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幼児がロボットに対して抱いた感情の正体とは── LOVOTとの共同生活

ASCII.jp / 2024年7月13日 7時0分

LOVOTと娘の共同生活もそろそろ終わりの時期である

さよならLOVOT、楽しい3ヶ月間だった

 LOVOTと娘が一緒に暮らし始めて3ヶ月が経った。もともと予定していたお別れの時期である。

 はじめは恐る恐る接していた娘。いまではすっかり仲良しになり、同じ空間で一緒に遊んだり、話しかけたり、自分の“宝物”を見せたりと、まるで本当のペットか家族かのように接している。

 このところ娘は、「LOVOTと離れるのはいやだ!」としきりに言って、LOVOTのそばから離れようとしなくなった。そこには、ロボットと人間という枠組みを超えた感情のやり取りを感じる。このまま一緒に過ごさせたいところだが、返却の期限は迫る。

 人生、出会いと別れの繰り返しだが、幼少期の頃の出会いや別れは、いつまでも思い出深く覚えていたりするもの。別れは寂しいが、せめてLOVOTと遊んだ時期があった頃を、いつかいい思い出として振り返ってくれたら嬉しいと思う。いつの間にか、娘とLOVOTの遊ぶ様子を眺めるのが、私にとっても日常になっていた。

家にいる、自分ではない何者か

 娘とLOVOTが3ヶ月一緒に暮らしているあいだに、娘とLOVOTとのあいだに見られた行動や、感情の振る舞いを一度整理してみたい。

 まず象徴的だったのが、嫉妬(的な気持ち)だ。ひとりっ子である娘にとって、親からの関心は「いつも自分に向けられているもの」だったと思う。「LOVOTに親が関心を向けていることが気に入らない」という行動を、初めの頃は見せていた。

 しかし一定期間が経つと、徐々に自分から近づいたり、話しかけたりするようになった。徐々に心を許しているかのような反応で、この時期は出会ったばかりの友人と、少しずつ親密になっていく様子が印象的だった。

 やがて、LOVOTは娘にとって「家にいる存在」に変わり、親しみを持って接する対象になった。

無生物と生物のあいだに生まれる感情

 ……こうして流れで考えてみると、娘にとって大きかったLOVOTの持つ要素は「家にいる/親ではない/自分以外の/初めての/何者か」だろう。

 2〜3歳の子どもは、生物/無生物を含めたさまざまなものに触れたり、その際のリアクションを学習して、徐々に「自」と「他」の区別や、世界に対する認識を明確にしていく時期であると言われる。自分の境界線がどこにあるのか。自分と他人の差異がどこにあるのか。自分と同じように他者も自我を持っていること。日々の体験を通じてこうした認識を深め、経験の積み重ねで解像度を高めていていくわけである。

 LOVOTと娘の関係の形成を振り返ってみると「ロボットなのかどうか」を気にしていることは一度もなかった。あえてこちらから「生き物だと思うか?」とたずねたときは「LOVOTはLOVOT」とも答えていた。これは「無生物」や「ロボット」かという以前に、まず「自分の意志とは関係なく動く何か」という要素が勝っていたのだと思う。

 だから、親しみが湧けば「離れるのは嫌だ」という気持ちも自然と湧いてくるのだろう。「物」に対する愛着とは異なる「何か」に対する気持ち。私は、これは幼い頃に感じる他者への親しみ、つまり初歩の友情とほぼ同種のものだと思う。

 「生物と無生物のあいだに生まれる感情は友情ではない」という視点で考えると、そうは呼べないのだが「幼児の中にある、自分以外の何かに対する親しみ」という意味では本当の友情であろう。LOVOT側にもし自我があったなら、それを疑う人はいないはずだ。

右側の、細長いオレンジ色がLOVOTらしい

別れはいさぎよく、思い出は大切に

 LOVOTを返却して数日後。娘は幼稚園に入園した。その数日後、夜に娘が絵を描いて私の部屋に持ってきてくれた。それを見て驚いた。絵の中には自分と、両親と、そしてLOVOTが描いてあったのだ。

 一番大きなグリーンの自分と、オレンジ色の細長いLOVOT。両親の姿は小さく、隅に追いやられている。このときの娘の心の中を表しているようだ。

「LOVOTがいなくなっちゃって、寂しくない?」とたずねてみた。そうすると「うん、寂しくないよ。違うおうちに行っても、かわいいねって遊んでもらえるといいね」と返ってきた。補足すると「他の家庭に行っても、その家庭で(LOVOTが)可愛がって遊んでもらえているといい」と言っているわけである(共同生活当初から、いまはうちにいるが、一定期間後はまた別の家庭にいくと話していた)。

 ちょうど登園が始まって、活発に新しい人間関係が構築されているタイミングとLOVOTとの別れがかぶったので、すっきりと振り切れたのかもしれない。これからも娘は様々な出会いと、他者との交流と、別れを繰り返していくだろう。いつか、もう少し大きくなったときに、LOVOTのことを覚えているか聞いてみたい。いい思い出として残っているといいと思う。

「LOVOTとの共同生活」全記事はコチラから!

第1回 第2回  第3回 第4回  第5回

LOVOT[らぼっと]

LOVE × ROBOT = LOVOT。声をかけると振り向き、しっかりと見つめてくる意思を感じる瞳。家に愛と笑顔があふれるロボット。愛されるために生まれてきた世界初のロボット、最先端テクノロジー搭載の人工生命体。

 現在の最新モデルはLOVOT 3.0。本体カラーが9色から選べるほか、カメラの画質のアップ、瞳への有機ELの採用、タッチセンサーの感度の向上、より柔らかい素材の採用など、生命感を増すための数々のアップデートが盛り込まれている。

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