ソニー「PSP」はゲーム、映画、音楽、ネット対戦と俺たちの夢が詰まった携帯ゲーム機だった
ASCII.jp / 2024年7月2日 12時0分
高画質のゲームが外で遊べる衝撃! 「PSP」はポータブルゲームの礎を築いた
プレイステーションのゲームを持ち運んで、いつでもどこでも遊びたい! その願いは、当時のSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)から2004年12月12日に登場したプレイステーション・ポータブル、PSP(ピーエスピー)の名前で親しまれた携帯型ゲーム機として叶うことになります。
PSPはプレイステーション10周年の年(2004年)に発売されたことを、ついこの前のように覚えていますが、まさか発売から20年の歳月が経っているとは……。
気を取り直して性能を見てみましょう! 4.3型の液晶ディスプレーに、PlayStation2に匹敵するほどのグラフィックを楽しめる脅威のハイスペック。無線LANを備えて、インターネットにつながることは当然として、そこからゲームコンテンツをダウンロードしたり、離れているプレイヤーたちとオンライン対戦ができるという、「こんなのがあったらいいのに!」を現実にした夢のようなゲーム機でした。
最高に楽しいのはゲーム以外にも、動画や音楽を再生できるメディアプレイヤーとして使えること。 コンパクトでありながら、曲線と色線が入り交じるボディーデザインは手にフィットして、持ちやすさとたくさんの機能がぎゅっと詰め込まれた、まさに現代のスマートフォンの原型のようなマルチメディア端末と言えました。PSP1台で、あらゆるエンターテインメントが楽しめる。そのことが優越感にもつながっていました。
ゲームのメディアとして採用されたのは、UMD(ユニバーサル・メディア・ディスク)という半分円形になったプラスチックに覆われた光学ディスク。カートリッジの中に直径6cmの小さなディスクが収まっているのが見られます。
PSPのローンチタイトルはレースゲームの「リッジレーサーズ」や「みんなのGOLFポータブル」、「ARMORED CORE FORMULA FRONT」など、全6タイトル。UMDはゲームタイトルにとどまらず、映画やアニメのソフトも発売されていましたが、こちらは微妙に割高感もあって、あまり売れたような記憶がありません。
ソニーやらかし事件勃発! ここでシェア争いにつまづいた
強烈なインパクトを残したのは、UMD発射事件! メディアスロットを開くと、UMDがカシャっとポップアップして取り出せるのですが、初代モデルのPSP-1000ではその機構のバネが強すぎたのか、勢いあまってはるか遠くまで飛び出すコトがネタにされ、今で言う「バズった」わけです(悪い意味で)。
□ボタンを押しても戻ってこない初期不良もあり、世間から総ツッコミを受けたときは、久夛良木 健さん(当時のソニー副社長)の「これが私が考えたデザインだ!」や「世界で一番美しい物を作った!」という名言(迷言)がネットを駆け巡っていったのも、今となっては懐かしい思い出です(この後、SCEは初期不良として無償修理対応しました)。
薄型軽量化の新モデルで巻き返し! ディスプレーは明るく、マイクもついた
3年後の2007年9月20日には、新型となる「PSP-2000」シリーズが登場。ディスプレイサイズはそのままに、大幅に薄型化・軽量化されたことで、より持ち運びやすくなりました。メインメモリーが倍増して、処理速度も早くなるなどの改良も図られました。
新たに、ビデオ出力端子を備えたことで、対応ケーブルを用意すれば、テレビに接続して大画面で楽しむといった使い方もできました。カラーバリエーションも一挙に増えたことで、自分の好きなカラーが選べるようになったのもこの頃です。
さらにその1年後の2008年10月16日には「PSP-3000」シリーズが登場します。軽量・薄型はそのまま引き継ぎつつ、液晶ディスプレイを高品質化して、コントラストが向上したことで、明るい場所でも見やすい高精細な映像を楽しめるほか、内蔵マイクを標準搭載した上位モデルとなりました。
PSPを牽引したのは間違いなくモンハンの存在
そしてPSPといえば、モンハン(モンスターハンターポータブル)です。「モンスターハンターポータブル」のおかげでPSPが売れたといっても過言ではないでしょう。「モンスターハンターポータブル 2nd G」にいたっては、それまで潤沢だったPSP本体が世の中から姿を消す事態になって、みんなお店を駆け巡って探したほどです。
ワイヤレス通信機能の1つである「アドホックモード」を使って、リアル「ひと狩り行こうぜ」状態で、いつでもどこでもモンハンをプレイしたいゲーマーたちで溢れかえってたように思います。
当時は今と違って、ゲームタイトルがマルチプラットフォームで発売されることが少なかったので、注目のビックタイトルがどのハードで発売されるか? がとても重要でした。それゆえにナーバスな問題というか、自分の愛好するメーカーを支持するユーザー間で争いは絶えなかったのです。
昔のケータイのようなギミックがたまらない 「PSP go」はイマイチ伸び悩んだ
2009年にはディスクレスのPSP go(PSP-N1000)が発売になります。こちらはUMDドライブがなくなった代わりに、本体に16GBのフラッシュメモリーを内蔵しています。ディスプレイが上下にスライドするギミックを持ち、圧倒的に小さく軽くなり、さらに持ち運びやすくなったのです。
筆者個人とてしてはとてもお気に入りだったのですが、あまり売れていなかったようで。その主たる要因として、時期としてはダウンロード販売という行為そのもののハードルが高く、ゲームソフトはパッケージで買うもの、というイメージから脱却できなかったことがあったようです。
「なんでもできる」を詰め込んだ ソニーらしいハードだった
PSP本体の出荷台数は全世界で700万台をこえ、ソフトの販売数は3億6200万本以上、ポータブルゲームの礎を築いたわけです。ですがその後、満を持して登場した「PlayStation Vita」は、これまたいろいろな課題があり、スマートフォンの台頭とクロスオーバーするかのように消えていきました。
ですがPSPは、ゲームだけでなく映像や音楽を持ち運んで楽しめる、インターネットにもつながる、スマートフォン以前に登場した僕たちの夢を詰め込んだマルチメディアプレーヤーだったのです。
筆者紹介───君国泰将
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