夏のヘッドフォン祭 mini 2024レポート、突然のfinal新ヘッドホンに会場がわく!
ASCII.jp / 2024年7月29日 6時0分
夏のヘッドフォン祭 mini 2024が7月27日に開催された。場所は恒例のステーションカンファレンス東京で、今回も開場直後から熱心なリスナーがたくさん詰めかけた。多くの新製品からいくつか紹介する。
finalが急遽持ち込んだ、ヘッドホン試作機
最初のトピックスはfinalがサプライズで新型ヘッドホンの試作機を突然持ち込んだことだ。ギリギリ間に合ったということで、昼過ぎにスタッフがハンドキャリーで持ち込んだ。
機種名は「D8000 DC」と「D8000 DC Pro」で、それぞれ現行の「D8000」と「D8000 Pro」の後継機となる。ドライバーは新規となり、振動板の材質は同じだが設計が異なるものだという。また、「D7000」で投入したノウハウも反映しているようだ。
ハウジングは仮組みなのだが、外観でもっとも特徴的なのはイヤーパッドが厚くなっていることであり、これは目指すサウンドのために内部の容積を確保したかったからだという。そのサウンドとはヴォーカルに焦点を当てることだという。年内発売予定で、価格は現行「D8000」系よりもやや高くなりそうだ。
藍色が美しい、FOSTEXのヘッドホン
FOSTEXは伝統染料「本藍」で仕上げたハウジングを採用した新しいハイエンドの平面磁界型ヘッドホンを2機種展示した。「TH1100RP」は開放型、「TH1000RP」は密閉型という違いがあり、価格はTH1100RPが38万円前後、 TH1000RPは32万円前後。ドライバーも進化している。
写真はドライバーの比較。左が従来のRPドライバー、中央が最近発売された「T50RPmk4」のドライバー、右が新規開発したドライバー。振動板面積が広くなり、マグネットが増えている。
TH1100RPの音を聴いてみると、広い音場で細かい複雑な音の立体感の再現がひときわ高い。TH1000RPで聴いてみると、密閉型ながらTH1100RPと似た音調を実現して密閉型ならではのパンチもある。さすが平面磁界型の老舗らしく優れたチューニングがされていると思う。
ワイヤレスヘッドホンを有線化した双子の新製品
Focalは双子の新製品といえる開放型の「HADENYS(ハデニス)」と密閉型の「AZURYS(アズリス)」を展示。価格はHADENYSが13万7500円、AZURYSが11万円と、このブランドとしては低く抑えている。
つまり、Focalヘッドホンの入門機種として、手を出しやすい価格帯を目指した戦略的な製品だ。試聴してみると、両機とも音のレベルは高い。HADENYSは開放型だが密閉型のように低音の密度感があり、AZURYSは密閉型だが広がりのある点が面白い。
より輝きの増した銀色がまぶしいSP3000
アユートでは、Astell & Kern「A&ultima SP3000」のプラチナコートモデルを展示した。本モデルは限定生産となり、独自のブート画面のロゴを採用している。これはAstell & Kernのフラッグシップモデルでは伝統になっている特殊素材を用いたモデルであり、音は従来モデルよりも落ち着いた音調のように感じられた。
qdcブランドでは開発中のスティック型DAC「QD1」を参考展示。DACチップとしてCS431998をデュアルで搭載する。詳細はまだ詳しくはわからないが、価格は3万円前後となるようだ。qdc「White Tiger」を使用して音を聞いてみたが音質は極めて高い。とても楽器音が鮮明で力感もある。
FitEarはカスタム版のIMargeを展示
FitEarは堀田氏開発の「IMarge」のカスタムバージョンを展示。単にカスタム化しただけではなく、増えた容積を考慮して内部にカーボンフェルトを貼って音の調整している。これにより低域を締めて付帯音も低減できるそうだ。また遮音性も向上するという。
なお、色が限定される代わりに4.4mm端子のケーブルのグレードが高いフジヤエービック限定モデルも紹介していた。
FIIOは独自ディスクリートDACを搭載したK11 R2R
エミライブースでは今回は据え置き機器を重点に展示。独自のR2R DACを搭載したFIIO「K11 R2R」を通常モデルと比較試聴できるデモをしていた。R2Rバージョンを通常モデルと聴き比べると、デジタル的な硬さが少なくなり、全体的にだいぶ滑らかで柔らかく「アナログ的」な音のように聴こえる。
Oriolusが久々にフラッグシップを刷新
サイラスブースのOriolusブランドでは5年ぶりに刷新されたフラッグシップとして「E7 4497 Premium」と「E7」スタンダードモデルを展示。「E7 4497 Premium」は、特に選別された旭化成エレクトロニクス(AKM)のDAC ICを採用して音質を向上させているということだ。また、背面パネルはビス留めで外せるようになっていて、将来的なハードウェア交換にも対応する。
DUNU初のヘッドホンは好印象
サウンドアースはイヤホンの人気ブランドDUNU初のヘッドホン製品「嵐」とヘッドホンアンプ「V53」を展示。ヘッドホンは平面磁界型ドライバーを採用している。
ヘッドホンとアンプのシステムで聴いてみると音質はとても良く、少し暖かみがあり音の広がりと深みを感じる。高性能ながらリスニング用途にも適したサウンドだ。
人気のDC-Eliteも収納できるDAC POCKET
ピクセルは小型USB DAC向けのアクセサリー「DAC POCKET」のラージバージョン(DAC POCKET LARGE)を展示した。DAC POCKETは、韓国LEPIC(ルピーク)ブランドの製品で、マグネットでMagSafe対応のiPhoneなどに簡単に取り付けられるのが特徴となっている。
一見サイズは変わらないように見えるが、DACを押さえるバンドのふくらみが大きくなっている。このためiBasso「DC-Elite」のような大きめのUSB DACも収納できる。DAC POCKET LARGEは便利だが、自分の持っている製品は大きくて装着できないと嘆いていたユーザーにとっての福音となるだろう。
逆転の発想で生まれたAudiiSionの立体音響技術
最近では、シーイヤーの「パヴェ」や鹿島建設「OPSODIS 1」のような立体音響技術を搭載した小型スピーカーが話題となっている。
この分野に独自のアプローチをしているのがAudiiSion(オーディージョン)だ。技術売りをするB2B志向のメーカーで、同社の開発したソフトウェアはオーディオ製品のファームウェアやPCのアプリなどに組み込める。
具体的には、イヤホン向けの「AudiiSion EP」とスピーカー向けの「AudiiSion SP」がある。ポイントは立体音響技術でよく使われるHRTF(頭部伝達関数)の精密な再現ではなく、敢えて人間の認識能力に影響を与える簡単なヒントを加えるだけにした簡易的な処理にしている点だ。
人体の形状には個人差があるため、HRTFを用いるためには厳密な計測とその結果を反映するための複雑な処理が必要になる。逆にこうした処理の結果に少しでも矛盾を感じさせる要素があれば、違和感の原因になる。そこで、「音源にこういう情報が含まれていれば、こういう風に脳は判断する」という手掛かり(最小限の情報)を音源に付加して、後は脳に判断させた方が個人差が少なく、処理も軽量にできるという利点があるという。
スマホのスピーカーを使用する、AudiiSion SPのデモを聞いてみたが、スマホのスピーカーでも音がより広がることが聴き取れた。今後の製品展開が楽しみな技術である。
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