REGZAの2024年フラッグシップ機、有機ELの「X9900N」とMini LEDバックライト液晶の「Z970N」
ASCII.jp / 2024年6月20日 11時0分
TVS REGZAは6月20日、2024年のフラッグシップテレビを発表した。4K有機ELレグザ「X9900N」シリーズと4K Mini LED液晶レグザ「Z970N」シリーズ。価格はすべてオープンプライス。画面サイズは有機ELが65V型(予想実売64万6800円)/55V型(同48万1800円)、液晶が75V型(同66万円)/65V型(同49万5000円)。発売は7月12日。
数段のジャンプアップを果たした高画質
レグザ史上最高性能のエンジンと、レグザ史上最高性能のパネルをまとった革新モデル。有機ELパネル、Mini LEDバックライト搭載液晶パネルの両方に本腰を入れて開発したツートップのフラッグシップ機種となる。TVS REGZA 取締役副社長の石橋泰博氏は「15年の歴史の中で最もいいモデルに仕上がった。最高の輝度、最高の色域、すべてレグザ史上最高のもの」とコメントした。
レグザブランド統括マネージャーの本村裕史氏も「毎年きれいになったという話をしているが、数段のジャンプアップを果たした製品」と表現。ビジネスとしても好調なレグザが「大画面化と高画質化が受け入れられていることを反映して世に送り出す製品」と完成度に自信を示す。特に、有機ELか液晶かのどちらか一方ではなく、両方のフラッグシップテレビを真剣にやっている点は印象に残った。
テレビの画質を決めるのはエンジンとパネルだが、新モデルのエンジンは独自開発で新世代の「レグザエンジンZRα」。AI画像解析、映像信号処理、パネル駆動技術が進化したほか、Dolby Atmosの再生にも対応する。高画質化技術については、CESのタイミングで発表されたものが採用されている。
有機ELのX9900Nは新開発のマイクロレンズアレイ有機ELパネルを採用。3層構造のアルミを使った放熱板を新設計し、高輝度の引き締まった映像体験が得られるとしている。昨年から画質面での評価が高いと市場で評判のマイクロレンズアレイ有機ELパネルだが、その最新版を採用したことになる。高輝度化で重要となる冷却システムの“放熱板”は自社開発。ここに独自性を出している。
三層の内訳は以下の通り。有機ELの熱源に最も近い位置に局所的な熱を全体に拡散する熱伝導アルミシート、その熱を効率的に外に出す熱伝導アルミプレート、さらに裏側の回路から回り込んでくる発熱を分断する熱伝導アルミプレートだ。この三層構造はレグザならではの試み。ピーク輝度の性能は昨年の9900Mと比較して2倍、全白信号では1.3倍になっている。
Mini LEDバックライト液晶のZ970Nは、従来比1.3倍の高輝度バックライトを搭載。また、映り込みをなくして黒の再現を向上させる低反射ARコートや、大画面でも見る角度による画質低下が少ない高視野角ワイドアングルシートを採用している。
AIを活用したシーン認識
自社開発の新世代レグザエンジンが持つ「AIシーン高画質PRO」は、AI技術を用いてコンテンツのジャンルだけでなくシーンを認識し、それに最適化した高画質化処理を加える技術。CESに合わせて発表された通り、夜景や花火の先鋭感、リング競技の立体感などに違いが出る。
例えば、夜景では“色のついた”部分の輝き(写真では観覧車など)に注目。一方で暗部は引き締め、白のピークは輝度を増すことで、映像を先鋭化する処理を加える。現実世界は鮮やかなのでそれを表現したいという意図だそうだ。また、花火のシーンでは夜景とは異なり煙が舞う。この煙はノイズになるので処理に配慮が必要だ。処理を加えると、色が鮮やかになり、黒が引き締まる。コントラスト処理を向上させて、先鋭感や透明感を増す処理が加えられている。最後にリング競技のシーンでは、光のダイナミックレンジが上がる。会場では選手にまぶしいぐらいのスポットライトが当たっている。肉眼で見るとクリアだが、これをカメラで撮ると、人が白く浮いてしまうことがある。背景も空気がかすんだような表現になる。しかし、処理をオンにすると、選手の立体感や背景のくすみが減少して臨場感やリアリティーが増す。二次元的な画に奥行きや立体感が出てくる。このようにシーンをAIで認識することで、的確な映像信号処理が可能となるわけだ。
さらに、新モデルでは有機ELを含め、パネル駆動にもメスを入れているという。有機ELテレビでポイントになるのは、暗部階調の表現。黒が引き締まると言われる有機ELだが、暗部の情報が再現しにくいと批判される場合もある。X9900Nでは暗部高階調技術として、ディザリングアルゴリズムを改良している。ディザリングというのは、画像の信号に特定のパターンを重ねることで疑似的に階調表現を高める技術だ。つぶれがちな暗部のグラデーションが滑らかになる。また、白く輝く被写体は白ピーク伸長によって輝きを向上させ、鮮やかな色で輝いている部分は色ピーク伸長によって色鮮やかな再現にする。その前提となるのが、しっかりとした映像解析。映像のどの部分のピークを上げていいかの判断をする。
一方、Mini LEDバックライトでは、LEDコントローラーのハード自体を改良している。映像のコントラストを高めるために用いる“バックライトのエリア制御”で、PWMによってバックライトの明滅を制御するだけでなく、電流制御も入れている。PWMはバックライトの点灯時間を制御することで明るさを調節するもので、点灯時間が長ければ(ずっとつけていれば)明るく、短ければ(点滅で間引けば)暗くなる。従来はこの制御のみだったが、新モデルでは黒を締めたいエリアでは、流す電流そのものを絞る制御も入れているという。PWMだけを使った制御でピーク輝度を伸ばそうとすると、暗部の輝度も全体的に上がってしまう(輝度を上げるためには明るくする頻度を増やす必要があるためどうしても限界が出る)。黒浮きを防ぐため、全体の制御のバランスを取ると、明部を落とさざるを得ないという側面があったという。
