ドコモ「dアニメストア」は動画サービスの“勝ち組”になった
ASCII.jp / 2024年7月24日 7時0分
ここ最近のNTTドコモは、キャリアオリジナルのサービスを相次いで終了させてきた。
dデリバリー、dカーシェアマイカーシェア、dミールキット、dトラベル、dゲーム、dコインといった、いわゆるd系サービスだけでなく、iコンシェルやしゃべってコンシェルなど、ケータイのころから親しまれていた待ち受け画面に表示されていた情報配信サービスまでもリストラされてしまった。
確かにユーザーからすれば、NTTドコモが提供しなくても、様々な企業によるサービスを利用すれば何ら不自由は感じない。
実際、インターネットにおけるコンテンツと言えば、動画配信はNetflix、Amazon Prime、音楽であればSpotifyやApple Musicなど海外発のサービスを使っている人が多いだろう。
キャリアのサービスはショップで「機種変更が安くなるから」と猛烈にプッシュされて仕方なく契約し、いつの間にかチャリンチャリンと毎月、利用料が引き落とされて、何故か悔しい思いをするなんてこともあったりもする。
「キャリアのサービスなんて不要」と思える一方で、スマホ初心者からすれば、ドコモショップの店員さんにお勧めされ、使ってみて便利だったとメリットを感じることもあるだろう。キャリアのサービスは通信料金と一緒に請求が来るため、契約しやすいという利点もある。
まさにキャリアが提供するサービスは一長一短があると言えるだろう。
そんなキャリアサービスをここ数年、徹底的に切り捨ててきたNTTドコモであったが、6月に新社長に就任した前田義晃氏は、iモード全盛期から同社でコンテンツ開拓などを手がける「非通信分野のプロ」とも言える存在だ。
旧dTV「Lemino」は「全然やるつもり」
NTTドコモでは、動画配信サービスとして長年、「dTV」を提供してきたが、2023年に「Lemino」という名称に変更し、サービス拡充を図ってきた。
海外勢の動画配信サービスが勢力を拡大する中、NTTドコモはまだまだLeminoに注力していく気があるのだろうか。
前田社長は「全然やるつもりでいる。Leminoは試行錯誤中だが、オリジナル作品を作っていくつもり。お客さんに対して、ちゃんとターゲットを明確にしていけば、競争力は発揮できると確信している」と語る。
Leminoでは「PRODUCE 101」というサバイバルオーディション番組を吉本興業と共に制作して配信。関連グッズをドコモショップで販売したところ、品切れが続出したという。
競争力のひとつとなりつつあるのがサッカーだ。LeminoではJリーグと2025年までの放映権契約を締結し「2024JリーグYBCルヴァンカップ」を配信している。
前田社長は「Jリーグとは関係性を強化している。海外からビッグクラブを呼んできて、試合を主催するようなことも手がけている。Jリーグとビジネスを一緒に展開することで、ユーザーの裾野を広げていきたい」という。
サッカー、ボクシングなどスポーツを軸に
先日、国立競技場の運営にNTTドコモが携わるというニュースが出たが、共同運営のパートナーとして名前が挙がっているのがJリーグだ。単に試合を配信するだけでなく、スタジアムを一緒に運営することで、さらなるビジネスチャンスの拡大を狙う。
また、ベガルタ仙台などでは、地元のドコモショップがファンと一緒に応援するといった取り組みも実施。仙台市内にあるd払いが使えるお店でファンが支払うと、d払いアプリを経由してチームがファンとコミュニケーションできるような仕組みも提供してるという。
サッカーだけでなく、9月3日には「NTTドコモ Presents」というカタチでボクシングの「井上尚弥 vs TJ ドヘニー、武居由樹 vs 比嘉大吾」をLeminoで独占無料生配信することが明らかになった。試合観戦チケットは、dカード GOLD契約者、dポイントクラブ会員に限定で先行抽選販売も実施する。
前田社長は「サッカーJ3やルヴァンカップ、ボクシングの井上尚弥さんの試合とか、Leminoならではの存在感を作りたい。動画配信サービスは総合編成的にやるようになると全く差異が出なくなってしまう。結局、外資の強いところを見ても、総合編成と言いつつもオリジナル作品が強い。動画配信サービスは自分が好きなもの、見たいものを2つぐらい、サービスを契約して見るというイメージが強い。その選択肢のなかにどう入っていくかが重要になる」と語る。
dアニメストアは動画配信サービスの「勝ち組」に
動画配信サービスは競合が多く、生き残りをかけたオリジナリティ勝負になりつつあるが、一方で、もはや生き残って「勝ち組」になっているのが、dアニメストアだという。
前田社長は「dアニメストアは、結果論にはなるが、今、アニメ専業配信サービスがあれしかなくなっちゃっている。これはこれでラッキーかもしれない。ただ、いまだに新規契約者はガンガン伸びているし、周辺サービスを提供するという意味で言うと、コミックの配信も結構うまくいっている。アニメ作品から入って、コミック全巻買いませんかキャンペーンのようなものをやると、かなり売れていく。まだまだこういうアプローチもアリだなと実感している。だからこそ、オリジナリティが大事ということになってくる」と語る。
豊富な資金力を武器に「日本のユーザーが見たいと思うコンテンツ」を提供するという意味においては、キャリアが提供するコンテンツサービスはこれから伸びしろがあるのかも知れない。
筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)
スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。
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