DeskMini X600採用ミニBTO PCでRyzen 5 8600Gなら性能・温度・騒音はどうなる?
ASCII.jp / 2024年7月9日 10時0分
前回に引き続き、サイコムの超小型BTOパソコン「Radiant SPX3300X600A」を紹介しよう。本機はASRockのベアボーンキット「DeskMini X600」を採用。容積1.92Lと超コンパクトで、サイズは80(W)×155(D)×155(H)mmとかなり省スペースなモデルとなっている。
標準構成のCPUは内蔵GPUの性能に定評がある「Ryzen 5 8600G」。それゆえ、メインPCとして不満なく使え、軽量なゲームならある程度遊べる。ゆえに、性能面でも満足できる人が多いだろう。
ただし、これはあくまでスペック上の話。実際は、PCパーツ構成やCPUクーラーの冷却性能によっては、性能が大きく上下する。また、いくら高性能でも常用できないほどの騒音が出るとなれば、「実用的」とは言えない。
そこで、本稿では以下のスペックにカスタマイズされた試用機を用い、定番ベンチマークソフトで性能と温度、騒音をチェックしてみた。
容積1.92Lの超小型PCの実用度をチェック!
Ryzen 5 8600Gは6コア/12スレッドのAPUで、内蔵GPUはRadeon 760M(8コア、2800MHz)となる。対して、上位の「Ryzen 7 8700G」は8コア/16スレッドのAPUだ。内蔵GPUはRadeon 780M(12コア、2900MHz)になるため、性能面では見劣りしてしまう。
ただし、BTOメニューの価格差は2万1210円と大きい。性能重視であればRyzen 7 8700G、コスパ重視であればRyzen 5 8600Gのままにしておこう。
CPUの性能はきちんと引き出せている
CPUは温度が上昇しすぎると動作がおかしくなるだけではなく、最悪熱で壊れてしまうこともある。こういった事故が起きないよう、CPUは温度や電力に関して制限が設けられており、既定の値に達すると動作クロックなどが自動で下がるようになっている。
安全や安定動作という面では非常にありがたい機能だ。しかしながら、冷却性能が低いCPUクーラーだと、CPU本来の性能が引き出せないというデメリットもある。
小型PCでは物理的な制限から、CPUクーラーも小型のものになりがちだ。そのため、巨大なCPUクーラーを搭載できるタワー型PCと比べると、同じCPUでも性能が低くなってしまうこともある。
特に、高性能なCPUは発熱が大きくなるため、性能差が広がりやすい。とはいえ、Ryzen 5 8600Gはミドルクラス。TDPが65WとデスクトップPC向けとしては抑え気味だ。ゆえに、Radiant SPX3300X600Aでも十分運用できるはず。
性能をチェックするにあたり、加藤勝明氏のレビュー記事「環境によってはGTX 1650に匹敵!?Ryzen 7 8700G&Ryzen 5 8600Gの実力は脅威」の数値を参考にさせてもらおう。なお、この記事ではメモリーがDDR5-5200、CPUクーラーが360mmラジエーターの簡易水冷モデルなので、試用機よりも性能が引き出せる環境で試している。
使用したソフトは、CGレンダリング速度からCPU性能を測ってくれる「CINEBENCH 2024」。10分間以上繰り返しレンダリングを行い、「pts」という独自単位のスコアーでCPUを評価してくれるベンチマークソフトだ。
CPU系のテストは、全コアを使用する「Multi Core」と、1つだけ使用する「Single Core」の2種類。それぞれ、CPUの最大性能、1コアあたりの最大性能を算出してくれる。なお、Multi Coreテストは全コアに高負荷が長時間かかることから、CPUクーラーの冷却性能のチェックにも向いている。
結果はMulti Coreが765ptsで、Single Coreが105pts。先の参考記事に掲載しているRyzen 5 8600GのスコアーはMulti Coreが782pts、Single Coreは107ptsだ。つまり、本機はMulti Coreで約2%、Single Coreでも約2%ほど低いということになる。
本機はDDR5-4800動作のメモリーを使っていることを考えれば、妥当なラインと言える。超小型な筐体でも、タワー型PCと遜色ない性能を引き出せている、といって良さそうだ。
90度制限が有効に働くも動作音は大きめ
では、CINEBENCH 2024動作中の温度はどうだろうか。上述のスコアーは冷却に余裕があるうえでの結果なのか、それともギリギリ耐えきっての結果なのかで、印象は大きく変わる。
温度チェックには、モニタリングツール「HWiNFO64 Pro」を使用。CPUやマザーボードなどの様々なセンサーから、PCの状態を細かく確認できるツールだ。これを用い、CPUの温度や電力をチェックしてみた。
CINEBENCH 2024のMulti Coreテストを実行し、終了直前の様子が以下となる。
注目した値は、「CPU Core」(CPUの温度)と「Thermal Limit」(温度制限)。どうやらCPU Coreが90度の時に、Thermal Limitが100%となっていたようだ。
つまり、Radiant SPX3300X600AではCPU Coreが90度以下になるよう、速度が調整されていることになる。そして、そのおかげか自動ダウンクロックの契機となる「Thermal Throttling」(サーマルスロットリング)は常に「No」。つまり、性能は下がっていないわけだ。
CPUの仕様を見てみるとTjmaxは95度。Tjmaxはザックリ言えば、半導体チップの最大温度で、HWiNFO64 Pro上では「CPU(Tctl/Tdie)」の許容範囲に相当すると考えられる。そして、CPU(Tctl/Tdie)は95度以下のためサーマルスロットリングは発動していない、ということになる。
