【レビュー】Apple Vision Proはアップル流「耳をふさがないヘッドホン」だ
ASCII.jp / 2024年7月26日 19時0分
アップルが6月末に日本で発売した“空間コンピュータ”「Apple Vision Pro」は、本体に内蔵するオーディオポッドの音質がとても優秀です。オーディオ機器としてのApple Vision Proの魅力を、2回のレポートに渡って掘り下げてみようと思います。
Apple Vision Proが内蔵する「オーディオポッド」がすごい
Apple Vision Proは本体に固定されている左右のストラップに、デュアルドライバーユニット構成の「オーディオポッド」と名付けたスピーカーを内蔵しています。ユニットから生まれた音はオーディオポッドの細いスリットから出力されて、耳に直接送り込まれます。
この時にApple Vision Proは独自の自動音場補正機能であるオーディオレイトレーシングを駆使して、ユーザーがいる部屋の音響空間を再現します。筆者もApple Vision Proのサウンドを聴くたびに舌を巻いています。音の力強さが小さなユニットのサイズを明らかに超えています。加えて、実体感の豊かな音が耳もとで分厚く鳴るので、Apple Vision Proで再生するコンテンツの世界に深く入り込めます。
音場が大きなスケールで描かれ、見晴らしもクリアです。筆者はマンション暮らしなので、わが家のリビングルームではサウンドバーをフルパワーで鳴らせる時間帯等の条件が限られます。Apple Vision Proは音楽や映画の空間オーディオ再生をいつでもベストコンディションで楽しむことができます。
Apple Vision Proは本体内蔵のカメラによるパススルー映像の表示に対応していますが、オーディオも耳をふさいで聴くスタイルにしてしまうと、装着したまま動き回れるスタンドアロンのヘッドセットとしては危険を伴います。ゆえにアップルは耳をふさがない開放型スタイルを選択したのでしょう。
Apple Vision Proによるオーディオ再生のパフォーマンスは、いま人気の耳をふさがないイヤホン・ヘッドホンの中でもトップクラスに位置付けることができます。現在、アップルのAirPodsシリーズには耳をふさがない完全開放型のワイヤレスイヤホン・ヘッドホンがありません。Apple Vision Proのオーディオポッドだけをヘッドバンド状にして、アップルらしい洗練されたデザインのウェアラブルオーディオに仕上げることができれば、控えめに言っても「バカ売れ」するだろうと筆者は思います。AirPods Maxに近い7〜8万円ぐらいの価格でも買いたいです。
今秋にAirPodsの新しいラインナップが発表されるとしたら、筆者は耳をふさがないAirPodsの登場が有り得ると思うし、期待したいです。
AirPods Proを組み合わせて「音もれ」をケア
なお、Apple Vision Proのオーディオポッドによるサウンドは鮮やかで力強いぶん、「音もれも盛大です。周囲に人がいる環境で使う場合は、音が漏れることを前提とした準備が必要です。つまりイヤホン・ヘッドホンを用意しましょう。
ヘッドホンはApple Vision Proのバンドとぶつかるため、あまり相性が良くありません。ワイヤレスイヤホンとの組み合わせがベターです。
Apple Vision Proには3.5mmヘッドホン出力がないので、使える外部のオーディオ機器はBluetooth接続によるワイヤレスオーディオデバイスになります。ところがApple Vision ProにペアリングできるデバイスはアップルのAirPodsシリーズ、またはBeatsによる新しい世代のワイヤレスイヤホンやヘッドホンに限られています。Apple Vision Proが搭載するチップセットと同期させるために特殊な仕様にしているのだと思います。
筆者が試した2024年7月中旬時点では、他のブランドのBluetoothオーディオ機器はペアリング設定の画面に表示もされず、ペアリングができません。将来はソフトウェアのアップデートなどにより解消されるのかもしれませんが、対応する機器が現れたらまた報告します。
次回はApple Vision ProでApple Musicによる空間オーディオや、その他のアプリによる音楽再生について、色々試したことをレポートします。
筆者紹介――山本 敦 オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。
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