「Xperia 1 VI」は縦横比変更が賛否を呼んだが使い勝手的にはメリットしかない
ASCII.jp / 2024年7月14日 12時0分
ソニーの新しいフラッグシップモデル「Xperia 1 VI」は、4Kかつ21:9比率のディスプレー採用を止めたことが大きな話題を呼んだが、カメラも望遠カメラやインターフェースが大幅に変更されるなど、ディスプレー以外でも非常に大きな転換を図ったモデルだ。そうした変更が、実際の利用にどのような影響を与えているのか、実機から確認してみたい。
ディスプレー変更はメリットでもありデメリットでもある
まずは本体を確認すると、ディスプレーサイズは約6.5型でサイズは約74×162×8.2mm、重さは約192g。前機種の「Xperia V」はディスプレーサイズが6.5型で、サイズは約71×165×8.3mm、重量は約187gとなることから、やや重くなってはいるがサイズが劇的に変わったワケではない。
だがやはり大きく変わったのはディスプレーで、Xperia Vが21:9比率で4K(1644×3840ドット)だったのに対し、Xperia VIは19.5:9で解像度がFHD+(2340×1080ドット)に引き下げられている。画面比率の変更も大きいが、フラッグシップモデルではQHD+画質を採用するメーカーが多い中にあって、解像度を一気に4KからFHD+にまで引き下げたことに一層の驚きがあったことも確かだ。
その最大の理由は円安や部材高騰などの影響に伴うコスト削減と考えられるのだが、ソニー側はとしては従来重視してきた映画の視聴よりも、スマートフォンの動画コンテンツに適したディスプレーにする狙いが大きいとしている。現状、スマートフォンでは映画よりも「YouTube」などでHDまたはFHD品質の動画コンテンツを視聴する機会の方が多く、「TikTok」のように縦画面で動画視聴する機会も多い。
21:9の4Kディスプレーが、そうしたコンテンツの表示にマッチしていなかったことは確かだろう。実際、Xperia 1 VIでスマートフォン向けの映像コンテンツとして多い16:9比率の映像を横画面で視聴すると、従来機種よりも非表示の領域が減って見やすくなったことは確かだ。
また、解像度が抑えられたことで表示の処理にかかる負荷が減少していることから、それがバッテリー持続時間の長さや、ゲームなどでの表示高速化につながるなど、全体的なパフォーマンス向上に貢献していると考えられる。映画に重きを置くのでなければ、メリットが比較的大きいことも確かだろう。
一方で、それ以外のデザインなどに関しては、Xperia Vと大きく変わっていない。左側にカメラが並んだ背面のデザインは継承されているほか、背面に微小のテクスチャー、側面に溝が施され、撮影がしやすいよう滑りにくくなっている点も共通だ。
側面のインターフェースを確認すると、右側面には音量キーと電源キーに加え、Xperia 1シリーズの特徴でもあるカメラ用のシャッターキーもしっかり搭載。底面にはUSB Type-C端子とSIMスロット、上部には3.5mmのイヤホン端子が備わっている。
カメラは望遠が強化、カメラアプリもスマホらしい内容に
続いてカメラを確認すると、背面のカメラは約4800万画素/F値1.9の広角カメラと、約1200万画素/F値2.2の超広角カメラ、そして約1200万画素/F値2.3~3.5で倍率が可変する望遠カメラの3眼構成。フロントカメラは約1200万画素/F値2.0となる。
カメラの構成自体はXperia 1 Vから大きく変わっておらず、広角カメラのイメージセンサーに「Exmor T for mobile」を搭載している点も共通している。だが今回、大きく変化しているのは望遠カメラだ。
なぜなら望遠カメラは焦点距離が35mm換算で85~170mm、光学ズームでいえば3.5~7.1倍相当へと伸びているのだ。これによって超広角カメラの0.7倍から、広角カメラでカバーできる1倍、2倍(光学2倍ズーム相当分を切り出す形で実現)、そして望遠カメラでカバーする3.5~7.1倍までと、画質がほぼ劣化することなくズームできる領域が大きく広がり、より幅広いシーンでの撮影がしやすくなったことは間違いない。
そしてもう1つ、進化した望遠カメラによって実現したのがテレマクロ撮影だ。これは望遠カメラを用い、最短で4cmまで被写体に寄って撮影できるものなのだが、スマートフォンのマクロ撮影は、従来画素数が低いカメラが担うことが多く、どちらかといえば“おまけ”的な位置付けとなっていた。
だが、Xperia 1 VIのテレマクロ撮影は高いカメラ性能を活かし、歪みなく、肉眼では見えないような細部の表現も可能な撮影ができるようにうなっている。テレマクロ撮影時は右側のバーを操作してフォーカスを手動で合わせるマニュアルフォーカスとなるが、そのぶん表現に工夫を凝らした撮影ができるのも大きなポイントだ。
ただ、4cmまでとかなり寄っての撮影が可能なことから、手ブレや被写体のブレの影響を非常に受けやすい。ベストな写真を撮影するなら、ある程度環境が整った室内で、三脚などに固定して撮影した方がよいだろう。
