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名匠・山田洋次監督が語る“映画作りへの思い”

ASCII.jp / 2024年7月22日 17時30分

「第14回衛星放送協会オリジナル番組アワード」で特別表彰された山田洋次監督

 「第14回衛星放送協会オリジナル番組アワード」授賞式が7月12日に東京都内で開催され、ゲストとして山田洋次監督が登壇した。

 同イベントは、衛星放送協会に加盟する各放送局が専門性を生かして企画・制作したオリジナル作品の魅力をより多くの方に知ってもらうことを目的に、他のメディアにはないオリジナリティーに富んだ有料・多チャンネル放送ならではの作品を讃え表彰するもの。山田監督は、映画「男はつらいよ」シリーズが1969年の劇場公開から今年で55周年を迎え、長年にわたって国民に愛される作品を創作し続けたことへの敬意と、作品のオンエアを通じて衛星放送の普及にも寄与されたことを讃え、特別表彰された。また、表彰式ではサプライズで前田吟が登場。山田監督に花束を贈呈したほか、倍賞千恵子がVTRで祝福のメッセージを寄せた。

 今回、授賞式後に山田監督にインタビューを行い、表彰された感想や映画制作への情熱やこだわりなどについて語ってもらった。

――特別表彰された感想はいかがですか?

「(衛星放送の普及に寄与したということを)考えたこともなかったので、ちょっと面食らっています。でも、こういうかたちで僕の作品が褒められるっていうことは、大変うれしいことですね。新人監督だった頃はアルバイトでテレビの脚本を何百本も書いていまして、『寅さん』もその中の一つですからね」

――表彰式では前田さんの登場や倍賞さんのお祝いコメントといったサプライズもありましたが?

「いやぁ、びっくりしたね。彼が元気なのが驚きだね(笑)。倍賞さんもありがたいことにコメントをくれて。2人は僕にとって同志ですからね。俳優なしに映画を考えることはできないわけですから。もちろん(テーマという)一つの素材があるわけだけど、“一体、誰がこれをやるんだ”っていうことを決めないと、そこから先に進まないわけですから。特に僕が脚本を書く時は、大体いつも主役は決めて書いていましたから」

――作品作りのこだわりについて教えてください。

「うーん、難しいね…。やっぱり“僕自身が感動できなきゃしょうがない”というところですかね。いろんなシナリオや映画の構想を考えたりしていると、いつの間にか“自分”というものから離れて『こんなことに感動するんじゃないか』『こんなことが可笑しいんじゃないか』と思ったりする。でも、そうなっちゃいけないんだね。本当に“僕自身”が納得しているのか、“僕自身”が感動しているのか、“僕自身”が可笑しいと思っているのか、っていうところなんですよ。結局、(作品には)“自分”というものが出ちゃうんですよね。

 黒澤(明)さんの現場を見ていて、つくづくそう思ったもんなぁ。あのすさまじい真剣さっていうのは、自分自身の中から何かを取り出して掘っているっていうか…。だから、“自分”以上でも、“自分”以下でもない。でも、正直に“自分”が出れば、観客にも何かが伝わる。そういうことじゃないのかな」

――「男はつらいよ」劇場公開から55年。長かったですか、短かったですか?

「どうだろう。そんな長いという感覚はないね。だって、『寅さん』を作るのは面白かったもの。俳優さん、スタッフさんという家族みたいな人たちと、また会えるという、それの繰り返しだから、年に1回故郷に帰ってくるみたいな、そんな感覚でしたから」

――これだけ長く現役を続けていらっしゃって、疲れたから休みたいと思われたりはしないのでしょうか?

「肉体的にはどんどん年を取って衰えていますから、疲れたら休みたいとは思いますよ。当たり前だけどね。でもそれは、絵描きだって、音楽家だって、みんな一緒じゃないかな。まぁでも、映画作りが嫌になるってことはなかったですね。“新しいことをやる喜び”っていうか、『今度、こんなことをやるよ』って言うと、仲間たちが『いい! 面白い!』って言ってくれる喜びが原動力なんだと思います」

――作品のアイデアは、どういった経緯で生まれるのですか?

「それは作品によってさまざまだから、ひと言では言えないものがありますね。いろんな方法で発想をかたちにするわけで、『こういう作品を作ろう』という時もあれば、街の中である風景を見て『こんなの、映画にならないかな』と思ったり。『寅さん』なんかは『渥美清という役者が面白い』と思ったからで、『この人が主役だったら、どんなキャラクターがいいだろうか?』というところから、『ああいう仕事で、妹がいて、家族がいて…』という道具立てが生まれてくるんだよね」

――映画でファンに伝えたいメッセージとはなんでしょう?

「この間、台湾の映画で『本日公休』という作品を見たんだけど、田舎の床屋の話で、床屋の家族と床屋に来るお客さんの交流をしみじみ描いているんだよね。『あんな映画が、昔の日本にもあったな』っていう。そういう映画を今、台湾人がきちっと作ってる。そんな(田舎での人々の交流をしみじみ描くような)感じで、僕としては『こういう暮らしを大切にしたい』という思いが常にあるんだよね。おいちゃんが寅を見て、『バカだねぇ、お前は』と言っている世界。『そういう世界を大切にしたい』という思いですね」

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