をレポートします。

筆者の愛読書「美味しんぼ」に描かれているお店に行ってきました。ちなみに写真の単行本は店員さんが貸してくれました(「美味しんぼ」小学館・ビッグコミックス 作/雁屋哲  画/花咲アキラ)

スペインを横断して地方都市アラセナへGO! 移動は格安ライドシェアの「ブラブラカー」で

 最高の豚肉を使った料理を提供しているホセ・ビセンテがあるのは、スペイン南西部にあるアラセナという街。毎年取材で訪れているバルセロナはスペイン北東部にあるので、地図的には直線距離で約830kmも離れた真反対に位置していて、なかなかに遠い。これが存在は知っていても訪問できなかった理由のひとつです。

バルセロナからは直線距離で約830kmも離れており、ポルトガルのほうが近い

 アラセナは地方都市で空港はなく、アクセスは闘牛やフラメンコの本場として有名なセビリアがゲートウェイです。前回、本連載の記事(激安で欧州旅がしたいなら、キングオブLCC「ライアンエアー」の“お作法“を知っておこう!)で、セビリアをルートに入れていたのはそのため。

ロンドンからわざわざセビリア空港経由でバルセロナへ向かったのは、「最高の豚肉」を食べるためでもあります

 実際、セビリアからの移動がかなり面倒で、中心地からアラセナまでは約75kmもあります。公共交通機関を使う場合はバスしかなく、しかも訪問当時は1日1往復しかありません。さらにバスの運行する時間帯も悪く、飛行機の時間やホセ・ビセンテの営業時間(13時〜17時/火曜定休/ディナーは予約時のみ)を考えると、公共交通機関だけの移動では2泊以上が必要です。

 そのほかの手段としてはレンタカーやタクシーで、となりますが、レンタカーの場合は大好きなお酒が飲めませんし、タクシーでは割高になってしまいます。そこで今回使ったのが、ライドシェアの「BlaBlaCar(ブラブラカー)」です。

ヨーロッパの相乗りマッチングサービス「BlaBlaCar」

 (次ページ:ブラブラカーってどうやって利用するの?)

ドライバーを募るのではなく "相乗り"相手を募るサービス

 一般的にライドシェアというとUberやLyft、Grabのように、利用者側がアプリを使って「A地点からB地点まで乗せて」と乗降車する地点をリクエストして、それにあわせてドライバーをマッチングするサービスです。

 BlaBlaCarはそうではなく、ドライバー側が先に「●月●日●●時に、A地点からB地点まで行くので同乗者を募集」という情報を掲載し、それを見て利用者が申し込むというスタイル。いわゆる昔からある“相乗り”で、古参の旅人には、"ライドシェア"というとこちらのスタイルをイメージする人が多いかも。

 日本にも「notteco」というドライバー側は非商用の相乗りマッチングサービスがありますが、BlaBlaCarはドライバー側が報酬を受けられる商用サービス。フランスでスタートし、現在は欧州各国でサービスを展開しています。

 BlaBlaCarのサイトで、セビリアとアラセナのルートを検索してみると、1日に何人かが相乗り募集を掲載しているのを確認。そこで日本にいるうちに会員登録をしておきました。ただしこれがちょっと厄介で、日本の電話番号では登録できませんでした(ネット上では日本の電話番号でも登録できたという情報もあるので、こちら側の手違いかもしくはシステム変更があったのかも)。

日付と出発地、目的地を入力して検索すると、該当日にそのルートを登録しているドライバーがヒットする

 筆者はひとまずヨーロッパで通話可能な電話番号が提供されるトラベルeSIMサービス(この時は「Holafly(オラフライ) 」を利用)を使い、その電話番号でアカウントを登録しています。

ブラブラカーの予約はいつから? 現地ではどうやって待ち合わせる?

