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本当にあったAirTagの怖い話

ASCII.jp / 2024年9月3日 12時0分

AirTag

 AirTagは紛失物を見つけるのに便利なアイテムだが、過去にはストーカー行為などに悪用されるケースもあった。そのため、AirTagはこれまで数度に渡ってストーキング対策となるアップデートが行行われているが、実際にはどんな事件が起き、どういった対策が取られてきたのだろう? 本記事では、過去、実際に起こったAirTagが悪用されたという実例を振り返ることで、改めてその正しい使い方を考えてみたい。

実際に起こったAirTagを悪用した凶悪事件

 AirTagは、発売当初、持ち主が意図的に別の誰かに持たせた場合、相手の居場所を追跡することができてしまうという問題があった。例えば、知らない間に鞄や車にAirTagが入れられると、AirTagの持ち主がその位置情報を追跡することができてしまっていたのだ。これはストーカー行為に悪用される危険性があり、過去には実際にそうした事例が報告されている。

 2022年1月、米・オハイオ州で、女性が元恋人によって車に仕込まれたAirTagでストーキングされ、最終的に銃で撃たれる事件が発生した。Ohio Capital Journalによれば、この事件は、AirTagを悪用したストーキング行為の一例として報告されている。この事件を受けて、オハイオ州ではAirTagを使い、ストーキング行為を行った時点で犯罪とする法案が提出された。この法案により、オハイオ州では本人の同意なしに追跡装置を設置することを禁止し、違反者には罰則が科されることになった。

 また、2022年6月、米・インディアナ州で、元交際相手がAirTagを使って男性を追跡し、最終的に殺害する事件が発生した。ワシントン・ポストの記事によると、ボーイフレンドが浮気をしているのではないかと疑った女性が、ボーイフレンドの車の後部座席にAirTagを仕込み、彼のいるバーを突き止めて別の女性といるところを目撃し、口論に発展。その後店から退店を求められた3人が外へ出ると、自分の車に戻った女性がボーイフレンドに突っ込み轢き殺してしまったという事件が起こった。

 アメリカのデジタルメディアであるVice.comの2022年4月6日付けの記事では、AirTagに関連した警察への被害報告は1年間で少なくとも150件に登り、そのうち50件は、所有していないAirTagによって自分の居場所が追跡されているという女性からの訴えだったとレポートされている。また、先ほど挙げた例では女性がボーイフレンドを殺害した事件を取り上げているが、こうした被害は元パートナー、夫、上司など、身近な男性が女性の車にエアタグを仕掛けて尾行や嫌がらせをしているというケースが多かったようだ。

日本でAirTagが悪用された事例

 AirTagをはじめとするBluetoothトラッカーの悪用は、アメリカだけでなく、カナダやアイルランドなどでも報告されており、国際的に問題視されてきた過去がある。では日本での犯罪被害はどうだろう?

 日本で有名になった過去のAirTagの悪用事件では、2022年7月に、愛知県警豊田警察署の駐車場に停められた捜査車両にAirTagが取り付けられた事件がある。車のマフラーにAirTagが入ったマグネットボックスが取り付けられていたのを捜査員が発見したとのことだが、いたずら目的との見方もある一方、何者かが捜査の動きを把握しようとした可能性もあるとの指摘もあった。

 また、2022年12月には日本でもストーカー事件にAirTagが悪用されたという報道があった。奈良市の会社員の男が、同僚女性の車にAirTagを取り付け、職場でその女性に「昨日、病院にいたよね」と告げるなどしてストーカー規制法違反容疑で書類送検された。この男性がAirTagを取り付けたのは2月頃で、女性に対し行動を把握しているとほのめかしたのが4月のこと。実に2ヶ月もの間、女性の車での移動先が筒抜けになっていたようだ。

