クレカ付帯のプライオリティ・パス、なぜ改悪が続くのか
ASCII.jp / 2024年9月18日 7時30分
空港ラウンジが快適に利用できるPriority Pass(プライオリティ・パス)は、飛行機に乗る機会が多い旅人にとって必携のアイテムです。この連載でも何度かプライオリティ・パスを活用しているシーンを紹介していますが、今回はプライオリティ・パスの最新事情についてレポートしていきます。
●プライオリティ・パスとは?
プライオリティ・パスは、空港ラウンジに関するサービスを提供する会員制サービスで、プランは現在下記3種類が用意されています。
会員になれば、提携している空港ラウンジを始めとする世界1600ヵ所以上の施設やサービスが利用可能。例えば利用対象者の案内に「Priority Pass」と掲示されている空港ラウンジにはいって出発までのあいだ、リラックスできる室内で提供されるコーヒーやソフトドリンク、軽食などが基本的には無償でいただけます。またラウンジにシャワーなどの設備があれば、それも使えるので、乗り継ぎが多いルートでの移動時には非常にありがたいサービスです。
■スタンダード/年額99ドル(約1万4000円):利用時に別途35ドル(約4930円)の利用料金が必要 ■スタンダード・プラス/年額329ドル(約4万6300円):10回まで利用料金無料、11回目以降は別途35ドルの利用料金が必要 ■プレステージ/年額469ドル(約6万6000円):回数無制限で利用料金無料 *いずれのプランも同行者は利用料金として別途35ドル(約4930円)が必要
●施設によっては展望風呂とご飯が実質無料
空港ラウンジでの利用がメインのプライオリティ・パスですが、最近はそれ以外の施設やサービスにも力をいれています。当日のフライト利用が前提ですが、たとえば、クアラルンプール国際空港ではカプセルホテルの「Capsule Transit」が3時間無料で使えたり、セントレア(中部国際空港)では温浴施設の「くつろぎ処」で最大3400円ぶんの割引が受けられます。くつろぎ処は飛行機を望める展望風呂「SOLA SPA 風の湯」の入浴料がタオル付きで1500円(大人)、食事もメインメニューは1200円前後なので、お風呂とご飯が実質無料というわけです。
さらにプライオリティ・パスは空港にあるレストランとの提携も進めていて、一定額の割引料金を適用可能。割引料金の金額は各国通貨での対応となりますが、だいたい日本円で3400円ぶんの割引が適用となります。
先日も筆者はベルリン・ブランデンブルク国際空港にあるカフェテリアの「NU Made with Love」でプライオリティ・パスを利用。最大24ユーロまで利用可能だったので、ビールとドイツ発祥の焼き菓子パン「プレッツェル」のセット9.90ユーロに加えて、10ユーロのピザをオーダー。合わせて19.90ユーロと割引金額以下のため決済時にプライオリティ・パスを渡すだけで支払いはなし。店員さんから「あと3ユーロ使えるよ〜」と声をかけられるくらいです。
また、日本で提携しているレストランでは、プライオリティ・パス用に3400円ぶんの専用セットを提供していたり、羽田空港第3ターミナルに隣接する羽田エアポートガーデンにある「All Day Dining Grande Aile」は、ビュッフェスタイルでの提供と言うこともあり、プライオリティ・パスがあれば、無料で食べ放題となっています。
●なにが旅人をそんなに悲観させているのか?
