中国のガジェットレビューがメッチャまとも&有用になっていたのにはワケがあった
ASCII.jp / 2024年5月26日 9時0分
中国のガジェットレビューの質が格段に上がっている
中国ブランドのガジェットがどんどん日本で買えるようになっている。そこで日本で売られる商品のレビューと、中国の同等機種のレビューを見ていると、どうにも中国のレビューがすごく良くなっていることに気づいた。日本のほうがスゴい、酷いという比較をする意図はない。あくまで中国のレビューは中国のレビューで有用になったと解釈してほしい。
![中国のガジェットレビュー](https://ascii.jp/img/2024/05/25/3737870/x/296b267ce52c8a30.jpg)
近年こそ筆者はガジェットレビュー記事をあまり書かないが、2000年代は中国の物価が安かったことから、さまざまな中国製ガジェットを購入して自腹レビューしていた。自腹レビューなのは、原稿料でも十分に元が取れるほど安かったというのもあるし、中国の各メーカーが外国人の取材を受けることに慣れてなくて、そもそも対応してくれなかったというのもある。
当時の中国における製品レビューは日本のレビューに比べ、どれも比べ物にならないほど内容が貧弱だった(「人民の物欲を掻き立てる、中国流モノ雑誌」)。ThinkPadを銃で打ち抜いたあとに起動するかというトンデモな記事があったりもしたけれど(「中国IT小話──心を撃ち抜かれた中国メディアの記事「ThinkPadヲ射撃セヨ!」」)。
当時の中国メディアでは、基本的に企業が広告枠を買い、そこに記事を掲載するのだが、それにしても積極的に商品を売りたいと思えるような文章ではなかった。そういう商習慣だった。それが近年では過去の中国の状況が嘘のように、レビューコンテンツが素晴らしくなったのだ。
レビュー対象の比較製品を多数集めて評価する コンテンツ自体は動画が中心
中国で見る素晴らしいレビューとは何か。日本で売られる商品のレビューであれば、レビュアーは開封して触るだけでなく、過去に触った類似製品と比較し、ベンチマークを取り、そのメーカーの過去製品を振り返り、ここがこうよかったという感じかと思う。したがって、筆者は若い人よりも過去の製品も知っている人による記事のほうがストーリーがあり、深みがあるとなる。
![中国のガジェットレビュー](https://ascii.jp/img/2024/05/25/3737871/x/bad0570b9286a320.jpg)
一方で、中国で見られる製品レビューは、動画コンテンツがメインであり、それらはビリビリ(動画)やドウイン(抖音、中国向けTikTok)などのプラットフォームでアップされる。内容はスペック紹介に加え、実際の使用感を動画で伝えたうえで、競合他機種と比較したものが主となる。
![中国のガジェットレビュー](https://ascii.jp/img/2024/05/25/3737872/x/9a2d6733e8e911f6.jpg)
レビュー対象はスマートフォンであれディスプレーであれ、ローエンドからハイエンドまで価格帯を問わず、レビュー製品と競合する他製品を紹介しつつ、色味や反応や内蔵スピーカーの音質を動画で比較する。特にビリビリ上で製品名で検索して出てくるレビュー動画は他機種との比較をするものが多い。
しかも今時の中国製ガジェットは結構高価なのに、ローエンドはおろかハイエンド製品まで揃えて比較してレビューする人が、結構いるのだ。しかもレビュアー同士で競争しているから、生き残って露出した動画レビューは内容もわかりやすい。中国語も聞き取れるほうが中国のガジェットをさまざまな面で見られるのは間違いない。
中国における製品レビューのやり方・内容・質が変わったのは、中国経済が向上して所得が増えたから……ではない。それよりなによりも、インターネットでのお金の稼ぎ方が変わったことが大きい。
実店舗よりECのプラットフォームが圧倒的に強い中国 レビューコンテンツからのアフィリエイトで製品が売れる
まず中国の買い物では実店舗よりもECが圧倒的に強い。アリババのタオバオ(淘宝網)や天猫にしろ、プラットフォームの力が強く、消費者がショップに苦情を言えば消費者が有利に働く。ECは実店舗より安いからだけではなく、騙されても泣き寝入りしなくて済むというのが大きいのだ。
加えてネット上で見た気に入ったものをその場で買うという傾向が強い。たとえば、インフルエンサーがライブストリーミングで着ていた服を見て、視聴者はそれが欲しいとその場で購入する。サイズが合わなかったり気に入らなかったら返品すればいいだけだ。ガジェットにしても気に入らなければ問答無用で返品できるので、いいことではないがレビューして返品するという手もある。
となれば、アフィリエイトをすれば、購入に慎重な日本の消費者より買ってくれそうだし稼げると思うはずだ。そうなのだ。動画サイトなりSNSアカウントなりでフォロワーを増やし、インフルエンサーとなって商品を紹介すればそのフォロワーが結構買ってくれる(この金になりそうなフォロワー数を中国では「流量」と呼ばれている)。
![中国のガジェットレビュー](https://ascii.jp/img/2024/05/25/3737873/x/a695a2177addcb58.jpg)
企業側も、ガジェットでもそれ以外のジャンルでも売るためにはインフルエンサーに商品を紹介するよう依頼する。近年、中国でのECサービスはアリババ一強ではなくなり、ドウイン(中国向けTikTok)はドウイン内にECサイトを構えて、動画からの製品購入がドウイン内だけで完結できる。ビリビリも動画からドウインやタオバオのショップに誘導できる。
国内市場が圧倒的に大きい中国 製品レビューのインフルエンサーに回るお金の流れも桁違い
レビュー動画でフォロワーを集めてそのジャンルで知られるアカウントになれば、広告依頼で企業から声がかかることがあり、商品を借りて、より充実したレビューができ、しかも稼げるようになる。ガジェットに詳しくないインフルエンサーの美男美女も周囲のスタッフが台本を書くことでレビューする。
ショップカウントであればさまざまな商品を比較したレビューを出すことで購入に繋げられる。しかも14億の人口を抱えるのでガジェットマニアでも、それ以外のマニアでも、絶対数が多く市場が大きい。中国のガジェットメーカーは日本でも頻繁に見るようになったように力をつけていて、本国の中国でガジェットマニアに声をかけ競争は激化した。ガジェットレビューは昔と異なり品質がフォロワー獲得、ひいては稼ぎを左右するとなり、レビュー依頼のお金の流れも桁違いに増え大きく向上したわけだ。
ちなみにライブコマースなど動画での解説から商品購入の流れができてからは、PCパーツショップが動画配信を通し、自信を持って勧める自作パーツを組み合わせたショップブランドPCを販売するようになった。中国中の電脳街に構える店が動画でショップブランドPCを販売することで、全国的な信頼と価格面での競争が発生している。これまでは電脳街の実店舗でのショップブランド販売は騙されるなどと言われて不人気だったが、少しは立て直すかもしれない。
![中国のガジェットレビュー](https://ascii.jp/img/2024/05/25/3737874/x/e6f5c07bfae52860.jpg)
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