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”本格派ならではの価値"を味わえる、フィルムカメラの新製品「PENTAX 17」が欲しいんです

ASCII.jp / 2024年8月24日 7時0分

リコーイメージング「PENTAX 17」直販価格8万8000円

 スマホで写真を撮るのが当たり前になっている時代に、フィルムカメラが注目されています。利便性よりも"写真を撮るという体験"に重きを置いている方が多いのかもしれません。しかし現在、本格的なフィルムカメラはほとんど製造されておらず、トイカメラ的な製品か、数十年前に発売された中古品を購入するしかありません。

 そのような状況のなか、リコーイメージングが発売したのが「PENTAX 17」。レトロなデザインを踏襲しつつ、リコーイメージング/PENTAXのフィルムカメラ開発のノウハウを生かした新製品です。今回は本製品の実機を借用したので、フィルムカメラでの撮影、現像、コストにもスポットを当ててレビューします。

■光学系は新設計、ハーフサイズフォーマットを採用したフィルムカメラ

 「PENTAX 17」はハーフサイズフォーマットを採用したフィルムカメラ。35ミリ判フィルム(36×24mm)の1コマの約半分(17×24mm)を使用するので、36枚撮りであれば72枚の撮影が可能となります。

 フィルムの巻き上げは、シャッターを切るたびに巻き上げる手動式。PENTAXのフィルム一眼レフの巻き上げ機構が継承されており、巻き上げ時の滑らかな感触や音を楽しめる設計となっています。なおフィルムの装填にはイージーローディング方式が採用。フィルムカメラ初心者にも失敗なくフィルムをセットできるよう配慮されています。

 光学系は新たに設計されており、新開発の焦点距離25mm(35mm判換算で約37mm相当)の単焦点レンズを搭載。1994年に発売された「PENTAXエスピオミニ」のレンズ光学系を元に、ハーフサイズフォーマット用に新規設計。「HDコーティング」が施され、クリアでシャープな描写を実現しているとうたわれています。

 本体サイズは127×78×52mm、重量は290g(フィルムと電池を除く)。電池は3Vリチウム電池(CR2)を使用。電池寿命はフラッシュ50%使用、36枚撮りフィルム使用時で約10本ぶんとされています。

レンズは「HD PENTAXレンズ」(焦点距離:25mm[35ミリ判換算値37mm相当]、開放F値:F3.5、レンズ構成:3群3枚、画角:61°[対角]、最大撮影倍率:約0.13x(0.25m時)、フィルター径:φ40.5mm)
背面のケーブルスイッチ端子に「ケーブルスイッチCS-205」などを装着すれば、シャッター操作が可能です
上面には巻き戻しクランク、巻き戻しノブ、露出補正ダイヤル、モードダイヤル、シャッターボタン、電源レバー、巻き上げレバーなどを配置。フィルムカメラならではの操作を楽しめます
左右側面にはストラップ取り付け部を用意。ストラップ選びもカメラ専用機ならではの楽しみです
電池は3Vリチウム電池(CR2)を使用。Amazonベーシックなら1本で約227円、パナソニック製なら1本で約604円です(2024年8月記事執筆時)
今回フィルムは、カラーネガフィルム「FUJIFILM 400」(サイズ:135、ISO:400)を使用。実売価格は1800円です(2024年8月記事執筆時の量販店価格)
電池、フィルムを入れた状態での実測重量は320gでした

■めちゃくちゃレトロな風合いの写真が撮れました

 それでは早速「PENTAX 17」で撮影した写真をご覧いただきましょう。詳しくは後述しますが、これらはカラーネガフィルム「FUJIFILM 400」で撮影した写真を現像し、データ化したものです。

「PENTAX 17」で撮影(左右)
「PENTAX 17」で撮影(左右)
「PENTAX 17」で撮影(左右)
「PENTAX 17」で撮影

 まず色味ですがなんともレトロな風合いですね。牧歌的な被写体が多かったということもありますが、令和の時代に撮影された写真とは思えません。スマホのカメラアプリにも色味を変更するフィルターがありますが、なにも手を加えずこのような風合いになっていることに、本物ならではの価値があると感じました。

 35ミリ判フィルム(36×24mm)の1コマの約半分(17×24mm)を使用するハーフサイズフォーマットのカメラということで、かなりボケた写真になるかと予想していましたが、フォーカスと露出さえ合っていれば鑑賞に堪える解像感を備えていると思います。

■使い勝手と、1枚あたりのコストは?