 次に相乗りの予約ですが、ルート検索をしてみると各ドライバーはだいたい1週間くらい前から情報を登録しているようです。なので数週間、数ヵ月前に予定を立てるのはちょっと厳しい。幸いルート検索はアカウント登録をしなくても可能なので、今回は乗車する3日ほど前、日本を出発する直前にアカウント登録とドライバーのマッチングをしました。

 マッチングが成功すれば、あとはアプリで指定された待ち合わせポイントへ時間どおりに行くだけ。アプリに表示された車のナンバーを目印にして、それっぽい人に声をかけて、お互いの名前を確認し乗り込みます。往路ではアプリ内のチャットで「マクドナルドの裏手」と待ち合わせポイントの細かな説明が送られてきたので、わかりやすかったです。

乗降車ポイントは地図でチェックできる

 ただし復路はアプリ上の待ち合わせポイントが間違っており、そこで待っていても車がやってきませんでした。おかしいなと思い、チャットでやりとりしてみると、待ち合わせ場所が間違っていたことが判明。慌てて正しい場所へと移動して乗車するといったトラブルもありました。

アラセナの入り口にあるバス停付近でBlaBlaCarを降車

 幸いなことに往路で降車した場所が、たまたま復路の正しい待ち合わせ場所と同じだったのですぐにわかったものの、こういったトラブルを防ぐため、事前にチャットで確認しておいたほうがいいかもしれません。相手は英語やスペイン語なので、翻訳作業が必要ですけどね。

翻訳アプリでスペイン語に訳しながらのやりとりなので、そこを楽しめないとちょっと面倒と感じてしまうかも

 (次ページ:荷物が多いなら荷物預かりマッチングサービスを使おう)

大荷物なら別のマッチングサービスアプリで 預かってくれるホテルや施設を探すのもあり

 BlaBlaCarを使う際にはもうひとつ注意点があって、大きなスーツケースなどの荷物は別料金だったりNGなケースもあること。筆者は2週間ほどの取材旅行で訪れているため、大きめのスーツケースを携行していました。

 セビリア空港にはコインロッカーや手荷物の一時預かりといった施設がありません。そこで活用したのが「Radical Storage」というサービス。

手荷物預かり施設はないのでRadical Storageを使ってくれと、セビリア空港の案内にも記載されています

 Radical Storageはレストランや売店、ホテルといった"荷物を預かってくれる施設をマッチング"してくれるというもの。世界各地でサービスを提供しており、実は日本でも利用可能です。

 アカウントを登録し、セビリア(seville)で検索してみると、いくつかの施設がピックアップされました。ここで注意して見ておきたいのが、荷物預け先の対応可能時間です。24時間営業の施設は少なく、レストランや売店などは営業時間に対応するかたちとなっています。さらにスペインはシエスタ(昼休憩)の習慣があり、13時〜16時あたりは対応できない施設が多くあります。

施設は多いものの、営業時間はそれぞれ違うので注意が必要
こちらは、Radical Storageでマッチングしたホテル

 筆者はBlaBlaCarの乗降場所や時間も考慮して、対応時間が長い市内のホテルをチョイスしました。あとは預ける時間帯を指定して、アプリから申し込めばオーケー。QRコードが発行されるので、当日は荷物をもって施設に行き、QRコードを係の人にスキャンしてもらって荷物を預けます。

荷物を預ける時、受け取る時にアプリからQRコードを表示しよう

 ピックアップ時もQRコードをスキャンしてもらうだけ。支払いは登録したクレジットカードからなので、現金も必要ありません。ちなみに今回は正確な時間が読めなかったので、まる2日間預かってもらうコースにしました。料金は14.75ユーロ(約2400円)です。もちろん、細かく時間を指定して短くしたほうが、もうちょっと安くなります。

店員さんにQRコードを読んでもらうだけなので、手続は簡単でした

ブラブラカーでの移動は約1時間半 バスよりも断然安あがりです

 というわけで、身軽になってからBlaBlaCarへ乗車。往復共にドライバーと自分以外に2名乗車した状態(合計4名)で移動。同乗者はスペイン語話者だったので、車内で少し会話をしていましたが、特にこれといった会話も必要なく、スームーズに目的地まで移動できました。

しつこく話しかけられることもなく、陰キャな筆者はおとなしく座っているだけでした

 移動時間は、ハイウェイも使って1時間半ほど。料金は往復共に6ポンド前後(約1200円)でした。もちろんタクシーより断然安いですし(1km/1ユーロ強と想定しても、タクシーなら100ユーロはかかりそうな距離)、事前に調べていたバスは8.86ユーロ(約1500円)なので、バスよりも安く移動できた計算です。円安のご時世に、これはありがたい。

 2つのマッチングサービスを活用して、なんとかアラセナまでたどり着き、目的の店、ホセ・ビセンテへ到着しました。

ここが、最高の豚肉が食べられる店「Restaurante Jose Vicente(レスタウランテ・ホセ・ビセンテ)」だー!