そんなプライオリティ・パスですが、クレジットカードのサービス改訂によって、旅好きの旅行者が悲嘆に暮れるニュースがここ最近続いています。
プライオリティ・パスの会員料金は前述のように、全ての定型サービスが完全無料で使えるプランは年額469ドル(約6万6000円)とかなり高額です。これは、飛行機の利用頻度が高くないと、コスパの良いサービスとは言えません。
そのため、プライオリティ・パス会員の多くは、直接プライオリティ・パスと契約をしているのではなく、クレジットカードの特典として契約・利用している人が一般的です。クレジットカードによって、特典が有料だったり無料だったりするケースはありますが、その多くはプライオリティ・パスと直接契約するよりも、ずっと安く会員になれるからです。
また、クレジットカードによっても利用条件が異なっています。概ね年会費が高いクレジットカードほど、プレステージに近い利用条件のプライオリティ・パスが無料、もしくは1万2000円から2万4000円ほどで発行されるケースが多く、年会費の安いクレジットカードは、無料での利用は5回までなど、独自の利用条件になっているケースがあります。
●はじまりは楽天プレミアムカード
近年、旅人の間で最も人気だったのが楽天プレミアムカードで、年会費1万1000円ながら、プレステージ相当の回数無制限なプライオリティ・パスが無料で発行されていました。ところが2023年11月、楽天プレミアムカードのサービス内容が改訂され、これまで利用回数無制限だったものが、2025年から年5回まで無料利用、と、条件のあるサービスへと変更になってしまいました。
そのため、楽天プレミアムカードでプライオリティ・パスを利用していたユーザーは、回数に制限のないプライオリティ・パスを発行しているクレジットカードに移行するケースが多く、ユウキロックさんのお得情報連載でも「「改悪」された楽天プレミアムカード代わりにオススメしたい最強クレカ(プライオリティパスあり)」という記事があがったりしています。
●ラウンジ利用だけでなくその他サービスにも制限が
楽天プレミアムカードがほぼ業界最安だったため、旅人にとって、回数無制限のプライオリティ・パスを発行するためのコスパは当然、悪くなりました。それに加えて、最近発表されたのが、一部のクレジットカード会社で発表された”空港ラウンジ以外のレストランやリフレッシュサービスでの利用を不可”とする制限です。
ひとつはJCBで、2024年10月31日以降、国内の非ラウンジ施設は対象外になります(海外はラウンジ以外も引き続き利用可能)。もうひとつは三菱UFJニコスで、こちらは2024年10月1日以降、国内外すべてラウンジ以外の施設は対象外となります。ちなみにアメックスが発行するプライオリティ・パスは、2019年からすでに利用はラウンジのみと制限されています。
●利用者が増加しすぎてカード会社がギブアップ!?
なぜこのようなサービス改訂になってしまったのか。
三菱UFJニコスは今回の改訂に関して、「昨今、空港における飲食店舗やリフレッシュ施設等でのプライオリティ・パスのご利用が大変増加しております。それに伴い、本サービスに関連するコストが増加しており、本サービス自体のご提供を続けることができなくなるおそれがございます。」と説明しています。
プライオリティ・パスとクレジットカード会社、それぞれ個別の契約内容まではわかりませんが、基本的にクレジットカード発行のプライオリティ・パスをユーザーが使うと、クレジットカード会社は利用料をプライオリティ・パスへと払うことになります。
「コストが増加して提供が続けられない」ということは、つまり、プライオリティ・パスの利用者が増えすぎてもうサービスできないということでしょう。
たとえばセントレア(中部国際空港)には、プライオリティ・パスで利用できるレストランは隣接するFlight of Dreams Buildingも含めて3ヵ所あり、加えて温浴施設医のくつろぎ処もあります。つまり、朝から空港に行って、空港内のレストランを3ヵ所はしごしつつ、温浴施設でリフレッシュし、ラウンジで飲食をしながら夜遅めの搭乗を待つ・・・・・・ここまでがすべて無料でできてしまうわけです。
ちなみに大きい空港だと利用できるラウンジが複数あり、ラウンジをはしごして使う「ラウンジホッピング」をして楽しむ人もいます。あまりにもお得に使えてしまうからです。
もちろん利用する側としてはルール内で活用しているだけなので何の問題もありませんが、SNSやYouTubeではこの手の「プライオリティ・パス活用術」は人気コンテンツとなっており、プライオリティ・パスを最大限活用している人が年々、増加し続けている状況です。その結果、利用料をプライオリティ・パスに支払っているクレジットカード会社が負担に耐えかねてギブアップし、サービス改悪が続いてしまっている、というわけです。
●もうちょっと円高になってくれたらな……
自分も楽天プレミアムカードで発行したプライオリティ・パスのヘビーユーザーですので、来年以降はどうするか悩みどころ。クレジットカード会社発行のプライオリティ・パスは、急なサービス改訂があるので、そのたびに一喜一憂するのは性に合いません。ガンガン使うならいっそプライオリティ・パスのプレステージを直接契約したほうがいいかな……とも考えています。もうちょっと円高になってくれれば契約しやすいんですけどね。
この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama)
世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。
- 「旅人ITライターさとる」(IT系メイン)
- 「さとる・たべる・あそぶ」(旅行・エンタメ系メイン)
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