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【レビュー】Apple Vision Proに完全対応したライフルの「お部屋探し」アプリが斬新だった

ASCII.jp / 2024年6月28日 10時0分

Apple Vision Proを使った物件のバーチャル内見を実現した、「LIFULL HOME'S イマーシブモデルルーム」アプリを体験しました

 アップルの空間コンピュータ「Apple Vision Pro」が、6月28日から日本で販売を開始しました。同日から住まいのモデルルームをデジタル仮想空間(メタバース)上で体験できるアプリ、「LIFULL HOME'S イマーシブモデルルーム」がApple Vision Pro向けのApp Storeから提供されます。筆者も新しいアプリを体験してきました。

自宅にいながら好きな時に住まい探しができる

 LIFULL HOME'S イマーシブモデルルーム(以降、イマーシブモデルルーム)は、不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S」を運営するLIFULL(以降、ライフル)が独自に開発したvisionOS対応アプリです。6月28日にApp Storeで公開され、Apple Vision Proのユーザーは無料でダウンロードができます。

 筆者はライフルが実施したアプリの説明会に参加して、6月28日の初公開時点でイマーシブモデルルームアプリが対応する主なサービスのプロトタイプを体験してきました。

 Apple Vision Proは、片目あたり4K高画質の映像が視聴できるヘッドマウント型ディスプレイです。イマーシブモデルルームアプリを起動すると、最初に物件の概要を紹介するホーム画面が起動します。

アプリのホーム画面。「概要」タブから物件の基本情報が参照できます

 続いて「建物」タブを選択すると、マンションなど建物の外観全体を捉えた高精細な立体CGモデルが起動します。Apple Vision Proのユーザーはハンドジェスチャー操作を駆使しながら建物の細部をクローズアップしたり、モデルを回転させて建物の正面以外の側面・裏面の様子も確認できます。

「建物」タブを選択。マンションの立体モデルを拡大縮小、回転させて全体像を隈なく確認できます
Apple Vision Proならではのハンドジェスチャーによるピンチイン・アウト操作に対応しています

 「部屋」タブを選択するとモデルルームの内見モードに切り替わります。ユーザーの360度全周囲に広がるモデルルームに飛び込めるリアリティはApple Vision Proらしさを活かした体験でした。

「部屋」タブを選択すると物件の室内に入れます

 内見モード時には立ち上がって、室内の一部範囲を歩き回ることもできました。内見モード時の注意点は、Apple Vision Proが搭載するカメラがキャプチャする現実世界の映像が透けて見えなくなることです。

室内を移動。Apple Vision Proの高精細な映像によるリアルな体験が特徴です

 CGで描画されている家具や花瓶の花などに触ることはできません。アプリの開発に携わるライフルの上野哲史氏は、「アプリの公開後もアップデートにより様々な機能追加を実現したい」と意欲を語っています。

 この日体験したモデルルームの映像は、深度情報を持つ3D画像の上にデジタル写真データを貼り付けたものでしたが、モデルルームの中にはApple Vision ProやiPhone 15 Proシリーズで撮影できる「空間ビデオ」も配置されています。例えば、部屋の中に家具や観葉植物などを置いてみた様子をリアルな空間ビデオで確認できれば、家族が暮らすことになるかもしれない部屋のシビアな評価も可能になります。

部屋のサイズ感も忠実に再現されるので、バーチャルな体験だけで最終段階の判断もできそうです
アプリの開発に携わったプロダクトマネージャー兼エンジニアの上野哲史氏(左側)と、プロダクトマネージャーの徳山 隆氏(右側)

B2CとB2Bの両側からサービスを役立てたい

 イマーシブモデルルームのようなアプリが、従来のスマホやタブレットによる住まい探しのモバイルアプリと大きく違う点をライフルのプロダクトマネージャーである徳山 隆氏は次のように語っています。

 「Apple Vision Proの高精細な立体映像とストレスフリーなイマーシブ体験を実現する空間コンピューティングは、真に迫るリアルな映像体験により、例えば遠方にあるモデルルームを自宅にいながら、あるいは空き時間を活かして内見できる環境を実現します。当社はこれまでにもARの技術を活かした『Finding Serendipity』や、2Dの間取り画像をもとに3Dモデルを生成する『3D間取り』などのサービスも実現してきました。Apple Vision Proに対応するイマーシブモデルルームでは、誰もが自信を持って新しい住まいの最終決定までできる環境を提供したいと考えています」

 visionOSはアップルの新しいOSです。ライフルの上野氏は、アップルが提供するフレームワークと各種ツールを活用しながら、日々手探りでアプリの開発を進めてきたと振り返ります。

 iPhoneやiPadと比較すると、Apple Vision Proは製品が持つ特性や価格が異なることから、ライフルのイマーシブモデルルームは無料のアプリでありながら「誰でも気軽に体験するもの」ではありません。これからのアプリの提供モデルについて、ライフルの徳山氏は「Apple Vision Proのユーザーであれば誰でも使えることを基本としていますが、ほかにも住宅メーカーや不動産デベロッパーなど企業の皆様と一緒にアプリの体験が活かせる機会を作りたい」と展望を語っています。

 一般的に住宅メーカーや不動産デベロッパーにとって、コストとのバランスを考えるとすべての部屋タイプのモデルルームを作ることはできません。そのため体験の機会損失も生まれがちであるといいます。イマーシブモデルルームアプリであれば、デジタルによる仮想空間にすべての部屋タイプを用意できます。ユーザーにとっては住まい探しの重要なヒントにもなります。

アップデートによる新機能の追加も予定

 6月28日にApp Storeからアプリの提供を開始した後も、イマーシブモデルルームに新機能を継続的に追加することを考えているとライフルの上野氏は語っています。

 「9月に予定するアップデートでは、ユーザーがお部屋を内見しながら内装や家具を選んで自由にシミュレーションできる機能や、体験したシーンを記録して繰り返し見られる機能などを充実させる予定です。Apple Vision Proの画期的な機能である、FaceTimeアプリによるSharePlay、Persona通話にも対応したいと考えています」

ライフルは秋以降にも、イマーシブモデルルームアプリに新しい機能の追加を予定しています

 同様の体験は、同じゴーグル型デバイスであるMetaの「Meta Quest」シリーズでも実現できるのでしょうか。上野氏は技術的には可能であるとしていますが、まずはApple Vision Proのアプリを成功させた後に、他のプラットフォームも含めてより広く展開できる可能性を注視しながら、次のステップについて検討を進めたいと話しました。

 

筆者紹介――山本 敦  オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。

 

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