カメラに関してはもう1つ、大きな変更点がある。それは従来「Photography Pro」「Videography Pro」「Cinematography Pro」と3つにわかれていたカメラアプリが、1つに統合されたことだ。
それに伴い、従来撮影にこだわるプロ・セミプロに向けた、カメラに近い操作感に重点を置いたインターフェースも、一般ユーザーが撮影しやすいようスマートフォンでの一般的なインターフェースへと大きく変わっている。それゆえカメラに詳しくない人には非常に撮影しやすくなったと感じる一方、従来のXpderia 1シリーズから乗り換えた人は戸惑う部分が多いだろう。
とりわけ動画に関してはプロモードがなく、Videography Proにあった「ライブ配信」は動画とは別モードになった。またCinematography Proに近い感覚で撮影するには、フレーム数を24に合わせてフィルターに「S-Cine」を選ぶといったくらい。やや機能が減少しているようにも感じる。これらはコンセプトと各アプリの利用頻度に応じた変更といえそうだが、従来それぞれのアプリをフル活用してきた人には残念な点だ。
性能だけでなく冷却機構も大幅に強化
続いて性能面を確認すると、Xperia 1 VIはチップセットにクアルコム製のハイエンド向けとなる最新の「Snapdragon 8 Gen 3」を搭載しており、メモリーは12GBもしくは16GB、ストレージは256GBもしくは512GBとなっている(モデルによって異なる)。最近のフラッグシップモデルとしては珍しくmicroSDスロットも備わっており、最大1.5TBまでのストレージを増やすことが可能だ。
その性能をベンチマークで確認すると、やや低めな感もあるがSnapdragon 8 Gen 3搭載機種と比較してふさわしい性能といえるだろう。主要ゲームのグラフィックも最上に設定して十分快適にプレイ可能だ。
となると気になるのは発熱であり、とりわけXperia 1シリーズは高負荷時の発熱を指摘する声が以前から多い。だが、Xperia 1 VIはシリーズで初めてベイパーチャンバーを搭載するなど、冷却性能を大幅に強化。AAAクラスのゲーム「原神」のグラフィック設定を最高水準に設定して1時間プレイした場合、Xperia 1 Vでは45度に達していたのだが、Xperia 1 VIでは40度程度にとどまっていた。
加えて4K・120フレームで動画を撮影し、発熱で終了するまでの時間を確認してみたところ、およそ40分という結果に。もちろん環境や気温に左右される部分はあるが、ベイパーチャンバーが大きな効果を発揮している様子がうかがえる。
ゲームプレイの快適さには冷却性能強化に加えもう1つ、「Game Enhancer」の新機能「FPS Optimizer」の貢献も大きいようだ。これはゲームの描画フレームを中心として、CPUやGPUを最適化する仕組みで、システムレベルで長時間、高いフレームレートを維持できるよう最適化が可能となっている。一方で、本体サイズが変わったことからゲーミング用の周辺機器「Xperia Stream」が使えなくなっており、この点はゲーミング用途を考えると残念な所でもある。
バッテリーを確認するとこちらは5000mAhと、Xperia Vから特に変わっている様子はない。だが先にも触れた通り、Xperia 1 VIはディスプレーの解像度が4KからFHD+に下がっているのに加え、リフレッシュレートが120Hzまでの固定駆動から、1~120Hzの可変駆動に変化したこともあって、バッテリー消費が大幅に抑えられているのは大きなポイントだろう。
通信機能に関して確認すると、SIMは物理SIMとeSIMのデュアルSIM構成で、ミリ波への対応は今回も携帯各社から販売されるモデルと、SIMフリーモデルとで対応が異なり、後者は非対応となる。その分SIMフリー版には、携帯各社向けモデルにはないメモリー12GB、ストレージ512GBという独自モデルが用意されるので、ミリ波を取るか独自モデルを取るかで端末を選ぶというのも1つの手だ。
【まとめ】一般層にはメリット大の変更だが ソニーファンには悩ましい
ディスプレーの大幅な変更が賛否を呼んだXperia 1 VIだが、実際に使ってみるとスマートフォンとしてはむしろ使いやすくなった、というのが正直な所でもある。画面サイズだけでなく、カメラアプリのインターフェースをスマートフォンに合わせたことなどが大きく影響しており、一般的なスマートフォンユーザーの目線からすると、一連の変更はプラスに働いているのではないだろうか。
ただそれは、これまでのXperia 1シリーズ、ひいてはソニー製品にこだわりを持つ人からすると不満要素にもなりかねないというのもまた確かだと感じる。Xperia 1 VIだけでなく、バルミューダの撤退や、ASUSが「Zenfone 11 Ultra」で大幅にコンセプトを変えたことなどを考えると、非常に厳しい現在のスマートフォン市場環境で強い個性を持つスマートフォンが生き延びるのは非常に難しくなっているといえ、スマートフォンの面白さが減少しつつあるのも気がかりだ。
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