また、グラデーションの階調が不足することによって生じるバンディングは、強い圧縮処理を加えるネット動画で発生しやすいが、レグザは「ネット動画高画質」として、その影響を軽減する「ネット動画バンディングスムーザーPRO」を搭載している。さらにフラッグシップ機ならではのバンディング処理として、より高い効果を得られるようにしている。背景は滑らかにしても、その前に立っている人の精細感はむしろ高く表現できるという。その理由は映像の顔認識、被写体認識が高度にできるため。人の顔に加えて、被写体全体を明確に発見したうえで、バンディングを滑らかにする処理を加える。Z870Mではここまでの処理は加えていないという。
このほかにも豊富な高画質化技術を搭載。クラウド上の番組データベースと照合し、エンジニアの人力で番組ごとの画質調整をする、「クラウドAI高画質テクノロジー」もレグザならではの取り組みだ。美肌高画質を実現する「ナチュラルフェイストーンPRO」も進化し、カラーシフトした人肌を自然で美しい色合いに再現。展示会場では、敢えてカラーシフトした映像をスタジオで収録し、黄色みが出ていた人の顔の色が、健康的で自然な色に変わるデモも示された。
音質面では、X9900Mが「重低音立体音響システム XIS」として総合180W(10ch/5デバイス)、18個のスピーカー、Z970Mが「重低音立体音響システム ZIS」として総合122W、11個のスピーカーを制御してDolby Atmosの5.1.2ch再生を実現。本体の設定でトップ・サイドスピーカーのオン/オフを切り替えられるが、オンにするとその効果の高さが分かる。加えて、「レグザイマーシブサウンド360 PRO」や「オーディオキャリブレーション PRO」などの補正技術を利用して、周波数特性に加えて到達時間もスピーカーごとに調整し、臨場感あふれる再生が可能となっている。
機能面では全録の「タイムシフトマシン」など、レグザらしい機能を引き続き搭載。「おまかせ録画」「新ざんまいスマートアクセス」「シーンリスト」「みるコレ 番組ガイド」「番組こねくと」などの機能を通じて、録画した番組を観るだけでなく、録り逃しをなくす、録画した内容から観たいシーンを的確に探す、放送だけでなくネット配信サービスも横断的に探してテレビで楽しむといった機能を訴求している。
特に“推し活完全サポート”として、放送番組とネット番組を同時にチェックできるみるコレ 番組ガイドに“推し活リスト”機能を追加。推し活したいアイドル、俳優、アーティストなどを“パック”に登録しておくと、その人物の出演番組を自動で録画できるだけでなく、YouTubeやAmazon Primeビデオなどを横断検索。その際にはシーン単位で設定された詳細なメタ情報の検索もできるので、推しが出るCMを観たい、ワイドショーで紹介されたちょっとしたシーンだけをチェックできる。さらに推し活リストからパックを選ぶと、選択すると時系列のタイムラインでその推しが出演したコンテンツのリストが過去から未来に渡って確認できる。あなたの推しが出演する番組のスケジュールが完成するわけだ。
アニメなどのシリーズ番組で見逃した買いがある場合も番組こねくとで、ネット配信していないかを検索可能。番組こねくとには編集部もあり、話題になった番組の説明をチェックできるほか、エピソード順の一気見もしやすいUIになっている。
最近では、テレビの音声検索も主流になっているが、レグザでは「ボイスボタン」を使った音声検索で“推しの愛称”(ニックネームや略称)を使った検索ができるように改良を加えている。具体的には「ガッキー」(新垣結衣)などで、「転スラ」(転生したらスライムだった件)などの長い作品名に関しても新しい作品が出るたびに対応していきたいとしている。
TVS REGZAでは、高画質・大画面を自分で見たい番組を観ることに加え、そこにリーチできることが大事であると考えており、多岐にわたったコンテンツをしっかりレグザがつなぐことを目zしている。このあたりは、国内に根差したブランドであり、日本のユーザーの気持ちが分かるからできるきめ細かい仕様とも言える。
AirPlay 2やスクリーンミラーリングによるLINE通話やプレゼン機能、Z870Mに搭載したのと同等のゲーミング機能(ゲーミングメニュー)などを搭載。144Hzのリフレッシュレートにも対応する。このほか、Bluetoothリモコンへの対応や、有機ELのフラッグシップ機としては初の回転スタンドなども特徴だ。
テレビ市場では大画面化が進んでおり、いまや55V型は決して大きなサイズとは言えない。65V型が伸びていて、4Kテレビにおける占有率は3割を超えているという。画面サイズを絞ったラインアップも、フラッグシップモデルは65V型以上だろうというメッセージの表れ。また、Mini LEDバックライトを搭載した液晶テレビの市場も急速に拡大している。数年前であれば、コントラスト感や視野角などの問題から「65V型以上では、有機ELテレビしかない」と考えていたマニア層も多いだろうが、ワイドアングルシートやARコート、MiniLEDの制御など技術の進化によって、大画面の液晶テレビは有機ELに匹敵する高画質を得られるようになっている。一方で、ピーク輝度や全白の輝度は液晶のほうが出しやすい面もある。
こういった状況がある中、市場では有機ELテレビもMini LEDバックライト搭載の液晶テレビもどちらも重要ではあるが、レグザはそのどちらにも手を抜かず、真剣にやっていく姿勢を表明している貴重なメーカーでもある。映像処理デバイスを自社開発する点にこだわっているという点も含めて、やはり注目のブランドだ。
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