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ソフトバンク、ドーム球場でも通信速い ただし「ミリ波」の活躍はかなり先

ASCII.jp / 2024年6月26日 7時0分

 絶えずスマートフォンで動画やSNSに接続するのが当たり前になるなか、各携帯電話会社はネットワーク品質の維持、向上に血眼になっている。

 ちょっとでもつながらなければ、すぐに不満をSNSに書き込むユーザーも多く、キャリアとしても、日々、SNSをチェックして、対応に追われている状態だ。  各キャリアは住宅地やビジネス街、電車の路線など、生活動線のネットワーク品質維持に注力する一方、商業施設や花火大会などのイベントといったように大量の人が集まる場所においても、万全の対策をとっている。  ここ最近、調査会社のデータですこぶる評価の高いソフトバンクは、スタジアムやサーキットなど数万人が集まる施設においても、抜かりない対策を打っている。

ソフトバンク「みずほPayPayドーム福岡」で通信品質を維持

 たとえば、プロ野球チームの福岡ソフトバンクホークスの本拠地である「みずほPayPayドーム福岡」においても、ソフトバンクが持つあらゆる周波数帯を活用し、ネットワーク品質の維持に努めている。

 みずほPayPayドーム福岡には、プロ野球の試合で最大4万人を収容する。もちろん、すべての観客がソフトバンクやワイモバイル、LINEMOを使っているわけではないが、それでも万の単位でのソフトバンク、ワイモバイル、LINEMOユーザーが使うと想定される。

 ドーム球場の内部では、観客席の上の階にある場所に各キャリアの基地局が設置されている。ソフトバンクでは1塁側と3塁側の2ヵ所に設置。それぞれ、周波数別に2本のアンテナがあり、扇状に電波を飛ばしている。

 ちなみにみずほPayPayドーム福岡は1年のうち、ほとんど屋根が閉まった状態となっている。そのため、外にある基地局からの電波がドーム内部に飛んでくることはなく、ドーム内部に基地局を設置し、エリア対策をしている。

 ソフトバンクがドーム内部に設置している基地局は3Gが停波していることもあり、4G LTEと5Gとなっている。周波数としては900MHz、1.7GHz、2.5GHz、3.4GHz、3.5GHz、3.9GHz、さらにミリ波という構成だ。

 一部の周波数帯はデータの扱いに特化したTD-LTE、さらにはMassive-MIMOに対応していることで、莫大に発生しているデータトラフィックを効率よくさばくことに成功している。

持っている周波数帯をすべて投入し、分散させるのが有効

 ソフトバンク エリア建設本部九州ネットワーク技術部の津野和己氏と塚木健太郎氏によると、ドーム球場のような人が大量に集まる場所においては、とにかく持っている周波数帯をすべて投入し、できるだけ分散させることがトラフィック対策において最も有効だという。素人考えだと、基地局をたくさん設置すればいいように感じるが、それでは電波が干渉を起こしてしまい、性能がうまく発揮されない。トラフィックをうまく裁くには干渉を起こさないよう、パラメーターを調整しつつ、絶妙なバランスが求められるようだ。

 彼らが最も緊張するのがシーズンの開幕戦なのだという。秋にシーズンが終了したのち、ユーザーによるスマホの使い方が変化していくが、実際にドーム球場でどれくらいのトラフィックが増えるのかは予想ができない。シーズンオフの間、対策を強化するものの、本当に効果を発揮するかはオープン戦ぐらいでなんとなくわかるものの、やはり「開幕戦」を乗り切れるかどうかが重要になるとのことだ。

 ドーム球場の対策において、比較的、安定するようになったのが2020年ころからだという。5Gサービスが開始となり、新しい周波数帯を割り当てられたことで、トラフィックを裁きやすくなったとのことだ。ちなみに、この春にソフトバンクは3Gサービスを停波したが(石川県を除く)、ドーム球場においては特に影響はなかったとのことだ。そもそも、3Gはほとんどがケータイでの利用となっているため、トラフィックはほとんど流れていなかったというのが理由のようだ。

 一方、世間的には「ミリ波」のアンテナをもっと増やしてほしいという声が大きく、総務省もミリ波端末の割引額を増やす施策を導入するなど、ミリ波のてこ入れが期待されている。

 ただ実際、ドーム球場で取材してみると、スタンドでミリ波端末を持っていても、人が多く、人の影に入ってしまうとアンテナから電波を受信できなくなるなど相当シビアで、安定してミリ波を活用するというのはかなり困難だとわかった。現状、ミリ波対応端末も少ないことから、ドーム球場でミリ波が活躍するのはかなり先のことになりそうだ。

 実際に4キャリアの回線を持ち込み、試合中に通信速度をチェックしてみたが、当然のことながらソフトバンクの回線が最も速く安定していた。ソフトバンクの地元なんだから当然といえば当然であり、特に褒める必要はないと思うが、ソフトバンクホークスファンが多い中、数十Mbps以上が出ていたのは立派といえそうだ(他社のなかには全くデータが流れてこないキャリアもあった)。

球場やスタジアムの通信でも、キャリア間の競争が進む

 先日、東京の国立競技場を民間企業が運営するなかで、NTTドコモが名乗りを上げた。競技場のネットワーク品質を上げるのはもちろんのこと、VRなどリアルとバーチャルを融合させた取り組みを実施するようだ。

 プロチームを持ち、ホームのスタジアムなどを持つという点ではソフトバンクだけでなく、楽天も同様だ。スポーツ観戦であれば、ハーフタイムやイニングの交代時に、ユーザーはこぞってスマホをいじる。コンサートやライブであれば、開幕前と開幕後にSNSに投稿するだろう。

 今後も、各キャリアは球場やスタジアムなど、大量に人が集まるところをいかに安定した通信を提供し続けていくかで競っていくことになりそうだ。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

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