 使い勝手は基本的に文句なし。上面に設置されているダイヤル、レバーの操作感は良好。これらをいじりつつ撮影するのは、手間はかかりますが、なんとも楽しいです。特に設定がピタリとはまって、いい写真が撮れたときの喜びはひとしおですね。

被写体との距離を見て設定を切り替えるゾーンフォーカス

 ひとつだけ慣れるのに時間がかかったのが、ゾーンフォーカスリングに記載されているアイコン。遠距離(5.1m~∞)、中距離(2.1~5.3m)、近距離(1.4m~2.2m)、至近距離(1.0~1.4m)、クローズアップ/テーブルフォト(0.47~0.54m)、クローズアップ/マクロ(0.24~0.26m)が用意されていますが、ちょっと覚えづらいです。結局、何度も説明書で確認しつつ、撮影していました。アイコンよりも数字を書いてくれたほうが個人的にはよかったです。

ダイヤル、レバーの操作感は良好。撮影モードは「フルオート」、「標準」、「絞り開放優先」、「低速シャッター」、長時間露出ができる「バルブ」、逆光撮影向けの「日中シンクロ」、夕暮れや夜景用の「低速シンクロ」があります。露出補正ダイヤルを搭載し、ISO感度を手動で設定できます
フィルムのリーダー部(ベロ,先端)をオレンジ色のマークに合わせて、裏ブタを閉じれば、正常にフィルムを巻き上げられます。初心者に優しい仕組みです

 「PENTAX 17」をぞんぶんに楽しむのにハードルとなるのがフィルムの現像。筆者はさいたま市に住んでいますが、最寄りで現像できるのはヨドバシカメラくらい。(ほんの1~2年前にはハーフサイズフォーマットのフィルムを1時間ぐらいで現像してくれるショップが近所にありましたが、そこは残念ながら閉店してしまいました。)

 現像した写真が受け取れたのは13日後で、現像代には2480円がかかりました。フィルム代が1800円だったので、72枚の写真を撮影するために4280円を要したわけです。1枚あたり59円。そう考えるとますます、1枚1枚、大事に写真を撮りたくなりますね。

 もし「PENTAX 17」に限らずフィルムカメラの購入を予定しているのであれば、ランニングコストや現像にかかる時間を踏まえて検討することをオススメいたします。

「ハーフサイズフォーマットカメラで撮影した」と伝えて現像に出しますが、ヨドバシカメラでハーフサイズフォーマットの写真を現像できるのはコダックのみ。受け取れるのは13日後で、現像代は2480円でした

 というわけで完全に買いたくなっている私は、最終的に全くデジタルに興味の無い「妻」に、購入してもよいかを聞くことにしました。以下は妻とのやりとりを記しておきますので、家庭に報告が必要な迷えるガジェッター達の何かの参考になれば幸いです(参考にならないかもしれません)。

■妻へのプレゼンの記録

私 フィルムカメラの「PENTAX 17」を買いたくてね。 妻 こないだ使っていたカメラ? レトロで可愛いかったね。 私 いやー見た目だけじゃなくて、フィルムカメラならではの操作が楽しいんだよね。撮影した写真をすぐに見られない不便さも、あとから鑑賞するときの感動を盛り上げてくれるしね。 妻 ちょっとしたタイムカプセルを開けるような楽しさがあるってのは、わかるよ。 私 画質も思ったより良くってさ。これ見てよ。 妻 わー綺麗だね。映画のワンシーンみたい。……でもボケた写真も結構あるね。 私 あー、うん、これは僕のせい。まだちょっと慣れていないからさ。でも写真の腕がそのまま出るからこそ、緊張感もあってすごく楽しいんだよ。 妻 私は簡単に撮れたほうがいいけど……楽しいならいいんじゃない? そういえばフィルムってどこで売っているの? 私 ヨドバシとかAmazonで買えるよ! 妻 いくらくらいするんだっけ? 忘れちゃったな。 私 まぁ……それは、フィルムを買うときにまたプレゼンするね。 妻 ふーん?

この記事を書いた人──ジャイアン鈴木

 EYE-COM、TECH Win、TECH GIAN、PDA Magazine、DIGITAL CHOICE、ログイン、週刊アスキー、週アスPLUSと主にPC系メディアで勤務。2015年1月よりフリーの編集兼ライターとして活動を開始した。

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