格安SIMでIPv6が使えると何かいいことがあるのか?
ASCII.jp / 2024年7月7日 12時0分
ネット上にある「光回線が遅いときの●個の対策」みたいなものの多くに載っている「IPv6」。光回線でIPv6を使うと、どういうメリットがあるかは本題ではなく、本記事で取り上げるのは格安SIMでの状況について。IPv6対応は通信事業者次第で、対応していないサービスも多い。そして、そもそもIPv6に対応しているとなんらかメリットはあるのだろうか。
光回線のIPv6対応による速度差は基本的に経路違い
あらためてIPv6について簡単に説明しておくと、利用できるIPアドレスの数が非常に多いという点。IPv4では192.168.0.1といったように256の4乗(2の32乗)つまり約43億と地球人口より少ないが、IPv6では2の128乗(約43億の4乗=約340澗個)と圧倒的に多く、全部使い切ってしまう“枯渇”問題がなくなる。
IPv6は最近になって一般ユーザーも聞く機会が増えたので、新しい規格のようにも思えるが、前世紀末にはすでにできており、WindowsでもXPではすでにサポートされるなど、歴史のあるものだ。
そして、実はIPv6だからといって特段早くなる仕組みもない。強いて言えば、IPアドレスの枯渇にともなってNATのようなアドレス変換が不要になり、速度低下の要因が少ないということくらいだ。
また、光回線で言われているのも、実際にはデータの到達経路がIPv4とIPv6では異なることがあるためで、そのせいで速度が変化する場合がある(混雑が回避される)というわけだ。
IPv6対応のMVNOの格安SIMはまだ少ない
それでは格安SIMでIPv6を利用するにはどうすればいいかと言えば、単純にIPv6対応の格安SIMを選ぶ必要がある。まず、主要3大キャリアとそのサブブランド、楽天モバイルはすでに対応済み。最新機種で最新設定(APNなど)を使えば、何も意識せずともIPv6で接続できる。
MVNOの格安SIMでIPv6に対応する代表的なところではIIJmioがある。こちらも最新の接続設定での設定でIPv6で通信できる。IIJmioをMVNEとしてサービスを提供しているMVNOや、別ブランドだが、実質IIJmioのサービスを用いている、ビックカメラのBIC SIMなどでも同様だ。
一方、MVNOの大手でIPv6対応していない代表格がmineoだ。
なお、誤解してほしくないのが、IPv6で接続していても通常の設定ならばIPv4も同時に有効になっており、ユーザーは何も意識することなく利用できるようになっている。Webサイトで特別な仕掛けをしていない限り、IPv6でないと見ることができないコンテンツは現状ほぼ無いと言っていいので、通常の利用に不利益があるわけでは基本ない。
IPv6対応の格安SIMで速度を試した
では、IPv6の格安SIMで速度差があるのかどうか。IPv6に対応した速度測定サイト「Google スピードテスト」を使い、IPv6固定、IPv4固定の設定で速度の違いを試してみた。
用意したのはIIJmioとUQ mobileで、IIJmioはOPPO Reno9 A、UQ mobileはシャオミのRedmi 12 5Gを使った。
IPv6固定にするには、Androidでは設定でアクセスポイント設定のうち、プロトコルを「IPv4/IPv6」から「IPv6」に変更すればいい。反対にIPv4だけとするなら「IPv4」とする。
なお、今回はUQについては自動設定のため変更しても一部しか有効にならず、IPv6のオン/オフはできたがIPv6固定では試せていない。IPv6対応サイトでもIPv4の通信が混じっている可能性があることは留意いただきたい。一応、測定の前にはIPv6の通信の有無を確認している。
IIJmioでIPv6固定にしてアクセスしてみると、IPv6に対応しないWebサイトが当然ながらすべて見えなくなる。アプリやメールも同様だ。Googleをはじめ世界的大手のサービスや通信事業者のサイトならほぼIPv6に対応してほぼ問題なく通信できるが、国内の有名サービスやサイトでもIPv6固定にすると見えなくなったり、一部が表示されなくなったりするところが増える。
そして、IPv6固定にするといつも速度測定に利用しているOOKLA Speedtestやドコモのスピードテストのアプリも利用不可能。そこで、ウェブブラウザから利用できるGoogleのスピードテストで測定したわけだ。
平日の午前中、昼休みの12時30分ごろ、そして夕方18時と計測してみたが、特にIPv6の優位性が感じられないばかりか、逆に遅くなっているケースもある。これは、IIJmio/UQ mobileともに同様だ。そして、IIJmioの昼の時間の落ち込みも同様の傾向だ。
表には載せていないが、レイテンシについてもIIJmioは昼の速度低下時以外は40~50あたり、UQモバイルは30前後と、IPv6とIPv4の違いは感じられなかった。
前述のとおりIPv6かどうかでデータを通る経路や混雑具合が変わる可能性があるとは言え、あまり大きな差がついてないところを見ると、格安SIMについてはIPv6だから、IPv4だからといって優劣がつく状況とは言いがたい。
もちろんこの数値が日や時間が変われば変化する可能性があるため、インターネットのベストエフォートの誤差と考えたほうがいいだろう。
現時点では特段目的がないのであれば 無理にIPv6を利用したり、あえて対応のSIMを選ぶ必要はない
現状、格安SIMでIPv6で通信しても、特別に速度が早くなるわけでもなく、IPv6専用のコンテンツがあるわけでもないのだから、スマートフォンでは無理してIPv6に対応しなければならない理由はない。
IPv6はここ数年で利用率が上がってきているとはいえ、個人が使うインターネットの世界では少数派だ。当初IPv6で解決されるはずの課題だったIPアドレス枯渇問題も、大規模NAT(キャリアグレードNAT)をはじめとした技術や仕組みの構築で、現在個人レベルではあまり困らない状況になっている(ユーザーも特に何かを意識することはないはずだ)。
もし、格安SIMを使ってIPv6を活用するIoT機器を使う場合には対応の有無が問題になるときもあるが、普通に使う分には、当分の間はIPv6に対応しないことによるデメリットはないだろう。
やっぱりIPv6対応しているのがなんとなくイイ!
スマートフォンでIPv6対応にしたところで特別な差はないことはわかってもらえたと思うが、筆者もそうだが、最新のものには常に対応していないと嫌だという人なら、加入するサービスがIPv6対応かどうかを確認した上で加入してほしい。
そして、念のため、IPv6の確認サイトで状態を確認しておきたい。有名なところでは以下のURLのサイトなど(https://test-ipv6.com/)がある。IPv6が有効になっていないのなら、APN設定などを見直してみるといいだろう。
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