AirTagで犯人を追跡? しかしその代償となる事件の発生も…

 また、これも製品本来の目的外の利用方法ではあるが、AirTagの持つ製品特性を利用して、犯人の特定や捕獲に利用しようとした事例もある。

 2023年4月には、置き配の荷物を何度も盗まれた名古屋市在住の被害男性が、AirTagを利用して犯人逮捕につながったという事件があった。数度の被害に業を煮やした男性は、自宅に届いた荷物にAirTadを仕込んで玄関先に放置。すると2日後に、そのAirTagの位置情報が動き出したのを確認。急いで追いかけると、犯人は別の配送業者の男で、自分が荷物を届けに行った先にあった、別の置き配荷物を盗んでいた。コロナ禍で配達員との接触も避けるようになっていた時期に起きた犯行だった。

 一方、同様の行為が飛んでもない事件に発展してしまったケースもある。

 Bakersfield.comの記事によると、2023年3月、米カリフォルニア州ベーカーフィールドで、61歳女性の車が盗まれた。しかし、こうした盗難に備え、女性はあらかじめこの車にAirTagを忍ばせていた。女性は警察に相談することもなく、自力で車を取り戻そうとAirTagの情報を元に発信元へと向かい、4人組の犯行グループと対峙し、射殺されてしまった。犯人グループが逮捕されたのは事件の3ヶ月後だった。

 位置情報が分かるからといって、安易に犯罪者を追跡しようと考えるのはとても危険な行為だ。まずは自身の安全を第一に考え、困ったときには警察などへ相談しよう。

AirTagは元から窃盗被害を防止するアイテムではない

 AppleがAirTagを発売したのは2021年の春のことだ。落とし物や忘れ物を探すのに便利なこの小さなデバイスは、「ストーカー対策済みである」と謳われて登場した。しかし、発売当初のその対策はというと、AirTagが持ち主から離れたまま8時間から24時間経過すると音を発して位置を知らせる、というもので、これでは不十分なのではないかとのセキュリティの専門家たちの声も多かった。その懸念の通り、その後多くの被害が報告され、集団訴訟を受けるまでになってしまった。

 その集団訴訟の訴状には「AirTagが他の競合製品と異なるのは、その比類ない精度、アップルの既存の製品群にシームレスにフィットする使いやすさ、そして手頃な価格である」と、苦情なんだか宣伝なんだかよくわからない文章が書かれている。しかしその文言は、「わずか29ドルという価格で、ストーカーや虐待者が好んで使う武器となっている」といった恐ろしい一言で締められている。

 もちろんAppleとしても、こうした状況に手をこまねいていたわけではなく、これまでに何度もストーキング対策に関するアップデートを行ってきた。2022年のiOS 15.4では、見知らぬAirTagが近くにある場合に通知が表示される機能が追加され、ユーザーは不正な追跡をより早く検知できるようになった。2023年のアップデートでは、iPhoneの「探す」アプリで見知らぬAirTagの距離と方向を表示する精密検索機能が追加された。また、持ち主の手元を離れたAirTagが移動した場合に音が鳴り、通知が表示されるようになった。

 とはいえ、iPhoneのユーザーしかその存在を感知し得ないのではまだ十分とは言えない。そこでAppleはGoogleとも提携し、Bluetoothトラッカーデバイス向けの業界規格「Detecting Unwanted Location Trackers」を策定。直近のiOS 17.5からは、プラットフォームを越えたトラッキング検出機能が搭載された。iOS、Android、どちらのOSであっても、不明なBluetoothトラッカーデバイスがユーザーと一緒に移動していると、「[見知らぬ追跡デバイス]はあなたと一緒に移動しています」という警告を表示してくれるようになった。

 AirTagは、本来、忘れ物や落とし物防止のためのアイテムだ。8月28日の「AitTagが窃盗対策に使えなくなったってホント?」の記事にある通り、こうしたアップデートを受け、AirTagを窃盗や盗難対策に使えなくなったことを惜しむ声もあるが、そうした使い方は、もとから推奨される使い方ではなかったということは頭に入れておきたい。こうした対策のおかげで、ユーザーが本来の目的以外の使い方をすることができなくなった代わりに、犯罪に利用されることも減ったのだ。これ以上、本記事で挙げたような被害を増やさないためにも、取れる対策はしっかり講じて、正しく利用することを心がけたい。

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