 (次ページ:あの「最高の豚肉」が食べられる!)

夢に見た「最高の豚肉」と対面 どれもこれもたまらなく美味しい〜〜〜!

 お店に入り、「イベリコ豚の生ハム」と「イベリコ豚のホホ肉」、そして「イベリコ豚の肩肉のソテー」と、美味しんぼで紹介されていたメニューをオーダーします。

 最初に出てきたのはイベリコ豚の生ハム。これが美味しい! これまで生ハムって口の中の感触があまり好きではなく苦手だったんですが、この生ハムは全然違いました。めちゃくちゃ脂っこく見えるのに、口の中に入れると溶けていくような感触で、肉と脂の旨味が口の中にふわ〜っと広がります。

上等な生ハムはメチャ美味い!
前菜として出てきた時「こんなにたくさん食べられるかな」と一瞬、思ったんですが、あっというまにペロリでした

 お次は、イベリコ豚のホホ肉をいただきます。これがよく煮込まれていて、口に入れるとほろほろと崩れだし、そのあとで、やはり肉の旨味がギュッと感じられる絶品。

こちらは豚のホホ肉。煮込みのような感じで、白米とあわせて食べたくなりました

 そしてなんといっても感動したのが、イベリコ豚の肩肉のソテー。単純に、焼いて塩で味付けしただけのシンプルなソテーなのですが、これが、たまらなく美味い! 豚肉って、一般的には肉と脂身が分かれていますよね。このイベリコ豚の肩肉のソテーも一見して脂身のないヒレの部分なのかなと思いますが、食べてみると肉と脂の旨味が混然となって押し寄せてきます。

メインディッシュとなるイベリコ豚の肩肉のソテー
単に塩で焼いただけなのに、なぜこんなに美味いのかと思うほど絶品すぎる味わい……文句なしに美味しい……来て良かった

 美味しんぼでは「霜降りの豚肉」と表現していましたが、まさにその通り。こんなに美味い豚肉はこれまで食べたことがありません。まさに「最高の豚肉」でした。一方で「この霜降り豚肉を使って、日本の凄腕料理人がトンカツを作ったら『最高のトンカツ』ができるかも?」と思ったり……どこかのテレビ番組の企画で実現してくれませんかね?

 ちなみに料金は料理にビール1杯+ワイン赤1杯+ワイン白1杯を飲んで、合計59.10ユーロ(約1万円)。クオリティーとボリューム、そして円安を考慮すると、かなりオトクな価格です。スペインはほかのヨーロッパ各国と比較すると、食事が若干安いので、食べ道楽な自分にはありがたい国です。

実はキノコもこの地方の名産。食べたかったけど店員さんに「頼みすぎ」と断られちゃいました(笑)。次は絶対食べる!

 というわけで、念願だった「最高の豚肉」を食べることができたスペイン旅。まさに口福な時間でしたが、実はスケジュールを詰め過ぎてしまい、アラセナの街をじっくり観光したり、セビリアで闘牛やフラメンコを観たりといったことができませんでした。「最高の豚肉」をもう一度堪能することも含めて、次はゆっくりとこのエリアを再訪してみたいと思います!

ここはアラセナにある「生ハム博物館」
「生ハム博物館」では音声ガイドをスマホから英語で聴けるので、生ハムについての知識が学べます

この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama)

海外旅行トラブル

世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。

  • 「旅人ITライターさとる」(IT系メイン)
  • 「さとる・たべる・あそぶ」(旅行・エンタメ系メイン)

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