言い換えれば、CPUを限界まで酷使せず安全側にマージンがある設定、と言えるだろう。とはいえ、CPU Coreの温度を見る限り、平均で88.9度と、ほぼ90度に貼りついているような状況だ。お世辞にも、CPUクーラーの冷却性能に「余裕がある」とは言えない。
しかし、動作クロックは平均で約4.7GHzと高水準を維持している。これらの挙動とベンチマークの結果を考慮すると、CPUクーラーの冷却性能とRyzen 5 8600Gの発熱が、絶妙なバランスで拮抗していると考えられる。小型PCではCPUクーラーが負けることが多いだけに、なかなか興味深い結果だ。 ちなみに、高負荷時の動作音は結構大きく、体感で言えば、ハンディ扇風機の強風くらいのうるささだ。ちなみに、アイドル時は非常に静かだった。試しに、正面約40cmの距離から騒音計で測ってみたところ、アイドル時で約35.4dBに対し、高負荷時は約43.1dB。側面では約48.6dBという結果になった。
日中昼間でもそこそこ気になる騒音だけに、長時間高負荷で使うのであれば、置き場所はよく考えたほうがいい。机の上に置く場合でも、なるべく離れた位置やディスプレーの裏など、工夫が必要かもしれない。
CPU内蔵GPUはフルHDでFF14が遊べるレベル
Ryzen 8000GシリーズのCPU内蔵GPUはRDNA 3世代を採用。コア数こそ上位のRyzen 7 8700Gより劣るとはいえ、Ryzen 5 8600Gのグラフィック性能も、CPU内蔵GPUとしては高いレベルが期待できる。
まず試したソフトが「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」(以下、FF14ベンチマーク)。こちらは比較的軽めのMMORPGで、つい先日新たにリリースされた大型アップデートに合わせたベンチマークソフトだ。
フルHD(1920×1080ドット)で遊べるラインはどこになるのかを探るため、プリセットの画質を変えながら試してみた。すると、「標準品質(デスクトップPC)」の設定で、ようやく最低フレームレートが30fpsを超えてくれた。
スコアーは「6151」で、評価は「やや快適」。多少スムーズ感は欠けるものの、プレイするうえで大きなハンデとなる表示の遅れはほぼないレベルとなる。画質を落としているとはいえ、フルHDの解像度で遊べる性能があることには、素直に驚いた。
とはいえ、標準品質は画質が結構低く、気持ちよく遊べるかと言われると少々言葉に詰まる。そこで、解像度をHD(1280×720ドット)まで落として、プリセットでどこまで画質を高められるかも試してみた。
フレームレートは平均約48.5fps、最低30fpsになったプリセットは、「高品質(デスクトップPC)」。スコアーは「6881」で、評価は「やや快適」となった。解像感は見劣りするものの、フルHD+標準品質よりもキレイに見えたので、こちらの設定で遊んでも良さそうだ。
続いて、対戦格闘ゲームのベンチマークツールとなる、「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」(以下、SF6ベンチマーク)も試してみた。「NORMAL」のスコアーは「40」と低く、「設定変更が必要です」となってしまった。
さらにプリセットの設定を下げ、プレイできるラインを探ってみたところ、「LOW」でスコアーは「83」の「問題なくプレイできます」。「LOWEST」ならスコアーは「100」になり、「快適にプレイできます」になった。
ただし、スコアーが「100」になる基準はプリセットごとに異なり、NORMALで60fps、LOWやLOWESTでは30fpsとなる。このタイトルを快適に遊ぶなら、CPUを1ランク上げたほうが良さそうだ。
最後は、重量級のアクションRPGとなる「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(以下、FF15ベンチマーク)だ。こちらはフルHDでプレイすることはまず無理なので、解像度をHDに設定。プリセットの画質を下げ、遊べるレベルを探った。
Radiant SPX3300X600Aは、「軽量品質」まで下げたところ、ようやく評価が「快適」となってくれた。
スコアーは「6151」で評価は「快適」だが、この数値は決して高くはなく、この設定でどうにか遊べるというもの。重量級のゲームは、画質設定を大きくいじる必要があるだろう。
なお、「3DMark」のスコアーも参考までに掲載しておこう。古めのビデオカードと比較すると、おもしろいかもしれない。
まとめ:普段使いはもちろん、ライトゲーミングもイケる超小型PC
ガッツリ遊べるゲーミングPCが欲しいというなら、ビデオカードを搭載できないRadiant SPX3300X600Aは不向きだ。しかし、シミュレーションやRPG、インディーズの軽めのPCゲームを楽しみたい、といった用途であれば、十分期待に応えてくるだけの実力がある。
また、6コア/12スレッドCPUなので、ちょっとした写真・動画編集なら、作業で極端に待たされるといったこともないだろう。ただし、高負荷時の騒音は大きめなので、なるべく全コアに負荷がかからないような使い方が望ましくはある。または置き場所を工夫してもいい。
オプションのVESAマウントキット(+1940円)を使い、ディスプレーの背面に装着してしまうのも1つの手だ。本体が小さいからこその設置方法と言える。
もちろん、省スペース性だけを考えるならノートPCには敵わない。しかし、CPUをはじめとするPCパーツを換装できるので、将来的にアップグレードできる点は強みだろう。デスクトップPCが欲しいけど、タワー型PCは置きたくないと考えているなら、ぜひチェックして欲しい1台だ。
なお、現在はサマーキャンペーン中(2024年8月26日まで)で、送料(実質2920円)が無料。Crucialの高速SSD「T500」の1TB/2TBモデルは5000円引きになるので、気になってる方はぜひこの機会お見逃しなく。
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