世界で広がる学校でスマホを禁止する動き スマホを使わない時間を子供が持つことに意味がある?
ASCII.jp / 2024年6月1日 12時0分
スマートフォンを学校内で禁止する動きが欧州を中心に広まりつつある。最新のニュースが英国だ。中学生以下の学生が学校で使用することを禁じるガイドラインを政府が出している(https://committees.parliament.uk/committee/203/education-committee/news/201715/stronger-guidance-and-controls-needed-to-protect-children-from-screen-time-education-committee-finds/)。
![スマホ](https://ascii.jp/img/2024/06/01/3741059/x/65467d28cb389f73.png)
英国でのスマホでの懸念はいじめ、注意欠陥、授業崩壊など 悩みは世界で大体同じらしい
iPhone登場から17年、いつしか「スマートフォンを子供に持たせるか、持たせないか」から、「いつ持たせるか」に変わったと感じている。すでにスマホは当たり前となった。大人の生活を楽にしてくれるスマホを、子供が使えないというのはフェアではない。だが、大人は子供を守る存在でもある。果たしてスマホはいつから持ってもいいものなのか?
子供にとっては、計算機(コンピューター)があるのになぜ計算を覚えなければならないのか、口で話した言葉をスマホが書き取ってくれるのになぜ漢字やスペルを覚えなければならないのか、そんな疑問が生じることもあるだろう。ちなみに計算機を使うことを前提に、算数の授業をしている国もある。
だが、スマホの課題はアプリにある。InstagramやTikTokなどのアプリは中毒性があること、若者のメンタルヘルスに良くない影響を与える可能性などが主張されるようになって久しい。
英国政府では子供のスマホ利用の問題点として、オンラインでのいじめ、注意欠陥を招く、授業崩壊につながる、などの点を挙げている。同国では、12歳の子供のうち97%が自分のスマホを所有しているという。さらに18歳以下の79%がスマホで暴力的なポルノグラフィーが表示された経験があるという。
そこで、ガイドラインでは16歳以下の子供が学校で(休憩時間含む)使うことを禁止するとしている。
イタリア、オランダ、フランス、シンガポールなど 学校でスマホを禁じる法律を定める国は増えている
ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)のレポート(https://www.unesco.org/en/articles/smartphones-school-only-when-they-clearly-support-learning)によると、スマホが学校の成績の低下につながること、見ている時間が長いと子供たちのメンタルに悪い影響を及ぼすとして、学校でのスマホ禁止を求めた。
すでに、学校でスマホを禁じる法はイタリア、オランダ、フランスといった欧州の各国やシンガポール、コロンビア、コートジボワールなどでなんらか制定されているという。プライバシーの懸念から、フランスやデンマークでは「Google Workspace」を、ドイツの一部の州ではMicrosoft製品を禁じており、米国では「TikTok」を禁じる学校や大学がある。
だが、技術にはもちろん優れた面もある。まずは安全確認。これはスマホでなくてもいいが、GPSにより位置情報が確認できる機能をありがたいと思う親は多いだろう。
そもそも、中学生にもなって良い方向に使えば、スマホは子供にパワーを与えてくれること自体に異論はないだろう。
目的があれば、実に創造的に新しい技術を使いこなす子供たち でもスマホを使わない空間や時間を持つことに意味があるのでは?
少し昔の話になるが、2010年代前半に英グリニッジにある中学校を訪問したことがある。ちょうど英国はプログラミング教育必須化が始まる段階で、その学校では電子ホワイトボードを導入し、学生にはタブレットを貸与するなどフル活用していた。
授業中、個人のスマホは許可されており、先生は、Twitter(当時)を使うことでシャイな子が発言するようになったと語っていた。新しい技術を受け入れるその潔さに驚いたものだ。
日本でも、通学時にスマホアプリで勉強する学生もいる。回答する前の問題集を写真に撮り、そこに解答を書くことで繰り返し勉強できるという話を聞いたこともある。なにかをやりたいと思った子供たちは、実に創造的にスマホやタブレットを使う。
一方で、年齢が低いとデメリットを指摘する声が聞かれる。知り合いの幼稚園の先生は、20年超のキャリアで子供の注意スパンが確実に短くなったと話す。スマホやタブレットが明らかに影響しているとみる。幼稚園児が持っているというより、親のスマホをよく使っているとこの先生は話してくれた。
すでに中学校でスマホを禁止しているオランダでは、授業中の集中、子供たち同士の会話の増加などの良い変化が見られるという。学校に持ってこないか、持ってきたら所定の場所に預けるということになっており、休憩時には使用が認められているそうだ。適度に使えばメリットも多いスマホだが、禁止の動きは負の面があまりに大きくなりすぎたということだろうか。
一方で、そうした生徒たちも自宅に帰れば、普通にスマホを使うことができる。懸念のすべてが払拭されるわけではないだろう。だとしても、スマホフリーの空間と時間を1日の中で作ることは意味があるのかもしれない。
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