パリにある謎のスマホ通りはアフリカのケータイで溢れていた
ASCII.jp / 2024年8月6日 12時0分
2024年の夏季オリンピックが開催され、また華やかな観光地としても知られるパリ。しかし、そんなパリにも怪しいスマートフォンや携帯電話を売っているエリアがあります。
場所は治安があまりよくないと言われる18区。パリメトロのシャトー・ルージュ駅を降りると確かに独特の雰囲気があり、いわゆる「パリらしさ」は感じられません。道行く人やお店のスタッフバラエティーに富んでおり、様々な商店が並びます。
その中で目立つのがヨーロッパ各国でMVNOサービスを展開している「Lyca Mobile」の看板を掲げているお店。これらはすべてスマートフォン・携帯電話ショップです。
お店の前に行くと、ショーケースには様々なスマートフォンが並んでいます。しかし最新モデルをきらびやかに展示しているのではなく、少し前の製品や見たことのないモデルが並びます。
また、新品でもGalaxyのA10シリーズやシャオミのRedmiなど低価格モデルが目立ちます。実際に安い価格のものが多く、サムスンの古めの新品なら100ユーロ(約1万6000円)、それ以下のメーカー品ならさらに安いようです。
また、かなりマイナーなモデルも並びます。さらに中古を売っているところも多くあり、価格はリーズナブル。こちらの店には中国Meizuの製品が並んでいましたが、フランスで売られていたのか、それとも中国から流れてきたのかは不明です。
もちろん中古でも人気のある製品はサムスン。Galaxy S8やS9クラスの製品は200ユーロ弱(約3万円)のものあり、高嶺の花的な存在になっていました。なお、このエリアにスマートフォンを買いに来る層は「最新モデルを安く」ではなく、「使えるスマホならなんでもいい」という人ばかり。ですから、ここでiPhone 15の掘り出し物を見つけようなんて考えないほうがいいでしょう。
お客さんを見るとほとんどがアフリカ系の方、また売られている製品もアフリカに強いTranssionグループ、その中でも特に価格重視である、Itelのスマートフォンが目立っています。そのItelですら4~5年前の旧モデルが並んでおり、そこそこ安い値段で売られています。
ほかにはEnergizerなど、先進国では見ないスマートフォンも多数。これらは展示会で見かけることがありますが、売っている国やエリアはわからずで、まさかパリで見かけるとは思いませんでした。もちろん正規販売品ではありませんから、実際の販売国はフランスではありません。
名前も知らないメーカーのモデルも多く、それらの品ぞろえや来客を考えると、どうやらこれらの輸入元はアフリカのようです。そもそもフランスとアフリカは深い繋がりがありますから、人や物の流れがあります。アフリカのスマートフォンがパリの18区に流れてきている、そう考えるのが妥当でしょう。
それを確信したのはフィーチャーフォンの多さです。どのお店もスマートフォンだけではなく、フィーチャーフォンも販売しているのです。今時中国ですらもうフィーチャーフォンユーザーはほとんどいませんし、東南アジアでも少数派です。一方、アフリカではまだフィーチャーフォンユーザーは多く、現地で売られている製品がここに流れてきているのでしょう。
なお、パリ市内各地にあるIT量販店「Fnac」ではフィーチャーフォンはほぼ売られていません。
ここに並んでいるフィーチャーフォンのパッケージは、記事の冒頭写真の折りたたみフィーチャーフォンのものです。この製品は以前の連載で紹介しましたが、中国でも売っておらず、実はカタログに載っているだけで現物はないのでは? と思っていました。でもしっかりとアフリカで売られているようですね。
ということで、このフィーチャーフォンは最新製品です(やっぱり出てきた「折りたたみスマホ」風の折りたたみケータイ)。
QWERTYキーボードが魅力的なこの端末はフィーチャーフォン。ブリスターパックにSFRの文字がありますが、フランスキャリアのSFRがプリペイドパッケージとして売っていた製品です。調べると製品名は「Text Edition 153 BY SFR」で、製造メーカーはアルカテル。2013年の製品なので10年以上前のモデルです。でもSMSをよく打つ人には、今でも便利な端末なのかもしれません。
実用性があるのかわからない古いスマートフォンや、先進国では使われていないようなフィーチャーフォンが売っているこのスマホ通りですが、その中には最新モデルだけを売る店も数軒ありました。店主もちょっと小ぎれいな感じで、あえて高いものを売ることで差別化を図っているようです。
LGのディスプレーが回転する「WING」もそんなお店にあったので、もしかすると掘り出し物がみつかるかもしれません。
新興キャリア・FreeのプリペイドSIM自販機を置いてある店があったり、ストラップやスマホケースを売る店もあります。パリでスマホを見るなら前述したFnacやアップルストアに行くべきでしょうが、ちょっと変わったところに行きたいならこのエリアは面白いかもしれません。ただし、スリには十分すぎるほど気を付けて下さい。
おまけですが、日本のスマホも流れ着いていました。いったいどんな道を通ってここまでやってきたのか、ちょっと気になってしまいます。
筆者紹介───山根康宏
香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど取材の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から100万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。
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