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シャープ「AQUOS R9」いきなりデザインが変わったワケ

ASCII.jp / 2024年7月4日 7時0分

シャープ「AQUOS R9」

 シャープのフラグシップスマートフォン「AQUOS R9」がいよいよ発売となる。

 従来モデルからデザインが大幅に変更となっているが、これがメディアの間では賛否両論なのだ。

まったく異なるコンセプトに一新

 確かに、1インチセンサーを初めて搭載したAQUOS R6ではカメラ周りは長方形だったが、AQUOS R7から背面中央に大きなカメラを配置。続く、AQUOS R8やR8 Proでも同様のデザインを投入したこともあり「背面中央に大きなカメラはまさにAQUOSのシンボル」として、定着しかかった。

「AQUOS R6」
「AQUOS R7」
「AQUOS R8」

 しかし、一転して、AQUOS R9ではカメラを2つ、自由曲線と不揃いなレイアウトという全く異なるコンセプトに一新されたことから、あまりの変化にメディアとしては受け止めるのに混乱している感があるのだ。

 あれだけ「背面中央に大きなカメラはAQUOSならでは」とメディアが神輿を担いでいたのに、あっと言う間にシャープが神輿から降りてしまったので、まさにメディアとしては肩透かしにあった印象なのだ(ちなみに、4K、21:9ディスプレーを採用してきたXperiaにも同じ気持ちを抱いている)。

あえてデザイン変えて「攻め」に転じた

 ただ、当のシャープとしては「デザイン的に賛否両論、真っ二つになっているのは理解している。むしろ、否定的な意見も出る方が、世間一般には認知されていると受け止めることができる。逆に何も声が出ない方が、マーケットに新製品を気がついてもらっていないわけで、そちらのほうが焦りを感じる」(関係者)というのだ。

 シャープとしては、同じようなデザインを何世代も踏襲し続けしていく方が「リスク」と捉えているようだ。似たようなデザインという「安パイ」に固執してしまっては、ユーザーに飽きられ、そのうちそっぽを向かれていまう。それよりも、あえてデザイン変更というチャレンジに取り組むことで、攻めに転じたかったようだ。

 ここ最近のシャープは、国内市場だけでなく、海外市場も意識したものづくりになりつつあるようだ。実際、今回のAQUOS R9もデザインを変更したことで、シンガポールなどからの引き合いが相当、強くなったという。東南アジアの国々は特に日本発の製品が大好きだったりする。

 「最近のスマホがつまらない」と東南アジアでも感じていたようなのだが、そんななか、珍しいデザインのスマホをシャープが出したと言うことで、シンガポールが一気に飛びついたようだ。

「10万円前後でこれだけのパフォーマンスが出ている製品はほかにない」

 総務省による割引規制が強化されて久しいが、もはやスペックモリモリのハイエンドが売れまくるという時代はとっくに終わっている。

 シャープとしてもスペックありきよりも「ユーザーの手が届く値段に収まる最高の使い勝手」をAQUOS Rシリーズで提供してきたという自負があるようだ。

 実際、これまでAQUOS Rシリーズはクアルコム「Snapdragon 8シリーズ」を採用していたが、今回のAQUOS R9はSnapdragon 7+ Gen 3という7シリーズとなっている。

 一見、スペックが落ちたような印象があるが、シャープの通信事業本部、小林繁本部長は「Snapdragon 7+ Gen3は、+が着いているだけあってほかの7シリーズに比べて格段に違う。+はぜひ太字で書いておいてもらいたいぐらい。お客さまの認識を調べると、チップの型番を重視する人に比べて、実際に触っての操作性の気持ちよさのを重要するという人のほうが3倍ぐらいいた。どうしても8シリーズが良いという人は一桁パーセントしかいない。圧倒的に触って気持ちいい、バッテリー持ち、値段のバランスが重視される。10万円前後の価格でこれだけのパフォーマンスが出ている製品はほかにないのではないか」と自信を見せる。

 メーカーとすれば、やはり昨今の円安基調も相当、ものづくりに影響があるようだ。

 今回、もうひとつの新製品であるAQUOS wish4では、画面サイズが6.6インチと、従来モデルの5.7インチから、かなり大型化している。これまでwishシリーズはどちらかといえば「コンパクトスマホ」的な訴求もしていたため、コンセプト自体が大きく変わった印象があるのだ。

いかにコストを下げ、別のところで個性を出すか

 ただ、取材をしてみると「ユーザーがYouTubeやSNSなど動画を多く見るというニーズがある一方、部材を調達する上で世界的に数多く流通しているインチ数のほうが安価に手に入りやすいという事情もある」(シャープ関係者)という。

 世界的に5.7インチというコンパクトな画面サイズは需要が減ってくる中、結果として、部材の流通量も減り、価格が高騰する傾向がある。

 世界的に需要のないインチ数を採用し続けるよりも、数多くのメーカーが採用し、大量生産でコストが安価となる6.6インチをあえて選んでものづくりをしたほうが、結果として安価に製造できるようになるというわけだ。

 もちろん、他社と同じインチ数を採用すれば、それだけでの差別化は難しくなる。しかし、AQUOS wish4の場合は「つよかわ」というコンセプトにより、耐久性と長持ちバッテリー、使いやすさを追求することで、他社との差別化を図っていくようだ。

 ソニーのXperia 1 VIも4K、21:9という独特なディスプレイはなく、他社でも採用されている汎用性のある部材に切り替えることで、コストの削減につなげている。

 日本メーカーとしては割引規制、さらには円安基調という逆風もあり、ここ最近は「いかに汎用品を使ってコストを下げつつ、別のところで個性を出すか」で生き残りをかけているようだ。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

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